目標11と関連づけて考えよう!

● トルコで地震 マグニチュード7.8(2022年2月7日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● トルコで地震 マグニチュード7.8

 

 トルコ南部ガジアンテプ県付近で6日午前4時過ぎ、マグニチュード(M)7.8の地震があった。トルコや隣国シリアの当局などによると、1,900人以上が死亡し、9千人以上が負傷した。倒壊した建物のがれきの下に多くの人が取り残されていると見られ、被害拡大のおそれがある。余震も断続的に続いており、午後には、トルコ南部で新たにM7.5の地震があった。震源の深さは10キロ。日本政府は、捜索、救助を行う国際緊急援助隊・救助チームの先発隊を派遣した。トルコのエルドアン大統領は、2,800以上の建物が倒壊したと明らかにし、死者がどれだけ増えるかわからないと述べた。シリアでも多くの建物が崩壊し、北部アレッポ県や北西部ラタキア県などで多数の死傷者が出ているという。

 

(ニュースダイジェスト 2023年2月7日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 2023年2月6日未明、トルコ南部やシリアにかけての一帯を、マグニチュード7.8という大地震が襲った。多くの建物が崩壊し、下敷きになるなどして5万人以上の人が亡くなり、多くの人が重傷を負った未曽有の大惨事となったことで、防災や減災は、現代を生きる私たちにとっては避けて通れない問題となってきた。

 

 自然災害の原因は、一つは急速な都市人口の増加である。現在、世界人口の55%が都市に住み、2050年には都市部の人口は68%にまで達するという。過密した都市に地震や洪水などのアクシデントが発生すると、その被害が深刻になりやすいのは想像に難くない。もう一つの原因は気候変動である。IPCC(*1)の報告書によると、雨の降り方が集中化する傾向にあり、ここ数年で大規模な洪水被害を世界中で引き起こしている。

 

 SDGs11番「住み続けられるまちづくりを」では、防災についてのゴールが設定されている。ターゲット11.bでは、「仙台防災枠組 2015-2030」に沿った取り組みが期待されている。この枠組には、災害リスクに対するリスクマネジメントを徹底してリスクを最小限に抑えることや、発生時の早急な回復が優先項目として挙げられている。

 

 また、防災や減災は国際協力が不可欠である。防災のノウハウや技術を提供するといった事前対策や、災害が発生した際の援助等を国境を越えて行うことは、SDGs17番「パートナーシップ」にもつながると言える。

 

*1…IPCC(The Intergovernmental Panel On Climate Change・気候変動に関する政府間パネル)
世界各国の科学者、研究者がさまざまな角度から地球環境に関する調査研究を実行している機関

 


 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 2月にトルコやシリアで大きな地震が発生し、5万人以上の人が亡くなるという大惨事となりました。1995年の阪神淡路大震災では、死者・行方不明者は約6,000人、2011年の東日本大震災では約22,000人とされていることからも、今回の地震の被害がいかに大きかったかわかるでしょう。多くの建物が崩壊し、その建物の下敷きになってしまったと報道されています。過密化した都市に脆弱な住環境が重なると、このような甚大な被害につながってしまうのです。

 

 もう一つ、都市部での被害を甚大化させていると言われているのが地球温暖化です。わが国では、集中豪雨による被害が毎年のように発生するようになってしまっています。IPCC(*1)の報告書によると、地球の平均気温が産業革命の頃から1.1℃上昇しており、雨の降り方も集中化する傾向にあると指摘しています。

 

 加えて、世界では急速に都市化が進行しています。国連の関連機関の分析によると、現在世界人口の約55%が都市に住んでいて、この割合が2050年には68%に達するとしています。今後都市はますます過密になっていくことが予想されます。

 

 都市化は、災害の被害を甚大化されるだけでなく、地球環境や私たちの社会生活にも悪影響を及ぼします。大気汚染、不衛生、犯罪、交通事故といったさまざまな問題の原因となっています。

 

 SDGs11番「住み続けられるまちづくりを」では、「都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする」という目的に向かってさまざまなターゲットが設定されています。

 

 ターゲット11.bでは、「仙台防災枠組 2015-2030」に沿った取り組みが期待されています。これは、2015年に宮城県仙台市で開催された「第3回国連防災世界会議」で採択された災害に対する世界的な対応指針です。災害の危険性をしっかり把握して、対応することの重要性や、災害が発生した際の早急な回復が優先的に取り組むべき項目として挙げられています。また、そこには、国際協力の必要性も書き込まれていて、各国が協力して、できるだけ災害が発生しないようすること、発生しても被害を最小限に抑えるための準備をすること、早急な回復に努めることをめざしています。このことは、SDGs17番「パートナーシップで目標を達成しよう」にもつながる目標です。

 

 災害はいつ発生するかわかりません。個人や家族レベルでの防災や発生時の対策をすることは重要なことですが、社会全体で準備・対応することも重要なのです。

 

*1…IPCC(The Intergovernmental Panel On Climate Change・気候変動に関する政府間パネル)
世界各国の科学者、研究者がさまざまな角度から地球環境に関する調査研究を実行している機関

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.災害の被害を最小限に抑えるためにはどのような対策が必要か?

* 事前対策と発生時対策の両面から考える必要がある。事前対策については、インフラ整備のみならず、政策立案、各種規制、教育の徹底など多岐にわたる。発生時対策に関しても、医療体制、迅速な復旧、心理面のサポートなど、防災・減災は総合的な見地からの対応が必要であることを気づかせたい。

 

Q.都市化が進む原因は? それを抑制することは可能か?

* 途上国を中心に多くの人が都市へ流入している。雇用の確保と生活の利便性追求や教育といった個人の権利に関することも含まれてくるので、抑制するのは非常に難しいと言わざるを得ない。都市ではない場所でも上記が保証される社会をどうつくるのかについて、技術革新の力も借りつつ、アイデアを巡らせたい。

 

Q.日本が世界に対してできることは?

* 日本は地震大国と言われていることに加え、洪水等の被害も多く経験している。政府や地方行政におけるさまざまな規制や法律の整備、企業における耐震技術の目覚ましい進歩、市民社会でのボランティア組織の運営など、あらゆる側面において多くのテーマがあることに気づくだろう。

 

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。