● 子どもの貧困 初の全国調査(2021年12月25日の記事より)
学習者用解説
「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。
SDGs1番は「貧困をなくそう」です。世界人口の約10%が1日1.9ドル未満という国際的に定められている貧困ライン(2015年10月、1.25ドルから改定)を下回って生活していると言われています。その割合はここ数年減少傾向にありましたが、2020年は新型コロナウイルスの世界的蔓延により、その数が増加に転じています。
貧困の問題はさまざまなSDGsと結びついています。食料が手に入らないことにより飢餓に陥りやすくなることはSDGs2番「飢餓をゼロに」に関係しています。食料が手に入りにくい原因の一つは気候変動でもあり、SDGs13番「気候変動に具体的な対策を」の対策が急務です。飢餓により健康が損なわれるおそれはSDGs3番「すべての人に健康と福祉を」に関係しますし、貧困により学校に行けず教育の機会が奪われることはSDGs4番「質の高い教育をみんなに」に、また女性の家事への負担が大きくなることはSDGs5番「ジェンダー平等を実現しよう」に関係があります。貧困層の人たちは適切な環境での労働ができなくなることもあり、SDGs8番「働きがいも経済成長も」と関係してきます。さらに、暴動や紛争の原因は貧困や格差であると言われていることは、SDGs16番「平和と公正をすべての人に」に関係します。このように、貧困の問題はその他の問題と複雑に関連しているため、解決が難しい問題だと言えます。
一方で、今回の新聞記事では日本の貧困問題が取り上げられています。内閣府の調査によると、収入が少ない世帯で「生活が苦しい」とする回答割合が高くなっています。加えて、進学意向や勉強に対する姿勢に影響を与えているばかりか、身体的健康や精神的健康にも負の影響を与えていることがうかがえる調査結果となっています。さらに、新型コロナウイルスの蔓延による影響を大きく受けているのも貧困層であることが見えてきます。また、絶対的な貧困ラインを下回ってはいないものの、深刻な状態に置かれていると考えられる「相対的貧困」にあたるのが、日本では約6人に1人と言われています。日本のように、生活インフラが比較的整っている国でも、このような問題は確実に存在するのです。このように、貧困問題はわが国には関係ないとは決して言えない問題なのです。
それでは、どうすれば、これらの問題を解決することができるでしょうか。生活保護制度などの社会的なセーフティネットを充実させ、十分な周知をしながら活用してもらうことは基本的な対応策と言えます。しかし、本質的に解決するためには、充実した教育や適正な労働の機会を提供し、各人が自立した生活を営み、社会から取り残される人がいなくなるような根本的な対応策を講じる必要があるのではないでしょうか。