目標8と関連づけて考えよう!

● 児童労働撤廃へ向けて 人権に配慮されたカカオ原料使用(2022年9月27日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● 児童労働撤廃へ向けて 人権に配慮されたカカオ原料使用

 

 有楽製菓が製造販売する、1個30円ほどで安さが売りのチョコバー「ブラックサンダー」が、原料に使うカカオを児童労働に頼らずに収穫されたものに切り替えた。15日の生産分からすべてのカカオが切り替わったという。原料変更で数%のコスト高となるが、円安やウクライナ危機による原料高の影響より小さいため、現時点で値上げの予定はないとしている。児童労働撤廃の対策をとったカカオだけで主力商品をつくるのは、国内の大手メーカーではまだ珍しい。有楽製菓は、2025年までに自社製品で使うカカオすべてを児童労働に頼らないものに変えることを目標に掲げている。児童労働の撤廃に取り組むNPO法人ACEなどによると、日本のカカオ輸入の8割を占めるガーナでは、カカオ産業で77万人の児童労働が報告されている。株主や消費者の視線が厳しい欧米メーカーに比べ、日本では取り組みが遅れている。

 

(ニュースダイジェスト 2022年9月27日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 産業界における人権意識が高まりを見せている。サプライチェーンがグローバルに展開される現在の産業構造においては、原料生産など「川下」組織における労働環境まで完全に把握するのは難しい。現在、世界の5〜17歳の子どものうち、約1億6,000万人が児童労働に従事し、さらにそのうちの7,900万人は危険で有害な状況で働いているとされている(*1)。SDGsではゴール8番に児童労働の撤廃が記されているが、1番、2番、4番などといった番号とも深くかかわっている。

 

 国連は2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」を策定し、わが国においても2020年に「国別行動計画」が策定され、児童労働のみならず、人権におけるさまざまな観点からの指針が示されることとなった。

 

 一方で、フェアトレードにも関心が高まっている。フェアトレードとは「開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す『貿易のしくみ』」である(*2)。

 

 また、新聞記事のように、カカオ豆だけでなくパーム油や綿花など、生産が途上国に及ぶ幅広い農産品の生産や流通に対して、人権保護など適切な方法で生産された農作物を取り扱う動きが広がりつつある。

 

 生産コストをできる限り抑え、販売価格を下げる企業の行動は、私たち消費者に対して短期的な利益しかもたらさない。長期的には大きな問題として跳ね返ってくることを心得ておく必要があるだろう。

 

 

*1…ユニセフ
https://data.unicef.org/resources/child-labour-2020-global-estimates-trends-and-the-road-forward/

 

*2…フェアトレード・ラベル・ジャパン
https://www.fairtrade-jp.org/about_us/overview.php

 

 


 

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 学校に行くことができずに働いている子どもが世界で約1億6,000万人いると言われています。実に子どもの10人に1人です。さらにそのうちの7,900万人は危険で有害な状況で働いています(*1)。皆さんが手にしているチョコレートの原料となるカカオ豆も、そんな子どもが生産にかかわったものかもしれません。子どもの労働に対して支払われる賃金は極端に安いため、私たちの手元に届く商品の値段を安くできるのです。そんなチョコレートを食べたいですか?

 

 チョコレート以外にも、パーム油や綿花など、私たちの衣食住にかかわっている産業で、児童労働や強制労働が報告されています。現在の経済活動は、原料の生産などが途上国でなされることも多く、また、生産から流通の過程で、さまざまな企業や組織がかかわっているため、実際にどのような環境で働いてその原料を生産しているのかについて、把握することが非常に難しくなっています。SDGsではゴール8番に児童労働の撤廃が記されていますが、1番、2番、4番などといったほかの番号とも児童労働は深くかかわっています。

 

 国連は人権保護を目的に2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」を策定しました。多国籍企業を中心に世界的に関心が高まり、わが国においても2020年に「国別行動計画」が策定され、児童労働のみならず、男女格差や障害者雇用など、人権におけるさまざまな観点から企業や行政がとるべき指針が示されました。

 

 また、「フェアトレード」という言葉を聞いたことがありますか? フェアトレードとは「開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立をめざす『貿易の仕組み』」のことです(*2)。公正な貿易を行うことで、途上国の人たちを守ろうという取り組みです。フェアトレード認証を受けた商品を見たり買ったりしたことがある人も少なくないでしょう。

 

 また、新聞記事にあるカカオ豆のように、生産が途上国を含めた世界中に及ぶ農産品や地下資源などの生産や流通に対して、公正な企業活動を支援、認証していこうという取り組みが広がりつつあります。スーパーマーケットなどで認証を受けた商品であることを示すシールが貼られていることも多くなってきましたので、お店に行った際はぜひ確認してみてください。

 

 これまで私たちは、商品を安く手に入れることができることにメリットを感じていた人が多いと思います。しかし、企業が商品を安くできるのは、児童労働や強制労働など、劣悪で低賃金な状況で働いている人が生産した原料を使用しているからかもしれません。お店で商品を購入する際に、生産者のことを考えてみることが大切です。

 

 

*1…ユニセフ
https://data.unicef.org/resources/child-labour-2020-global-estimates-trends-and-the-road-forward/

 

*2…フェアトレード・ラベル・ジャパン
https://www.fairtrade-jp.org/about_us/overview.php

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.児童労働に関する認証制度にはどのようなものがあるか?

* 新聞記事に掲載されているカカオ豆のCocoa Horizon(ココアホライズン)財団のみならず、世界には児童労働が行われていない生産を認証する制度が多数存在する。その種類や仕組みを理解すると同時に、児童労働が行われる背景についての理解や、途上国における認証制度確立の難しさについても考えが及ぶようにしたい。

 

 

Q.その他の「持続可能な認証制度」にはどのようなものがあるか?

* 衣料の原料となる綿花、加工食品の生産に欠かせないパーム油、乱獲などではない方法で生産された水産物、など、世界には「持続可能な調達」を認証する制度が数多く存在している。その種類や対象商品のみならず、なぜそのような認証が必要になったのかの背景、原因についても考えさせたい。

 

 

Q.フェアトレード商品と何か?

* 現在、フェアトレード商品の種類は多岐にわたる。どのような商品があるのかについて確認するとともに、その仕組みについて調べてみたい。加えて、なぜこのような商品が注目されているのか、その背景についても考えさせたい。

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。