● 児童労働撤廃へ向けて 人権に配慮されたカカオ原料使用
学習者用解説
「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。
学校に行くことができずに働いている子どもが世界で約1億6,000万人いると言われています。実に子どもの10人に1人です。さらにそのうちの7,900万人は危険で有害な状況で働いています(*1)。皆さんが手にしているチョコレートの原料となるカカオ豆も、そんな子どもが生産にかかわったものかもしれません。子どもの労働に対して支払われる賃金は極端に安いため、私たちの手元に届く商品の値段を安くできるのです。そんなチョコレートを食べたいですか?
チョコレート以外にも、パーム油や綿花など、私たちの衣食住にかかわっている産業で、児童労働や強制労働が報告されています。現在の経済活動は、原料の生産などが途上国でなされることも多く、また、生産から流通の過程で、さまざまな企業や組織がかかわっているため、実際にどのような環境で働いてその原料を生産しているのかについて、把握することが非常に難しくなっています。SDGsではゴール8番に児童労働の撤廃が記されていますが、1番、2番、4番などといったほかの番号とも児童労働は深くかかわっています。
国連は人権保護を目的に2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」を策定しました。多国籍企業を中心に世界的に関心が高まり、わが国においても2020年に「国別行動計画」が策定され、児童労働のみならず、男女格差や障害者雇用など、人権におけるさまざまな観点から企業や行政がとるべき指針が示されました。
また、「フェアトレード」という言葉を聞いたことがありますか? フェアトレードとは「開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立をめざす『貿易の仕組み』」のことです(*2)。公正な貿易を行うことで、途上国の人たちを守ろうという取り組みです。フェアトレード認証を受けた商品を見たり買ったりしたことがある人も少なくないでしょう。
また、新聞記事にあるカカオ豆のように、生産が途上国を含めた世界中に及ぶ農産品や地下資源などの生産や流通に対して、公正な企業活動を支援、認証していこうという取り組みが広がりつつあります。スーパーマーケットなどで認証を受けた商品であることを示すシールが貼られていることも多くなってきましたので、お店に行った際はぜひ確認してみてください。
これまで私たちは、商品を安く手に入れることができることにメリットを感じていた人が多いと思います。しかし、企業が商品を安くできるのは、児童労働や強制労働など、劣悪で低賃金な状況で働いている人が生産した原料を使用しているからかもしれません。お店で商品を購入する際に、生産者のことを考えてみることが大切です。
*1…ユニセフ
https://data.unicef.org/resources/child-labour-2020-global-estimates-trends-and-the-road-forward/
*2…フェアトレード・ラベル・ジャパン
https://www.fairtrade-jp.org/about_us/overview.php