目標3と関連づけて考えよう!

● 出生数 初の80万人割れ(2023年3月1日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● 出生数 初の80万人割れ

 

 厚生労働省が公表した人口動態統計(速報)によると、2022年に生まれた子どもの数(外国人を含む)は79万9,728人で、統計のある1899年以降、初めて80万人を割り込んだ。国内生まれの日本人に絞り込んだ出生数(概数)は76万人台になる可能性が高いと厚労省は見ている。40年前の1982年の出生数は151.5万人で、40年間でほぼ半減することになる。国内の日本人に限った出生数が76万人台になるのは34年と予測されていたが、それより12年早く少子化が進むことになり、減少が加速化している。厚労省は、出生数の低下は複数の要因が絡み合っているとしたうえで、若者の経済的不安定さ、コロナ下での妊娠や出産、育児への不安が影響した可能性があるとしている。

 

(ニュースダイジェスト 2023年3月1日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 2022年の出生数が80万人を割り込んだ。二度の「ベビーブーム」には年間200万人以上の出生数があったが、その後は一貫して減少を続け、2016年に100万人を割り込んだ。人口の維持に必要な合計特殊出生率が2.06程度と言われているが、2020年には1.33まで落ち込んでいる。2005年に史上最低の1・26を記録した後若干の改善はみられるものの、人口減少社会を解消するには程遠い数値となっている。

 

 それに加えて、生産年齢人口(15~64歳)も減少の一途をたどっている。1995年の8,716万人をピークに減少しており、2021年に7,450万人、2050年には5,275万になると予想されている。少子高齢化が進行すると、より少ない人数で高齢者を支えなければならなくなる。

 

 人口減少や少子高齢化についてSDGsの視点から考えてみると、ターゲット3.8「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」やターゲット8.1「経済成長率の持続」、8.5「ディーセントワークの維持」が危ぶまれる。

 

 来たるべき少子高齢化社会の社会保障制度を維持するために、さまざまな対策や改革が求められる。ターゲット5.5「女性の社会参画」や8.8「移民労働者」などがその代表例であり、環境整備や人々の意識の変革が不可欠である。

 

(参考資料)
厚生労働省「我が国の人口動態平成30年」
内閣府「令和4年版高齢社会白書」

 


 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 先進国の中には人口が減少している国も少なくありません。わが国も例外ではなく、厚生労働省の統計によると、日本で2022年に生まれた子どもが80万人を割り込んだことがわかりました。最も出生数が多かったのは「第一次ベビーブーム」と言われている1949年の270万人でした。その後「第二次ベビーブーム」の1973年209万人をピークに一貫して出生数は減少を続け、2016年には100万人を下回りました。合計特殊出生率という、1人の女性が生涯のうちに産む子どもの数の平均を算出すると、2020年には1.33となっています。人口を維持するには2.06が必要と言われていることから、人口減少社会が改善されることはとても難しい状況となっています。

 

 このままでは、私たちは生産年齢人口(15~64歳)の減少という大きな問題に直面することになります。社会保障をはじめ、わが国の公的な制度は税金で賄われています。また、日本の社会保険世界の中でも充実していると言われていますが、その財源は、加入者や事業主が支払っています。つまり、働く人が減ると税収が減少し、さまざまな社会保障制度の財源が減少するために、その維持に黄色信号が点灯するのです。実際に厚生労働省の試算では、2020年には65歳以上の1人に対して現役世代2.1人が支える計算になっていますが、今後、少子高齢化率が進むと2065年には1.3人になることが予想されています。新しい社会保障制度の仕組みを考えることが求められています。

 

 SDGsでは3番「すべての人に健康と福祉を」のターゲット3.8に「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」が書かれています。誰もが健康を維持するための必要なサポートが受けられる状態のことを言いますが、これが危ぶまれます。また、8番「働きがいも経済成長も」では、ターゲット8.1に「経済成長率の持続」、8.5に「ディーセントワークの維持」が書かれています。ディーセントワークとは、働きがいのある人間らしい仕事ができることを言いますが、健康が損なわれるとそれが叶わない可能性が高まり、満足に収入が得られない状態に陥る可能性があります。SDGsの観点からも、少子高齢化対策は非常に重要なのです。

 

 これにはさまざまな課題が複雑に関係してくるために、その解決は簡単ではありません。しかし、その一つに女性の活躍推進が挙げられます。SDGs5番に該当しますが、わが国ではまだまだ労働環境における女性の立場は弱いと言わざるを得ません。子育てに対する男女の役割をシェアすることができるための、社会的な制度や企業における取組みが大事になってくるでしょう。

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.来たるべきわが国の少子高齢化社会では、現在と比べて何が変わるだろうか?

* 人口構造が明らかに変わってくるため、さまざまな社会的な仕組みが変化するだろう。買い物やライブといった活動からのアプローチ、お店や学校といった場所からのアプローチなど、多角的な視点を持って考えさせたい。また、社会の主権者としての視点のみならず、社会を作り出す主体者としての視点も必要である。

 

Q.少子化を食い止めるためにはどのような策が考えられるだろうか?

* 保育園などの子育て環境の未整備、子どもの教育資金の不足、結婚や出産に対する社会的な認識の変化など、さまざまな方面からの対策が考えられる。また、政府、企業、地域社会など、関係するあらゆるセクターに変化が求められる。解決が非常に難しい課題ではあるものの、対策を検討する際には、海外の先進事例なども参考にしてみたい。

 

Q.世界各国の社会保障制度はどのようになっているだろうか?

* 先進国の間でも国によって大きな違いがある。例えば高福祉国家と言われる北欧などがその典型である。また、開発途上国ではその制度がいまだ未整備である部分も大きくあるだろう。税金に関する制度、社会保険の考え方など、制度に関する収入と支出の両面から考えたい。

 

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。