目標4と関連づけて考えよう!

● 教育支援を必要とする子 世界に2億人(2023年9月4日の記事より)

 

 

 

今月のニュース記事

 

● 教育支援を必要とする子 世界に2億人

 

 今年7月、米ニューヨークの国連本部で、子どもの教育の継続性について話し合うイベントが開かれた。国際基金が6月に出した報告書によると、世界で教育支援を必要とする子どもや若者は2億2,400万人。昨年から今年にかけ、危機的な状況で教育機会が損なわれた児童や生徒の数が100万人以上増えた国は12か国あった。最多は約712万人も増えたケニアで、干ばつなど気候危機の影響で家を追われた人が多い。クーデターを起こした国軍が全権を掌握しているミャンマーが約711万人増。干ばつなどが原因で約552万人増えたタンザニア、約482万人増えたスリランカが続く。ロシアの侵攻を受けるウクライナは約469万人増え、増加数で5位となった。国連などは、子どもが苦境のもとでも教育を受けられれば将来的な安全保障や経済発展につながるとして、支援を呼びかけている。

 

(ニュースダイジェスト 2023年9月4日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 SDGs4番は「質の高い教育をみんなに」が掲げられているが、その実現が遠い道のりであることが改めて明らかになってきている。気候変動や紛争などにより、いまだに多くの子どもや若者が教育にアクセスできない状況が世界中で見られる。「国連SDGsレポート2023年特別版」(*1)によると、このまま対策が行われないと、2030年には8,400万人が学校に通えず、3億人が基本的な計算と識字に問題を抱える事態になってしまうことが予想されている。また、初等・中等教育の修了率は、ここ数年で若干の改善が見られるものの、その伸びは鈍化していることが指摘されている。この状況に追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスのパンデミックであり、調査した104か国中の約8割の国が学習機会の喪失に直面した。


 教育の質向上を阻害している要因は、紛争、貧困や飢餓、気候変動などが絡み合っている。また、教師不足や、学校を建設する費用の捻出なども大きな問題となっている。しかし、これらを解決できずに教育の達成が危ぶまれると、負の連鎖が起こり、さらなる紛争や貧困につながることも考えられる。


 教育は持続可能な社会を構築し担っていく「人」を育てることであり、さまざまな問題の「レバレッジ・ポイント」である。特に優先して取り組む必要があるだろう。

 

*1…https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_report/

 


 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 日本では、義務教育と位置付けられている初等教育と前期中等教育をほとんどの人が修了します。しかし、世界を見渡してみると、中学校の学修過程を修了しない人が多数を占める国も少なくありません。例えば、サハラ以南のアフリカでは中学校の修了率は5割に満たない水準です。北アフリカ、中東などでも7割程度で、世界全体で見ると、中学校を終えられた人は8割にも満たないのです。このまま対策が行われないと、2030年には8,400万人が学校に通えず、3億人が基本的な計算と識字に問題を抱える事態になってしまうことが予想されています。(*1)

 

 どうしてこのような状態になっているのでしょうか。要因の一つに、まず気候変動が挙げられます。気候変動による洪水などで住む場所を奪われる人たちが毎年のように発生しています。干ばつや洪水に見舞われてしまうと、農作物の収穫量が激減し、自分たちの食料だけでなく、それらを販売して収入を得ることができなくなってしまいます。また、地球が温暖化することは、海の生物にも影響を与えます。海水温が上昇することで、海産物の生育に悪影響が及ぶこともあります。また、海水の酸化は、貝類の発育を妨げることが知られています。

 

 また、戦争や紛争が行われている地域では、子どもたちの教育の優先順位が下がってしまいます。教育よりも軍事費に多くの費用や人材が割かれることになるでしょう。もちろん、戦闘によって命が奪われたり、町が破壊されたりすることもあります。

 

 さらに、新型コロナウイルスのパンデミックが発生して、オンラインで学習する環境が整備されておらず、学校に行けなくなったことで学びの機会が奪われた人が多くいます。また、家庭の収入が減ったことによって学校に通わせることができなくなったということもありました。「国連SDGsレポート2022」(*2)では、世界で1億4,700万人が対面指導を受けにくくなったことなど、学習機会の喪失の危機が指摘されています。

 

 これらの問題を解決するために、まず気候変動を食い止めなければなりません。二酸化炭素やメタンなどの温暖化ガスの排出は、先進国の生活を豊かにしてきた、これまでの産業の発展の裏返しです。そして、その影響を受けているのは脆弱な立場におかれている人たちです。私たちの生活スタイルの変化が必要でしょう。

 

 戦争や紛争は、歴史、宗教、民族対立、政治など、さまざまな要因が絡み合ってしまうため、解決するのは非常に難しいと言えます。しかし、教育の機会が奪われてしまうことは、将来世代での解決も難しくしてしまうかもしれません。

 

 このように「人」を育てる教育は世界の問題を解決し、持続可能な社会を構築するために非常に重要なのです。

 

*1…https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_report/
*2…https://www.unic.or.jp/files/SDGs_Report_2022_Overview_Japanese.pdf

 

 

【問いかけ例】

 

Q.世界の教育水準を維持するために、わが国にはどんなことができるだろうか?

* JICA海外協力隊やNGO・NPOなどの活動の中には途上国の教育環境の改善に貢献するものがある。また、企業等が学校設立を支援したという事例も見られる。個人でできること、企業や団体等でできること、国としてできること、さまざまなレベルの視点から考えてみたい。

 

Q.学校教育だけでなく、家庭教育や社会教育を充実させるために何が必要だろうか?

* 地域社会における教育の質を向上させていくためには、学校教育だけでなく家庭教育や社会教育も重要である。充実した子育てができるような環境を整備することや、大人たちが将来にわたって学び合う環境を創り出すことが地域に求められている。教育を「学校」という限定された環境だけで捉えることなく、幅広い視点から考えさせたい。

 

Q.わが国の教育達成率が危ぶまれるとしたら、どのような要因が考えられるだろうか?

* 不登校者数が年々増加していることは、子どもたちや社会の変化と学校のあり方を考える機会を提供しているだろう。また、6~7人に1人が「相対的貧困」と言われるように社会の中に「格差」が根強く存在する。これが将来拡大するとなると、学校に通いたくても通えない子どもたちが増加する可能性がある。教育が社会構造や経済と密接に結びついていることに気づかせたい。

 

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。