目標4と関連づけて考えよう!

● 月1日以上「学習」した成人 7割超え(2022年10月29日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● 月1日以上「学習」した成人 7割超え

 

 内閣府による18歳以上の国民を対象に実施した調査で、多くの人が学び直しに前向きであることがわかった。「この1年に月1日以上どんな学習をしたか」との質問(複数回答可)では、「仕事に必要な知識・技能や資格」が40.1%で最多となった。「学習していない」(24.3%)、「無回答」(0.9%)を除くと、7割超が何らかの学習に取り組んでいたと回答した。社会人に「大学や大学院などで学び直しをしたことがあるか」という質問では、「正規課程で」との回答が5.8%、「公開講座や社会人向けプログラムで」が9.3%だった。一方「学び直したことはないが今後はしてみたい」が29.3%となった。政府は「リスキリング」(学び直し)の支援に乗り出す方針だが、担当者は「学び直しの必要性や需要の高まりが裏づけられた」と見ている。

 

(ニュースダイジェスト 2022年10月29日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 社会情勢の変化やテクノロジーの急速な進展は、獲得した経験、知識をすぐに陳腐化させてしまう。IoT、AI、DXなどといったキーワードが世の中に溢れ、技術革新が加速している。いわゆる「ヒット商品」の寿命が短くなっているという調査結果もある。2000年代では、5年を超えた寿命があったヒット商品はわずか5.6%と、1970年代以前の59.4%、80年代の46.5%と比較するとかなり短くなっている(*1)。つまり、私たちはつねに新しい知識や技術を学習し続けなければならないと言える。

 

 しかし、わが国の成人の学習状況は必ずしもそうではない。OECDは25歳以上の教育機関への在籍状況について調査している。それによると、大学ではわずか2.5%にとどまっており、OECD平均の16.6%を大きく下回っている(*2)。加えて、わが国の公的支出全体のうち、初等教育から高等教育に対する公的教育支出の割合は7.8%で、OECD平均の10.6%を下回っている(*3)。教育、とくに大人の学びに対する政府、市民の意識が高くないのかもしれない。

 

 SDGs4.7は地球市民教育や持続可能な開発のための教育、つまり生涯学習の推進がターゲットとして設定されている。加えて、SDGs8.6には、就学者職業訓練の推進が設定されている。

 

 新たな知識や技術を学び直しによって身につけて、エンプロイアビリティ(雇用される能力)を高めていくことは、今後さらに複雑化、急速化する社会においては必須となってくるだろう。

 

 

*1…ヒット商品のライフサイクル
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/dl/s1216-11f02.pdf

 

*2…公財支出のうちの公財政教育支出の割合(OECD調査)
Education at a Glance 2022
Table C2.1. Total expenditure on educational institutions as a percentage of GDP (2019)

 

*3…高等教育機関への25歳以上の入学者の割合
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/043/siryo/__icsFiles/afieldfile/2017/12/11/1399236_4.pdf

 


 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 この記事を読んでいる生徒の皆さんは、学ぶのは大学までだと思っていませんか?勉強は若い頃にすることで、大人になったらもうしなくてよいと考えているならば、その認識は改めなければならないでしょう。

 

 テクノロジーの進展が早いことは皆さんも日々の生活から感じていることでしょう。スマートフォンの機能がどんどん増えたり、電化製品の性能がどんどんよくなったりしますよね。また、近年は社会情勢の変化や人々の考え方や生活様式なども著しく変化しています。地域的な紛争が世界全体の経済に大きな影響を及ぼし、脱炭素社会の実現に向けて環境に配慮した行動をしなければならなくなるなど、学校の教科や勉強の方法も変わってきていることでしょう。そのような変化に柔軟に対応したり、変化を生み出したりするために、私たちは新しい技術や知識、考え方を絶えず習得していかなければならないのです。

 

 ところが、わが国の大人はあまり学んでいないというデータがあります。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、大学において25歳以上の学生の在籍率は日本人ではわずか2.5%です。OECD平均が16.6%、アメリカやオーストラリアなどの国々ではおよそ4人に1人が25歳以上の学生だということと比較しても、わが国の状況は大きく下回っています(*1)。また、政府がどの程度教育に予算をかけているかという調査でも、わが国は世界各国の中でも低い水準となっています。

 

 SDGs4番「質の高い教育をみんなに」の中には生涯学習の推進が組み込まれています。生涯学習とは、学校での学習だけではなく、社会人になってからもさまざまな教育の機会を利用して学び続けるという意味です。そして、ターゲットSDGs4.7はこの地球を持続可能にするための地球市民教育やESD(Education for Sustainable Development・持続可能な開発のための教育)を推進していくことが盛り込まれています。加えて、SDGs8番「働きがいも経済成長も」の中のSDGs8.6には、労働者の職業訓練の推進が設定されています。このように、SDGsには大人になってから学び続けることの重要性が示されているのです。

 

 そして、この新聞記事によると、社会人の学び直しに対する認識が変わってきているようです。働きながら資格を取得するなど、学び直しの意欲が高まっているように感じられます。多くの人が、学びたいときに学べるような社会の雰囲気づくりだけでなく、教育機関へのアクセスをしやすくなるような制度や仕組みの整備などが重要になってくるでしょう。

 

 

*1…高等教育機関への25歳以上の入学者の割合
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/043/siryo/__icsFiles/afieldfile/2017/12/11/1399236_4.pdf

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.身の回りで感じられるテクノロジーの進化にはどのようなものがあるだろうか?

* スマートフォンや電化製品などの、子どもたちにとって馴染みの深いものはもちろん、ビルや橋、空港などのインフラ、商品のデリバリーの仕組み、スマホのアプリ開発などさまざまなカテゴリーでの変化を考えさせたい。また、消費者としての目線だけにとどまらず、生産者の目線で社会を見させることを試みたい。

 

Q.社会人がもっと大学に行くようにするにはどういう策が考えられるだろうか?

* 海外の大学進学へのルートの違いなどにも考慮しながら、学習に対する認識、特に社会人の学びに対する認識の違いなどを考えさせたい。加えて、大学側の受け入れ態勢や、政府などの支援がどう違うのかを調べながら、どうすれば、もっと社会人が大学に行くのかについて考えさせたい。

 

Q.どのような資格や能力が今後求められるだろうか?

* 英検や簿記などは生徒にとっても馴染みが深い資格だと思われるが、この機会に、仕事を効率的に進めたり、高いレベルでの成果を出したりするために、仕事上で求められる能力や資格を考えさせたい。また、能力に関しては、国内では文部科学省、世界的にはOECDなどの機関が提唱する能力分類などを確認させたい。

 

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。