目標16と関連づけて考えよう!

● 広島原爆写真 「世界の記憶」へ推薦(2023年11月29日の記事より)

 

 

 

今月のニュース記事

 

● 広島原爆写真 「世界の記憶」へ推薦

 

 政府は、広島市と中国新聞社など報道機関5社の共同申請による「広島原爆の視覚的資料-1945年の写真と映像」を、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」の国際登録に推薦すると決定した。登録されれば、広島の被爆関係資料では初めてで、核の惨禍を国内外に発信する後押しとなる。2025年春にユネスコ執行委員会で可否が決まる見通し。資料は、被爆した市民や報道カメラマンをはじめ27人・2団体が、1945年8月6日から45年12月末までに撮影した原爆写真1,532点と動画2点からなる。米軍による原爆投下当日の市民の惨状を捉えたカットなど、代表的な原爆記録写真や、45年9月22日公開のニュース映像と、9~10月に学術調査団に同行して撮影された記録映像などが含まれる。

 

(ニュースダイジェスト 2023年11月29日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 ユネスコ「世界の記憶」の登録に向けて、広島での原爆のようすを撮影した写真や動画が推薦されることになった。このユネスコの取り組みは「世界的に重要な記録物への認識を高め、保存やアクセスを促進すること」を目的とし、1992年に事業が開始されてから国際登録、地域登録合わせて約550件が登録されている。わが国に関連するものとしては、「朝鮮通信使」や「山本作兵衛炭坑記録画・記録文書」など9件がこれまでに登録されている。

 

 SDGs16番では「平和と公正をすべての人に」が掲げられ、「10万人当たりの紛争関連の死亡者数」「居住地域を一人で歩いて安全と感じる人口の割合」といった指標だけでなく、ジャーナリストや人権活動家の保護なども指標として設定されている。また、国連の安全保障理事会や核拡散防止条約など、世界では戦争の撲滅、核使用の制限に向けて努力が重ねられている。

 

 しかし、このような平和を希求する国際社会の努力と裏腹に現状は非常に厳しい。ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエル-パレスチナ紛争をはじめ、シリア、アフガニスタン、リビア、イエメンなどでは内戦の火種が消えず、多くの市民が巻き添えとなり命を落としている。この現状を乗り越えて、真の国際平和を実現していくために、国連などの国際機関の努力が求められるだけでなく、唯一の被爆国としてわが国の役割は小さくないだろう。

 

 


 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 SDGs16番は「平和と公正をすべての人に」です。そのターゲット16.1には「あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる」と記されており、それを評価するための指標として、「10万人当たりの紛争関連の死亡者数」「居住地域を一人で歩いて安全と感じる人口の割合」などが設定されています。また、紛争地域では、それを取材する側が被害を受けることも少なくないため「ジャーナリストや人権活動家の保護」なども指標として設定されています。

 

 国連には「安全保障理事会」があります。これは国連憲章のもとに、国際の平和と安全に主要な責任を持つ組織で、常任理事国5か国(中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカ)と非常任理事国10か国から構成されています。また、「核兵器の不拡散に関する条約(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons;NPT)」には191か国が参加していて、核兵保有国がこれ以上広がらないようにするために、世界を挙げて対策に取り組んでいます。

 

 しかし、そのような努力も空しく、世界中には、紛争・戦争が行われている地域があり、多くの人が命を落としている現実があります。長引くロシアのウクライナ侵攻、イスラエル-パレスチナ紛争をはじめ、シリア、アフガニスタン、リビア、イエメンなどは内戦状態にあり、多くの市民が巻き添えとなり命を落としています。

 

 この度、日本政府は、被爆後の広島のようすを写した写真や動画をユネスコ「世界の記憶」に推薦することを決定しました。この取り組みは「世界的に重要な記録物への認識を高め、保存やアクセスを促進すること」を目的として、2年に1回の審査を経て登録される仕組みになっています。1992年に事業が開始されてから国際登録、地域登録合わせて約550件が登録されています。国際登録は、ユネスコ世界の記憶国際諮問委員会が運営・管理し、地域登録は、世界の記憶アジア太平洋地域委員会が運営・管理しています。これまでに世界では「ハンス・クリスチャン・アンデルセンの原稿と手紙(デンマーク;1997年登録)」や「アンネの日記(オランダ;2009年登録)」といった著名な文書も登録されています。わが国に関連するものとしては、「朝鮮通信使」や「山本作兵衛炭坑記録画・記録文書」など9件が、これまでに登録されています。  

 

 今回日本政府が広島の原爆写真を推薦することは、世界で唯一の被爆国として、世界に対して反戦、核兵器の廃絶を訴える絶好の機会になるかもしれません。世界平和を実現していくために、日本は大きな役割と責任を負っているのです。  

 

 

【問いかけ例】

 

Q.世界で発生している紛争の原因にはどのようなことがあるだろうか?
* 宗教対立、民族や文化の違い、貧困などの経済的困窮、国境や土地獲得、反政府運動、軍によるクーデターなど、紛争の原因はさまざまである。いずれも人間同士の不寛容や権利欲、経済的格差の状況などが複雑に絡み合っていることに気づかせたい。

 

Q.紛争をなくすために何ができるだろうか?
* 国家間の支援はもちろん、国際機関による支援、民間レベルでの国際協力など多面的な働きかけが必要であることは言うまでもないだろう。しかし、紛争解決は簡単な問題ではなく、さまざまな努力を積み重ねていく必要があることに気づかせたい。

 

Q.汚職や賄賂をなくすためにはどうすればよいだろうか?
* SDGs16番では汚職や賄賂をやめさせることもターゲットとなっている。特に途上国などでは通常の職務において得られる利益が小さいことが多く、こうした現状も、汚職や賄賂の原因になることが多いと言われている。また状況が個別、複雑であるため、その原因究明や解決は非常に難しい。健全な政治、経済、文化的な状況を作りあげていくために何ができるのかについて考えさせたい。

 

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。