● 一人暮らしの高齢女性 4割貧困(2024年3月8日の記事より)
学習者用解説
「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。
SDGs5番「ジェンダー平等を実現しよう」には、女性に対する差別の撤廃や社会における女性の参画、リーダーシップの機会を確保することなどが目標として設定されています。しかし、現状では目標が達成に向かっていると言い難い状況にあります。
今回の新聞記事からは、わが国における単身高齢女性のおかれている経済状況が極めて厳しい状態にあることが明らかになりました。65歳以上の一人暮らし女性の相対的貧困率が44.1%に上っており、特に未婚者やパートナーと離別したケースでは、その割合が非常に高くなっていました。「相対的貧困」とは、等価可処分所得(*1)の中央値のおよそ半分以下の状態にあることを言います。「日本の場合、2018年の貧困ラインは127万円(一人世帯)です。(中略)2人世帯だと約180万円、3人世帯だと約220万円、4人世帯だと254万円」となっています(*2)。そして実に6~7人に一人が相対的貧困状態にあり、ひとり親家庭では50%を超えると言われています。また、「絶対的貧困」という言葉もあり、世界銀行の定義によると、1日2.15ドル未満で暮らす人がその状態であるとされていて、2022年には世界でおよそ6億8,500万人と推計されています。
一方、世界経済フォーラムが毎年公表する「ジェンダーギャップ指数」における日本のランクが、世界的にみても低いレベルであるのを聞いたことがある人は少なくないでしょう。この指標は、教育、健康、政治参画、経済参画の4側面において、女性がおかれている状況をいくつかの指標を設けて国別にランキングしたものです。2023年のランキングでは、わが国は調査した146か国中125位となっていて非常に後れをとっていると言わざるを得ません。特に、国会議員や閣僚の男女比などが指標になっている「政治参画」では0.057と、女性のスコアが男性の5%程度と、大きな格差が存在しています。また、賃金や管理職の男女格差などが指標になっている「経済参画」でも0.561と、女性は男性の約半分のスコアになっています。ジェンダー問題は、大胆な変革が必要な社会問題の一つであると言えるでしょう。
このように、高齢者の貧困問題は、ジェンダー格差の問題と相まってとても深刻な問題になっています。また、この問題はSDGs2番「飢餓をなくそう」、SDGs3番「すべての人に健康と福祉を」とも相互に影響していると考えることができるでしょう。さらに、この問題の難しさは、普段私たちが生活している中ではとても見えにくくなっている点が挙げられます。一人暮らしの高齢女性の中には、家の外に出て人と話したりすることが、肉体的、精神的に難しい方がいることは容易に想像できます。つまり、行政だけでなく地域社会全体で考えていく問題であると言えるでしょう。
*1…世帯の可処分所得を世帯人数の平方根で割ったもの
*2…SDGs ACTION「相対的貧困とは? 定義と現状、解決につながる対策を紹介」
長崎大学教育学部准教授 小西祐馬氏
相対的貧困とは? 定義と現状、解決につながる対策を紹介:朝日新聞SDGs ACTION!