情報とSDGs

 

 SDGsでは17の大きな目標が設定されていますが,「情報」はそれらと直接・間接に関係しています。しかし,目標だけからはその関係はわかりにくいと思います。そこで,ここでは目標ごとに設定されているターゲットの一部を見ながら,「情報」との関係を考えてみましょう。

(以下のSDGsの訳は https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/goal2.html による。)

1.貧困をなくそう(あらゆる場所で,あらゆる形態の貧困に終止符を打つ)

ターゲット「2030年までに,貧困層及び脆弱層をはじめ,全ての男性及び女性が,基礎的サービスへのアクセス,土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限,相続財産,天然資源,適切な新技術,マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え,経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。」

 

→所有権などの管理や金融サービス,基礎的サービスへのアクセスの多くが,情報システムで支えられています。

 

2.飢餓をゼロに(飢餓を終わらせ,食料安全保障及び栄養改善を実現し,持続可能な農業を促進する)

ターゲット「2020年までに,国,地域及び国際レベルで適正に管理及び多様化された種子・植物バンクなども通じて,種子,栽培植物,飼育・家畜化された動物及びこれらの近縁野生種の遺伝的多様性を維持し,国際的合意に基づき,遺伝資源及びこれに関連する伝統的な知識へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する。」

 

→遺伝子情報や知識へのアクセスも,情報システムによって支えられています。

 

3.すべての人に健康と福祉(あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し,福祉を促進する)

ターゲット「主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また,知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い,安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び,特に全ての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。」

 

→医薬品の研究開発では,コンピュータを使った新薬の探索が行われています。感染症対策では,接触履歴を管理するアプリも使われました。

 

4.質の高い教育をみんなに(すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し,生涯学習の機会を促進する)

ターゲット「2020年までに,開発途上国,特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国,並びにアフリカ諸国を対象とした,職業訓練,情報通信技術(ICT),技術・工学・科学プログラムなど,先進国及びその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる。」

 

→ここでは,情報通信技術を学ぶこと自体が目標としてあげられています。これは,情報通信技術は全ての解決の基礎となるからです。

 

5.ジェンダー平等を実現しよう(ジェンダー平等を達成し,すべての女性及び女児の能力強化を行う)

ターゲット「女性の能力強化促進のため,ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。」

 

→情報通信技術は,場所や時間の制約の少ない働き方を提供するなどの貢献をしています。

 

6.安全な水とトイレを世界中に(すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する)

ターゲット「2030年までに,国境を越えた適切な協力を含む,あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施する。」

 

→統合水資源管理では,過去のデータからコンピュータを使って降水量を予測することなどでコンピュータを活用することになります。

 

7.エネルギーをみんなに,そしてクリーンに(すべての人々の,安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する)

ターゲット「2030年までに,世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。」

 

→エネルギー効率の改善では,コンピュータを使った最適化が重要となります。

 

8.働きがいも経済成長も(包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する)

ターゲット「国内の金融機関の能力を強化し,全ての人々の銀行取引,保険及び金融サービスへのアクセスを促進・拡大する。」

 

→サービスへのアクセスを拡大するためには,情報システムの整備が必要となります。

 

9.産業と技術革新の基盤をつくろう(強靱(レジリエント)なインフラ構築,包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る)

ターゲット「後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ,2020年までに普遍的かつ安価なインターネットアクセスを提供できるよう図る。」

 

→ここでは,開発途上国における情報通信技術のアクセスの向上自体が目的となっています。これは,情報通信を改善することがあらゆることの基盤として重要だからです。

 

10.人や国の不平等をなくそう(各国内及び各国間の不平等を是正する)

ターゲット「2030年までに,移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げ,コストが5%を越える送金経路を撤廃する。」

 

→暗号技術を活用した送金など,情報通信技術を使った送金コストの低廉化が進められています。

 

11.住み続けられるまちづくりを(包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する)

ターゲット「2030年までに,脆弱な立場にある人々,女性,子供,障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し,公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により,全ての人々に,安全かつ安価で容易に利用できる,持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。」

 

→自動運転技術など,情報通信システムにより安全性や効率を高める努力が進められています。

 

12.つくる責任,使う責任(持続可能な生産消費形態を確保する)

ターゲット「2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。」

 

→ここでも情報通信システムが管理や効率化のために必須となっています。

 

13.気候変動に具体的な対策を(気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる)

ターゲット「気候変動の緩和,適応,影響軽減及び早期警戒に関する教育,啓発,人的能力及び制度機能を改善する。」

 

→さまざまなセンサから取得したデータに基づいた解析から,気候変動問題が共通認識となりました。さらに,コンピュータを用いたシミュレーションを使って,将来の予測もされています。

 

14.海の豊かさを守ろう(持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し,持続可能な形で利用する)

ターゲット「2020年までに,国内法及び国際法に則り,最大限入手可能な科学情報に基づいて,少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全する。」

 

→ここでも,科学情報の収集・管理が重要です。これは,コンピュータなくしてはできないことです。

 

15.陸の豊かさを守ろう(陸域生態系の保護,回復,持続可能な利用の推進,持続可能な森林の経営,砂漠化への対処,ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する)

ターゲット「2020年までに,あらゆる種類の森林の,持続可能な形の管理をすすめ,森林の減少をくいとめる。また,おとろえてしまった森林を回復させ,世界全体で植林を大きく増やす。」

 

→管理をするためには,現状を調査・記録する必要があります。人工衛星から撮影した画像を解析して森林の面積を求めるなど,ここでも情報通信システムが活用されています。

 

16.平和と公正をすべての国に(持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し,すべての人々に司法へのアクセスを提供し,あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する)

ターゲット「国内法規及び国際協定に従い,情報への公共アクセスを確保し,基本的自由を保障する。」

 

→情報に適切な形でアクセスできるようにするためには,情報デザインなどについての理解も必要となります。

 

17.パートナーシップで目標を達成しよう(持続可能な開発のための実施手段を強化し,グローバル・パートナーシップを活性化する)

ターゲット「2017年までに,後発開発途上国のための技術バンク及び科学技術イノベーション能力構築メカニズムを完全運用させ,情報通信技術(ICT)をはじめとする実現技術の利用を強化する。」

 

→情報通信技術により,相手のいるところへ移動しなくても,コミュニケーションをとり連携することが可能となりました。連携するためのツールも,どんどん良いものができています。ツールの利用には,情報メディアに対する理解も重要となります。

 

 このように「情報」は,SDGsの基盤として重要な役割を担っています。SDGsが広く知られるようになったのも,情報通信技術がなければ不可能だったでしょう。しかし,上であげたターゲットの文章は読みにくかったのではないでしょうか。情報デザインとしてはまだまだですね。みなさんの活躍する余地はたくさんありそうです。

 しかし注意は必要です。情報通信技術はSDGsにプラスに寄与するだけでなく,マイナスに働くこともあります。たとえば,SNSを使ったコミュニケーションでは,デマや中傷によりジェンダー平等などが損なわれることもあります。巨大IT企業によって経済的不平等が深刻化し,貧困がより深刻になっているという意見もあります。仮想通貨のシステムの中には,膨大な計算が必要で環境に悪影響を与えるものがあるという指摘もあります。

 みなさんには,「情報」を学ぶことで「情報」の持つマイナス面に注意しながら,SDGsの諸課題をうまく解決していただけることを期待しています。