目標2と関連づけて考えよう!

● スーダン400万人が栄養失調(2023年4月27日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● スーダン400万人が栄養失調

 

 国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の戦闘が続くスーダンについて、国連は「人道危機が急速に大惨事に変化しつつある」として即時停戦を求めた。戦闘の開始前から人口の3分の1に当たる約1,580万人が人道支援を必要とし、子どもや妊娠中の女性ら約400万人が栄養失調に陥っていると指摘。戦闘によってこれらの援助活動が大幅に妨げられているという。スーダンにはもともと約370万人の国内避難民がいるが、戦闘が始まってから、避難民や人道支援を必要とする人が急増していると見られる。停電や燃料不足がワクチンの備蓄や水道供給に影響して、感染症が流行するおそれもあるとしたほか、多くの性暴力が報告されているとした。

 

(ニュースダイジェスト 2023年4月27日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 SDGs2番「飢餓をゼロに」には「栄養の確保」「子どもの健康」などがターゲットとして設定されている。また、SDGs1番には「貧困の撲滅」「社会保障制度の確立」、3番には「妊産婦の健康」「感染症対策」、4番には「質の高い教育」「市民教育」、16番には「紛争の停止」「暴力の撲滅」がそれぞれ示されている。このスーダン内戦の記事は、いくつものSDGsの目標、ターゲットがかかわっている。

 

 グローバル化した社会では、世界のどこかでひとたび争いごとが発生すると、当事者国内のみならず、世界中が影響を受ける。国を脱出しなければならなくなった難民が増加し、周辺国へ押し寄せることで新たな問題が発生する。インフラ破壊や妨害などにより、世界の物流網が崩壊する。あってはならないが核兵器が使用されるとその影響は計り知れない。このようにたとえ内戦であっても世界的な脅威となるのである。

 

 国連などの国際機関が、人々の命を救うために取り組むことは非常に重要である。しかし、そうした取り組みはあくまでも対処的な活動である。国際社会は、根本的で平和的な解決を模索しなければならない。

 

 多くの人の命を奪い、また人命を危機に晒しも回復したいものとは何なのだろうか。当事者間でない限りは理解が難しいところが、この問題の解決を困難にしている。

 


 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 一昨年はミャンマーで軍事クーデターが発生、昨年はロシアがウクライナへ侵攻、そして今年はスーダンでの内戦が深刻な状況になってしまいました。これら以外にも、現在も多くの国や地域で武力による対立が発生しています。なぜ人間は人の命を奪うような戦争や紛争を行うのでしょうか。

 

 SDGsの視点から戦争、紛争を考えてみます。SDGs2番の「飢餓をゼロに」には栄養不足を解消することや、子どもの良好な発育が目標として設定されています。また、SDGs1番には貧困の撲滅や、適切な社会保障制度の確立、SDGs3番には妊産婦の健康を確保することや、感染症による死者を少なくすることが書かれています。加えて、SDGs16番には紛争の停止や暴力の撲滅も書かれていますが、これらは戦争や紛争に直接的にかかわってくるSDGs目標と言えます。

 

 しかし、それだけではありません。SDGs4番は「質の高い教育」ですが、戦争、紛争状態が長期化、常態化してしまうと、子どもたちはもちろん、大人たちも「学ぶ」機会を失ってしまいます。長い目で見た場合、そのことがその国に与える悪影響は大きいものでしょう。また、SDGs8番は「働きがいも経済成長も」です。国が戦争や紛争によって混乱している状況では、満足いく仕事などなくなってくるでしょうし、経済成長が望める状態ではなくなるはずです。

 

 さらに、戦争や紛争はその国に限らず、世界的に影響が及んでしまいます。ウクライナ侵攻が世界的なエネルギー価格の高騰や、食料価格上昇の一つの原因であることは、皆さんも体感していることでしょう。ウクライナは小麦などの代表的な産地ですし、ロシアは天然ガスや石油の一大産地でもあります。また、ヨーロッパを中心に難民問題も深刻な状況となっています。ウクライナだけでなく、内戦や政情不安、飢餓の蔓延などのため、自国を捨てて、難民として他の国をめざす人が絶えません。難民の健康や衛生面や治安などの問題につながることもあります。このように、グローバル化した社会では、たとえ一国の出来事であっても、その影響が世界各地に及ぶのです。

 

 国連などの国際機関は、このように最低限の衣食住さえも確保が難しくなっているような人道的な危機に置かれた人々を支援しています。そうした活動を、各国政府が財政面や人材面などで支えています。しかしながら、その支援も限界があるでしょう。戦争や紛争が起こらない社会をどのように創り上げていくのか、国際社会が協力してめざしていかなければならないのです。

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.戦争や紛争が発生する原因としてどのようなことが考えられるだろうか?

* 宗教、民族、文化、政治などさまざまな原因が考えられる上に、相互に複雑に絡み合っていることから、原因を特定することが難しい。現在の日本国内では戦争につながるような深刻な対立は見られないが、わが国周辺にはその火種ともなり得る状況もある。そして、かつて日本も戦争を引き起こしていた国としての歴史を忘れることなく、今日の世界で発生している対立の原因をさまざまな観点から考えさせたい。

 

Q.争いが引き起こす負の連鎖を断ち切るにはどうすればよいだろうか?

* 争いをとりまくさまざまな要因を想定し、その中で一番重要な点を特定し、その問題を解決することで、多くの問題が次々とよい方向に向かうことがある。これを「レバレッジポイント」と呼んでいる。対症療法的な解決策ではなく、根本的に解決できる道を探ることが重要である。しかしながら、現実としては非常に困難である。

 

Q.戦争、紛争に対して国際社会は何ができるだろうか?

* 国連をはじめとした国際機関による世界の平和と安全を支援する組織の活動に、どのようなものがあるかを確認させたい。しかし、昨今の国際的な戦争や紛争によって国際社会が常に不安定な上に構築されていることが露呈した。恒久的に安定した世界を構築するにはどうすればいいかを考えてほしい。

 

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。