目標4と関連づけて考えよう!

● 不登校8年連続で増加 過去最多(2021年10月14日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● 不登校8年連続で増加 過去最多

 

 2020年度に30日以上登校せず「不登校」とみなされた小中学生が、前年度より8.2%増の19万6,127人だったことが文部科学省の調査でわかった。不登校生は8年連続で増え、1991年度の統計開始以降で最多だった。主な要因は、「無気力、不安」が46.9%と最多で、「生活リズムの乱れ、あそび、非行」が12.0%だった。不登校の高校生は4万3,051人。また、小中高校から報告された児童生徒の自殺者数も415人で過去最多となった。警察庁統計では昨年度の小中高校生の自殺者は507人(暫定含む)で、学校側が把握できていないケースもあると見られる。コロナ禍による休校など生活環境の変化で、登校意欲がわかなかったり、家庭での息苦しさが増すなどしたりして多くの子どもが心身に不調をきたしたことが浮き彫りになった。

 

(第一小論net〈ニュースダイジェスト〉2021年10月14日の記事より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 学校に通う子どもたちが苦難に直面している。コロナ禍により不登校数が過去最多となったが、休校などにより生活リズムが狂ったことや、学校行事などが制限され登校意欲が低下したことなどが、その原因として指摘されている。加えて、友人関係の構築が難しくなっていることもその原因の一つではないかと思われる。筆者の大学でも、オンライン講義の受講が強いられ、大学に登校する機会がほとんど得らなかったため、友人を作ったり幅広い交友関係を築いたりすることができず、孤立している感覚を持った学生も少なくない。それらのストレスからSNSなどに向かい、孤独感が助長されることも想像に難くない。

 

 SDGs4番「質の高い教育を」では、すべての人に質の高い教育を提供することが目標として設定されている。しかし、国連「持続可能な開発目標(SDGs)報告2021」によると、コロナ禍によって国際的な教育習熟度の低下が見られたという報告もあり(*1)、これは決してわが国にも無関係ではないだろう。また、コロナ禍による運動機会の減少や精神衛生上の問題の発生は、SDGs3番「すべての人に福祉と健康を」にかかわってくる。

 

 持続可能な社会を構築するために教育が果たす重要性については、異論をはさむ余地がないだろう。学校は、社会の変化を受け入れつつ、すべての人に質の高い教育を提供しつづけなければならないのだ。

 

 *1…持続可能な開発目標(SDGs)報告2021 概要
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_report/

 


 

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 この記事を読んでいる高校生の皆さんは、新型コロナウイルスの蔓延により、オンラインで授業を受けることになったり、部活動が制限されたり、修学旅行や体育祭などの学校行事が中止になったりした経験をしたことでしょう。新型コロナウイルスによる大きな社会の変化が、学校教育だけでなく私たちの生活にも変化をもたらしました。学校に登校できないことによって生活リズムが狂ったことで、不登校になった人が多くなったという調査結果が発表されました。また、家庭での息苦しさが増したことや、友だちを作り友情を深める機会が減ったことも相まって孤独感を感じる生徒・児童が増え、最悪の場合自殺に至るということは、決して見過ごせない問題です。今回のパンデミックは、学校の存在意義や必要性について改めて考えさせられる機会になりました。

 

 SDGs4番「質の高い教育を」では、初等・中等教育だけでなく高等教育も含めたすべての人に質の高い教育を提供することが目標として設定されています。しかし、コロナ禍への対応の中で、通信ネットワークが整備されていなかったりパソコンなどの電子機器を持っていなかったりすることによりオンライン授業を受けることができない人の存在が浮き彫りになりました。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)報告2021」によると、コロナ禍によって世界的に教育習熟度の低下が見られるという報告がなされました(*1)。これは決して海外の問題だけでなく、わが国にもあてはまることでしょう。

 

 また、コロナ禍では運動する機会が減少しましたし、衛生面の管理の重要性も指摘されました。これらはSDGs3番「すべての人に福祉と健康を」にかかわっています。そして、オンライン授業を受けることができない人がいる環境の改善はSDGs1番「貧困をなくそう」に、通信インフラの整備はSDGs9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」にそれぞれかかわっています。ほかにも、コロナ禍により親の仕事が失われたことで子どもが学校に通えなくなるという問題はSDGs8番「働きがいも経済成長も」に関係していますし、気候変動による食料不足で体調を壊し学校に通えないということはSDGs2番「飢餓をゼロに」や13番「気候変動に具体的な対策を」にもかかわっています。このように、教育の問題は多くの社会問題と複雑に絡み合っています。SDGsに関係する問題を解決するためには、多くの問題やその関連性を視野に入れなければならないのです。

 

 教育はSDGsを達成する鍵だと言われています。持続可能な社会を構築していくためには、すべての人が質の高い教育を受けることで、世界の現状を学び、どうすれば解決できるのを考えられるようにならなければなりません。またそれを実行するために、ほかの人と協働することが重要で、そのためのスキルは学校での友人との関係においても育まれるのです。

 

 *1…持続可能な開発目標(SDGs)報告2021 概要
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_report/

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.不登校を解消するにはどのような方策が考えられるだろうか?

* 相談対応などの取り組み面や施設設備などのハード面といった学校でできることだけでなく、子どもたちが孤立しないような施設を作ったり、家庭において子どもたちが安心して生活できるための環境を整備したり、親の仕事のあり方といった社会システムの再構築が必要なことなど、問題の所在と解決方法を多方面から考えてほしい。

 

Q.オンラインを活用した効果的な授業とはどのようなものが考えられるだろうか?

* 生徒はオンライン授業を受講して、そのメリットやデメリットを体感している。学ぶ側の立場から考えるメリットと、教える側の立場から考えるメリット両面からのアイデアを考えてほしい。同時に、デメリットについても考え、それを解消する方法などにも考えをめぐらせてほしい。

 

Q.今後の「Withコロナ」時代の学校はどのように変化するだろうか?

* オンライン授業を提供するシステムの構築を始め衛生面での取り組み徹底など、さまざまな方向性の施策が考えられる。単にコロナ対応ということにとどまらず、むしろ、これまで以上に教育効果が最大化するような学校のあり方について根本的に考えてほしい。

 

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。