目標2と関連づけて考えよう!

● 国連 ガザで57万人が「飢餓の手前」(2024年2月29日の記事より)

 

Gaza Strip

 

今月のニュース記事

 

● 国連 ガザで57万人が「飢餓の手前」

 

 国連安全保障理事会が、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザの食料危機をめぐる緊急公開会合を開いた。国連側は、ガザの人口の約4分の1に当たる57万6千人が飢餓の一歩手前にあるとし、即時停戦を訴えた。ガザ保健当局は、昨年10月に始まった戦闘によるガザ側の死者が2万9,954人になったと発表。イスラエルの封鎖の影響で、ガザでは水や食料が極度に不足する状態が続いている。国連人道問題調整室の担当者は、ガザ北部の2歳未満の子どもは6人に1人が栄養失調などの状態だと指摘。国連食糧農業機関によると、戦闘前と比べ、水の供給量は7%にとどまる。

 

(ニュースダイジェスト 2024年2月29日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 SDGs2番「飢餓をゼロに」では、栄養のある食料を得られるようにすることや、農業生産性などの向上などを通じて、栄養不足や子どもの発育阻害を防ぐことなどが目標として掲げられている。また、SDGs16番「平和と公正をすべての人に」では、紛争や暴力の撲滅が目標とされている。

 

 しかし、現実には目標の達成にはほど遠い。ロシアのウクライナ侵攻やイスラエル‐パレスチナ紛争は、当事者間の食料不足を招いているだけでなく、生産や流通の機能不全を生じさせ、世界中で食料の確保に影響を与えている。
 


 食料不安を測る世界標準として「総合的食料安全保障レベル分類」が設定されている。それによると、食料が十分にある状態から飢饉に至るまでに5つの段階が設定されており、フェーズ1/食料が十分にある状態、フェーズ2/食料不安、フェーズ3/急性食料不安、フェーズ4/人道的危機、フェーズ5/飢饉となっている。国連世界食糧計画(WFP)が2024年3月18日に発表した報告書によると、ガザ地区の人口の約半数にあたる110万人が「フェーズ5」の段階に入っており、これは「自分たちの食料備蓄と食料を手に入れるための方法を完全に使い果たし」た状態であるとされている。

 

 また、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)によると、ガザ地区北部では2歳未満の子どもの3人に1人が深刻な栄養失調に陥っていると指摘している。
紛争や戦争といった原因だけでなく、気候変動や生物多様性の喪失なども食料危機、飢餓につながる可能性を含んでいるため、全世界が一体となった取り組みが必要である。

 

(参考)
国連世界食糧計画
「食料が十分にある状態 から飢きんに至るまでの5つの段階」

https://ja.wfp.org/stories/shiliaokashifenniaruzhuangtai-karajikinnizhirumateno5tsunoduanjie

「ガザ北部に飢きんが差し迫る、新たな報告書が警告」

https://ja.wfp.org/news/famine-imminent-northern-gaza-new-report-warns

国連パレスチナ難民救済事業機関

https://twitter.com/UNRWA

 


 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 SDGs2番「飢餓をゼロに」では、栄養のある食料を得られるようにすることや、農業生産性などの向上などを通じて、栄養不足や子どもの発育阻害を防ぐことなどが目標となっています。また、SDGs16番「平和と公正をすべての人に」では、紛争や暴力を地球上からなくすことをめざしています。これらの目標は密接に絡み合っていて、問題の解決を難しくしていますが、現在それらの目標の達成が危ぶまれる状態となっています。

 

 イスラエルとパレスチナの紛争が深刻な飢餓をもたらしています。国連世界食糧計画(WFP)が2024年3月18日に発表した報告書によると、パレスチナ自治区ガザの人口の約半数に当たる110万人が、食料確保がままならない状態にあり、57万6千人が飢餓の一歩手前の状態であると発表されました。また、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、ガザ地区北部では2歳未満の子どもの3人に1人が深刻な栄養失調に陥っていると指摘しています。
 

 

 食料不安を測る世界標準として「総合的食料安全保障レベル分類」が設定されています。それによると、食料が十分にある状態から飢饉に至るまでに5つの段階が設定されており、フェーズ1/食料が十分にある状態、フェーズ2/食料不安、フェーズ3/急性食料不安、フェーズ4/人道的危機、フェーズ5/飢饉となっています。ガザの110万人は「フェーズ5」であるとされています。

 

 ロシアのウクライナ侵攻も世界中で食料確保に悪影響を与えています。小麦などの穀倉地帯であるウクライナの港湾や鉄道が攻撃を受けて、それらの輸出が制限されてしまっています。そうして市場に流通する食料が減少し、価格が上昇してしまうと、貧困状態にある人々にとっては食料の確保が難しくなるのです。

 

 さらには、アフリカ東部の国ソマリア沖のアデン湾に出没する海賊が、船舶の乗組員の金品を強奪するような事件が多発しています。アデン湾は中東の原油を輸出するタンカーや貨物船が多く往来する場所ですが、このエリアを避けて航行せざるを得なくなるため、多額の追加コストが発生し、それが食料価格の上昇につながってしまっているという指摘があります。

 

 加えて、気候変動によって発生する干ばつ、山火事、洪水も飢餓につながります。アフリカのサハラ砂漠南側地域では、深刻な干ばつが続いており、農業生産がまったくできなくなる状態に陥っています。世界各地で発生している森林火災は、農地を焼きつくすことも少なくありません。2022年にパキスタンで発生した大規模な洪水は、農地にとどまらず人々の生活の場そのものを奪ってしまい、多くの難民を発生させました。

 

 世界の飢餓人口は約7億人、世界人口の1割近くを占めると推計されています。この数を減らしていくためには、平和の実現や気候変動対策にとどまらず、さまざまなアプローチが必要なのです。

 

 

【問いかけ例】

 

Q.国際機関の飢餓対策はどのようなことが行われているだろうか?
* 国連食糧農業機関(FAO)、世界食糧計画(WFP)などの多くの国際機関が食料提供などのさまざまな取り組みを行っている。一方で、教育機会の確保、雇用の創造、農業生産性の向上など、人々を貧困から救い、安定的な食生活を送ることができる支援もなされている。対処的な支援にとどまらず、根本的な解決を求める対策の両方が必要だろう。


Q.世界の飢餓人口を減らすために、個人として何ができるだろうか?
* 日本は食料の多くを海外からの輸入に依存している。一方で、世界では多くの人が食料を確保できず餓死に至っている現状がある。まずは、この不均衡を理解することが重要だろう。そのうえで、食料廃棄を減らす行動や、地産地消の推進といった行動から、フードドライブや「TABLE FOR TWO」などの活動に参加することなど、できることはたくさん考えられる。多くの先行事例を参照させたい。


Q.海賊問題の原因と対策の状況は?
* 以前はマラッカ海峡やインドネシアなど、アジア地域で海賊に関する事件が発生していたが、最近はソマリア沖での発生が多くなっている。これは、政府の統治の不安定さや、人々の貧困問題がかかわっていると言われている。現状では、警戒船や護衛艦を航行させ、対策を行っているものの、根本的な解決には至っていない。国際社会が協力して、ソマリア政府への働きかけを行いつつ、現地の人々が貧困に陥らないような根本的な取り組みが求められる。国際機関から民間レベルまで幅広い視点から考えさせたい。

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。