目標1と関連づけて考えよう!

● 子どもの貧困 初の全国調査(2021年12月25日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● 子どもの貧困 初の全国調査

 

 子どもの貧困について初めて全国調査した報告書を内閣府が公表した。全国の中学2年生とその保護者5千組を対象として2021年2~3月に調査し、2,715組から回答を得た。生活が「苦しい」「大変苦しい」と答えたのは全体の25.3%。中間層と低所得層の間の年収がある「準貧困層」では36.8%、ひとり親世帯に限ると51.8%に上った。過去1年間に必要な食料が買えなかった経験は全体の11.3%で、ひとり親世帯はその3倍の30.3%だった。家庭の経済状況が進学に影響している実態も見られ、子どもの将来の進学先の希望や展望を「大学またはそれ以上」と答えたのは全体では50.1%だったが、ひとり親世帯では29.8%、準貧困層では36.5%にとどまった。

 

(第一小論net〈ニュースダイジェスト〉2021年12月25日の記事より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 新聞記事で示されている内閣府調査は、わが国の貧困の状況を詳細にわたり検証したもので、興味深い結果が示されている。特に、生活が「苦しい」と回答した割合が、中間層よりも貧困層やひとり親世帯で顕著に高くなっていることは注目に値する。わが国では、絶対的貧困に加え相対的貧困に該当する人たちも厳しい生活を強いられている。また、経済的な困窮にとどまらず、「大学まで行きたい」「ゲームの時間が決まっていない」など、教育達成や生活習慣に対する意識の低さも見て取ることができる。生活保護等の社会的なセーフティネットが構築されていても、それらの情報を取得しようとしない、あるいはそもそも制度に対して無知であることも多いのかもしれない。

 

 一方で、途上国の子どもの貧困は様相が少し異なる。世界銀行は1日1.9ドル未満で暮らす人を貧困層と定義しており(2015年10月、1.25ドルから改定)、世界人口の約10%と言われている。ここ数年、世界の貧困人口は減少傾向にあったが、新型コロナウイルスのパンデミックにより、2020年は1億人以上増加している。

 

 SDGs1番「貧困をなくそう」は、2030年に貧困層をゼロにするという目標である。貧困はさまざまな課題と連動することは容易に想像がつく。SDGs4番(教育)、3番(福祉)2番(飢餓)、13番(気候変動)、8番(働きがい)など、多くの問題と複雑に絡み合っているため、包括的、総合的な解決が求められる。

 

 


 

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 SDGs1番は「貧困をなくそう」です。世界人口の約10%が1日1.9ドル未満という国際的に定められている貧困ライン(2015年10月、1.25ドルから改定)を下回って生活していると言われています。その割合はここ数年減少傾向にありましたが、2020年は新型コロナウイルスの世界的蔓延により、その数が増加に転じています。

 

 貧困の問題はさまざまなSDGsと結びついています。食料が手に入らないことにより飢餓に陥りやすくなることはSDGs2番「飢餓をゼロに」に関係しています。食料が手に入りにくい原因の一つは気候変動でもあり、SDGs13番「気候変動に具体的な対策を」の対策が急務です。飢餓により健康が損なわれるおそれはSDGs3番「すべての人に健康と福祉を」に関係しますし、貧困により学校に行けず教育の機会が奪われることはSDGs4番「質の高い教育をみんなに」に、また女性の家事への負担が大きくなることはSDGs5番「ジェンダー平等を実現しよう」に関係があります。貧困層の人たちは適切な環境での労働ができなくなることもあり、SDGs8番「働きがいも経済成長も」と関係してきます。さらに、暴動や紛争の原因は貧困や格差であると言われていることは、SDGs16番「平和と公正をすべての人に」に関係します。このように、貧困の問題はその他の問題と複雑に関連しているため、解決が難しい問題だと言えます。

 

 一方で、今回の新聞記事では日本の貧困問題が取り上げられています。内閣府の調査によると、収入が少ない世帯で「生活が苦しい」とする回答割合が高くなっています。加えて、進学意向や勉強に対する姿勢に影響を与えているばかりか、身体的健康や精神的健康にも負の影響を与えていることがうかがえる調査結果となっています。さらに、新型コロナウイルスの蔓延による影響を大きく受けているのも貧困層であることが見えてきます。また、絶対的な貧困ラインを下回ってはいないものの、深刻な状態に置かれていると考えられる「相対的貧困」にあたるのが、日本では約6人に1人と言われています。日本のように、生活インフラが比較的整っている国でも、このような問題は確実に存在するのです。このように、貧困問題はわが国には関係ないとは決して言えない問題なのです。

 

 それでは、どうすれば、これらの問題を解決することができるでしょうか。生活保護制度などの社会的なセーフティネットを充実させ、十分な周知をしながら活用してもらうことは基本的な対応策と言えます。しかし、本質的に解決するためには、充実した教育や適正な労働の機会を提供し、各人が自立した生活を営み、社会から取り残される人がいなくなるような根本的な対応策を講じる必要があるのではないでしょうか。

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.貧困状態に陥ってしまう原因にはどのようなことが考えられるだろうか?

* 気候変動により生産が著しく減少し、農業に収入を頼っている国の人々の生活が厳しい状態に置かれている。国内政変や紛争などにより内政が混乱し、難民となる選択をした人たちが生活に困窮するようすは連日報道されている。個人的な原因のみならず、気候変動、紛争、産業の未発達、人種差別などさまざまな社会的な原因が貧困に繋がることを確認させたい。

 

Q.国際社会は貧困問題をどのように解決しようとしているだろうか?

* 世界食糧計画(WFP)は貧困・飢餓に苦しむ人たちへの食糧や水などの援助を継続的に実施している。また、ILO(国際労働機関)は、2012年に「社会的な保護の土台勧告」を行い、脆弱な立場に置かれている人たちへ適切な労働や社会的保障を行うことを提唱している。それ以外にも国際的な機関がさまざまな支援策を実施している。寄付金なども含めた対処的な方法だけでなく、根本解決を図る重要性について考えてほしい。

 

Q.わが国の貧困に対する取り組みはどのようなものがあるだろうか?

* 日本は世界的にみて社会保障が最も充実している国の一つであるが、貧困状態の人も少なくないのが現状である。政府の取り組みに加えて各地方自治体や企業、NPO法人などが生活困窮者に対してのサポートを実施している。さまざまな活動を知ることで、誰一人取り残さない社会を実現するために、何をしなければならないのかを考え、行動するきっかけにしてほしい。

 

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。