目標17と関連づけて考えよう!

● G7広島サミット閉幕(2023年5月22日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● G7広島サミット閉幕

 

 広島市で開かれた先進7か国首脳会議(G7サミット)は21日、3日間の日程を終えて閉幕した。最終日はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が対面で参加し、G7のほか、インドやブラジルなど新興・途上国「グローバル・サウス」の首脳らに直接支援を訴えた。G7首脳はロシアのウクライナ侵攻を非難し、対露制裁やウクライナ支援の継続で一致。被爆地・広島から「核兵器のない世界」に向けた取り組みの重要性も世界に発信した。米英仏の核保有国を含むG7首脳がそろって広島平和記念資料館を訪問。核軍縮・不拡散に焦点を当てた個別声明「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」を出した。また、G7主導の対露制裁と距離を置く国が多い「グローバル・サウス」の国々との連携強化を確認したほか、生成AI(人工知能)に関する国際的なルールづくりを主導するため、G7の見解を年内にまとめる「広島AIプロセス」に着手することでも合意した。

 

(ニュースダイジェスト 2023年5月22日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 5月に先進7か国首脳会議(G7サミット)が広島で開催された。今回のサミットは、ロシアのウクライナ侵攻に際して、平和を希求することがその主目的であるような様相がある。しかし、実際には環境面、経済面、社会面からさまざまなテーマが取り上げられた。

 

 環境面では、気候変動危機を確認し、温室効果ガス排出削減やクリーンエネルギーへの移行、プラスチックの削減も確認された。

 

 経済面では、強固で安定した貿易やサプライチェーンの構築、生成AIなどのデジタル化への対応などについて話し合いがなされた。

 

 社会面では、保健衛生の分野のみならず、途上国やグローバル・サウスとの関係構築、核軍縮などの平和についてのテーマも取り上げられた。

 

 SDGsの視点から考えると、ほぼすべての番号について取り上げられたともいえるが、このG7自体は17番「パートナーシップで目標を達成しよう」を表現するものだろう。

 


 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 5月に広島で先進7か国首脳会議(G7サミット)が開催されたことは、みなさんも記憶に新しいことでしょう。ウクライナのゼレンスキー大統領が突然来日したことから、テレビやインターネットでの報道も熱を帯びていたのではないでしょうか。

 

 そもそもサミットは、経済を中心とした世界的課題について主要先進国の首脳が話し合う機会として1975年に始まりました。少し前までは「G8」として開催されてきましたが、2014年からロシアの参加が拒否され「G7」として開催されています。

 

 今回のG7について、新聞記事ではウクライナ支援のことが中心的に扱われていますが、実は、さまざまなテーマについて話し合いが行われました。

 

 環境面では、気候変動危機に触れ、温室効果ガス排出削減や再生可能エネルギーのようなクリーンなエネルギーへの移行や、プラスチックの削減により一層取り組むことも確認されました。

 

 経済面では、安定した貿易やサプライチェーンを構築することがテーマとなりました。サプライチェーンとは、何か製品を製造する際に、その部品を調達したり、製造したり、製品を販売するネットワークなどの産業の全体像のことを言います。グローバル化した現代では、それが世界各地に及んでいて、局地的な問題が発生しても、世界全体に拡大することもあります。また、そのほかにも、食料の安全保障の問題、ChatGPTやAIなどのデジタル化への対応などについて話し合いがなされました。

 

 社会面では、すべての人が等しく保健サービスを受けることができる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」や新型コロナウイルスなどのパンデミックの対応がテーマとなりました。また、途上国やグローバル・サウス(アジアやアフリカなどの新興国の総称)との関係構築、そして、核軍縮などの平和についてのテーマも取り上げられました。

 

 SDGs17番は「パートナーシップで目標を達成しよう」です。現在私たちが認識している社会問題や今回のG7サミットで取り上げられたテーマは、ほとんどが、世界各国の協力が必要なことです。また、SDGs16番は「平和と公正をすべての人に」です。もちろんこれも世界的な問題です。

 

 しかし、G7はあくまでこの7か国からのメッセージにすぎません。国際問題を考える際には、一方的な方向からの視点になってはならないのです。途上国や私たちと異なった経済社会の仕組みの国のことも考えていかなければ、問題を解決するのは難しいのです。なぜなら、問題は世界中でつながっていることが多いからです。

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.G7の役割とその限界は何だろうか?

* 平和で安定した世界を構築するために組織された枠組みであることは言うまでもないが、G7が開催されることに至った経緯や背景について、歴史的、地政学的、文化的、宗教的、といったさまざまな角度から確認してほしい。EU代表も会議に参加していることで、「西側」諸国による会議の色合いが強い。しかしながら、世界を見渡すと、必ずしも考えを同じくする社会体制でない国も多いことを認識させたい。

 

Q.グローバル化した社会でビジネスを行う際の課題はどんなことが考えられるだろうか?

* 世界中から資源を調達したり、製品の製造を途上国に委託したり、販売網を各国に展開したりするなど、グローバルにビジネスがつながっている時代となっている。一方で、労働人権侵害、環境破壊、経済的搾取などのリスクが絶えず存在する。取り引きを行う両国がWin-Winの関係を構築しなければならない。

 

Q.戦争をやめさせるために私たち一人ひとりは何ができるか?

* ロシアのウクライナ侵攻だけではなく、残念なことに、今なお世界中では多くの紛争、内戦が続いている。また、それらの問題解決に対して国際社会がなす術もないこともある。人を殺しあうということは絶対的にあってはらないという共通認識を共有しながら、わが国としては、唯一の被爆国として、戦争の悲惨さを伝える必要があるだろう。

 

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。