【NEWSとSDGs】目標13と関連づけて考えよう!

● アメリカ パリ協定へ正式復帰(2021年2月20日の記事より)

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 私たちの生活やそれを支える産業から排出される二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが増え、地球の気温が上昇しています。地球の気温が上昇すると、異常気象の原因となることは、昨今の洪水や台風の被害からも私たちは実感を持って理解できると思います。しかし、私たちへの影響はそれにとどまりません。異常気象は気候変動として世界中の問題ともなっています。気候変動は農業に負の影響を与えます。多くの飲食物を輸入に頼っているわが国においても人ごとではありません。

 

 国際社会は気候変動に対応するために、1995年から「国連気候変動枠組条約締約国会議;COP」を開催し議論を続けてきました。そして2015年に開催されたCOP21では、2100年までの地球の平均気温上昇を工業化以前に比べて2.0℃以内に、そしてできるだけ1.5℃に抑えるという「パリ協定」が採択されました。

 

 しかし、現状は非常に厳しい状況です。主要な温室効果ガスである二酸化炭素に着目すると、ここ数十年で過去に例を見ないほど空気中の濃度が上昇しています。排出された二酸化炭素は森林や海洋で吸収してくれるのですが、人間社会の発展がそれを上回る排出をしてしまっていると言われています。また、二酸化炭素の排出状況を国別に見てみると、世界最大の排出国は中国で全体の28.2%を占めています。次いでアメリカで14.5%、インド、ロシアと続き、日本は第5位の排出量となっています(*1)。世界全体で二酸化炭素排出を削減していかなければならないため、パリ協定はより大きな意味を持っています。

 

 アメリカはトランプ政権に移行した際に、パリ協定からの離脱を表明しました。二酸化炭素排出に大きく「貢献」しているアメリカの離脱は、世界全体の二酸化炭素排出減の努力、協調に対して大きな影を落としました。しかしながら、バイデン政権に移行した際に即座に復帰を果たしたことは、二酸化炭素排出削減に向けて世界全体の準備が整ったと言えるのではないでしょうか。

 

 わが国政府も2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。「カーボンニュートラル」というのは、二酸化炭素の排出する量と吸収する量をプラスマイナスゼロにすることを言います。これは簡単なことではありません。部門別に二酸化炭素の排出状況を見てみると、エネルギーや運輸などの産業部門での排出が全体の85%を占めますが、家庭部門からも約15%排出しています(*2)。産業における排出量を削減していくのはもちろんのことですが、私たちの生活から排出される二酸化炭素の削減にも私たちは努めていかなければなりません。

 

 残念ながら地球温暖化の進行は待ってくれません。SDGsの期限を迎える2030年には、二酸化炭素の排出量を概ね半分にしなければなりません。産業部門だけでなく、私たち一人ひとりができることを最大限取り組んでいかなければならないのです。

 

*1…出典:https://www.jccca.org/download/13327
*2…出典:https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/green_innovation/pdf/003_03_01.pdf