目標11と関連づけて考えよう!

● 東京都転入超過6.8万人 一極集中加速(2024年1月31日の記事より)

 

 

 

今月のニュース記事

 

● 東京都転入超過6.8万人 一極集中加速

 

 住民基本台帳に基づく2023年の人口移動報告を総務省が発表した。東京都は45万4,133人が転入し、38万5,848人が転出。転入者が転出者を上回る「転入超過」が前年よりも3万262人増え、2年連続で増加した。コロナ禍が収束し、若年層を中心に東京への転勤や引っ越しの動きが活発化したものと見られ、東京一極集中が浮き彫りとなった。東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)への転入超過も2年続けて前年を超えた。一方、名古屋圏(愛知、岐阜、三重)と大阪圏(大阪、兵庫、京都、奈良)は、いずれも転出者が転入者を上回る「転出超過」となった。政府は27年度に地方と東京圏との転出・転入者数を均衡させる目標を掲げているが、実現への道筋は見えない。

 

(ニュースダイジェスト 2024年1月31日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 東京一極集中が止まらない。総務省が発表した人口移動報告では、転入が超過したのは東京など7都府県にとどまり、他の40道府県は転出が転入を上回った。政府が掲げた「地方創生」や新型コロナウイルスのパンデミックによって、地方移住への動きが多少見られたものの、東京が人口を吸収し続けている実態が改めて明らかになった。

 

 東京などの大都市は、仕事、情報、文化芸術などが集まる一方で、環境悪化、災害被害の甚大化リスク、犯罪にあう可能性を抱えている。他方、人口を吸い上げられる地方は過疎化や少子高齢化が一段と進むことになる。

 

 国連の推計によると、現在世界人口80億人の約55%の人が都市に暮らしており、2050年には70%近くに達すると想定されている。とりわけ、途上国のうち人口1,000万人を超えるような大都市が数多く存在する国では、インフラの整備が遅れていることころも多く、そのような場所は人間が生活するうえで快適な生活を送ることができる状態だとは言えない。
 


 SDGs11番「住み続けられるまちづくりを」では、住宅や公共交通などの基本的サービスへのアクセス、都市災害の軽減、環境悪化防止など適切な都市計画や管理が掲げられている。環境との共生を図りつつ、住みやすい環境、社会の構築を模索していく必要が今後さらに求められるだろう。

 

 


 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 東京などの大都市には、たくさんの仕事があり、多くの情報が集まり、スポーツやエンターテイメントなどの文化芸術などが集積していて、特に若い人にとっては魅力的でしょう。しかし一方で、自然を取り壊して都市が拡大していくため、環境破壊や生物の居場所を奪ってしまいます。また、多くの人が集中することによる生活環境の悪化や、大量に発生するゴミの問題、多種多様な犯罪が発生する可能性、災害が発生した際の被害が大きくなるリスクなど、さまざまな懸念点があります。また、人口を吸い上げられる地方では過疎化や少子高齢化が一段と進み、日々の生活がままならない人々が取り残されたままになってしまいます。

 

 総務省が発表した人口移動報告によると、人々の転入が転出を上回ったのは東京など7都府県にとどまり、他の40道府県は転出が転入よりも多く、人口が減少傾向にあることがわかりました。政府は数年前に「地方創生」を掲げて、地方への移住を推進しましたし、新型コロナウイルスのパンデミックによって、人々が地方へ移住する動きが見られました。しかし、依然として東京が人口を吸収し続けているという実態が改めて明らかになりました。

 


 東京の人口は、明治9年に100万人、昭和の初めに500万人、昭和37年に1,000万人を突破しており、世界屈指の大都市です。現在は1,400万人に達していて、さらに人口が増え続けているのです。

 

 世界の人口に目を向けると、産業革命前の数千年間はずっと数億人程度で推移していました。しかし、産業革命が始まった時代から人口が急増し始め、1900年に16億人、1950年に25億人、1987年に50億人を突破、現在は約80億人となっています。そして、2050年には97億人に達すると予想されています。また、それらの増え続ける人口を吸収しているのが大都市です。現在は世界人口の約55%の人が都市に暮らしていて、2050年には70%近くに達すると予想されています。このような膨れ上がる大都市は途上国にあることが多く、生活インフラの整備や社会システムの整備が追いつかず、巨大なスラム街が形成されて、劣悪な環境で生活しなければならない人も多くいるのが現状です。

 

 SDGs11番「住み続けられるまちづくりを」には、住宅や公共交通などの基本的サービスへのアクセス、都市災害の軽減、環境悪化防止など、適切な都市計画や管理を行うことが目標として掲げられています。環境との共生を図りつつ、誰にとっても住みやすい環境や社会をつくっていく努力を続けていかなければならないでしょう。

 

 

【問いかけ例】

 

Q.地方への移住がより促進されるためにはどのような施策が考えられるだろうか?
* まずは、しっかりとした雇用が確保されること、そのうえで子育て・教育環境が充実していることが重要だと言われている。加えて、自然環境、住環境、交通の利便性などの条件も必要条件となる。全国各自治体で展開されている移住・定住政策や取り組みを比較検討しながら、どのような魅力創出やサポートが移住促進に効果的なのかを考えさせたい。


Q.災害に強いまちはどのようにしてつくられるだろうか?
* 頻繁に発生する地震や洪水などの自然災害は、都市に大きなダメージを残している。これらの対策として、まずはハード面の対策が必要である。それには、耐震性の高い建築物を増やす、余裕を持った空間づくりをするなどが考えられる。一方で、密な地域コミュニティの形成など、被害を最小限にとどめるためのソフト面の対策も重要である。実際の対応事例などを参考にしつつ、ソフト、ハード両面から対策を考えさせたい。


Q.途上国の大都市で形成されているスラム街の現状はどうだろうか?
* 途上国の人々は、仕事や教育機会を求めて大都市に集中する傾向が強い。しかし、激増する人口移動に都市開発が追いつかず、都心周辺部にスラム街が形成されてしまう。電気や上下水道が整備されておらず、不衛生な状態での生活を強いられたり、貧困状態から抜け出すために危険な仕事に従事せざるを得ず、凶悪犯罪の温床となったりする。世界各国のスラム街の現状について情報収集しながら、人間らしい生活を送るための環境整備をどのように進めていくのかを考えさせたい。

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。