● 交通事故死者数 最少2,636人(2022年1月5日の記事より)
学習者用解説
「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。
SDGs3番「すべての人に健康と福祉を」の中に、交通事故死を減らすターゲットが設定されています。ターゲット3.6は「2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる」で、2020年が目標年です。新聞記事によると、2021年の交通事故死者数が2,636人と過去最低を更新したとされています。実際に、わが国の2015年の交通事故死者数は5,039人であったことから、2021年の結果はこのターゲットに大きく貢献していると言えます。
この新聞記事では、その要因として新型コロナウイルスによる外出制限が影響したのではないかとされています。確かに、2021年は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が実施されたため、在宅勤務者が増えたり、外出を控える人が多くいたりしたことは記憶に新しいことでしょう。しかし、記事では車の性能の高度化、ドライバーの安全意識の向上、救急医療体制の充実なども要因として考えられることに触れています。
これらの要因もさまざまなSDGsにかかわっています。自動ブレーキシステムなどの車の性能の高度化については、SDGs9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」に関係します。もちろん、現在世界中で開発が進められている自動運転技術も含まれるでしょう。また、緊急医療体制の充実はSDGs3番の別のターゲットにかかわってきます。加えて、ドライバーの安全意識の向上は、SDGs4番「質の高い教育をみんなに」に関係しています。そのほかにも、交通事故死者数減少の要因として、信号や道路といった交通インフラの充実も考えられます。これはSDGs11番「住み続けられるまちづくりを」に関係してきます。このように、交通事故死者数の減少はさまざまなSDGsに関係してくるのです。
一方で、世界的にみるとこのターゲットの達成は非常に難しい状況です。国連の統計によると、世界の交通事故死者数は2010年から2019年の10年間で8.3%の減少に留まっています。現在でも人口10万人あたり16.7人が交通事故で死亡している現状があり、決して少ない人数ではありません。わが国をはじめとした先進諸国では、技術的な進歩やインフラの充実により、交通事故死者数は減少している国もありますが、交通インフラが整っていない国や地域では、まだまだこのターゲットの達成には程遠い状況があります。
この課題を解決するためには、世界的なネットワークを構築し、先進国で培った技術やインフラなどを、これから整備が進む途上国に効率的に提供する取り組みが重要となってくることは言うまでもありません。