目標13と関連づけて考えよう!

● マウイ島の火事 壊滅的な被害(2023年8月12日の記事より)

 

 

 

今月のニュース記事

 

● マウイ島の火事 壊滅的な被害

 

 米ハワイ州のマウイ島で起きた大規模な山火事で、かつてのハワイ王国の首都だった歴史的な町ラハイナが壊滅的な被害を受けた。被害額は数十億ドル(数千億円)規模に上ると見られる。マウイ郡当局によると、10日時点でラハイナでの死者数は55人で、被害者はさらに増える可能性がある。また、1千以上の建物が崩壊、数百世帯は家を失ったと見られ、約1万世帯が停電している。ラハイナの火災の約8割は鎮火されたようだが、ハワイ州で最悪の自然災害になるだろうという。米バイデン大統領は、大規模災害宣言を出し、現地への物資支援などを指示した。

 

(ニュースダイジェスト 2023年8月12日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 カナダ、チリ、ギリシャ、ロシア、そしてハワイなど、世界中で大規模な森林火災が発生している。ここ数年でその頻度や規模は拡大する一方である。このような森林火災は広範囲で発生するため、人々だけでなく動物も逃げ遅れてしまうことがある。さらには、煙による人々への健康や航空機の離発着に悪影響が出るなど、さまざまな被害を我々にもたらす。これらの森林火災には地球温暖化が深くかかわっている。


 IPCCの報告書によると、地球温暖化によって雨の降り方が集中・多雨傾向になっていることが示されている。このことは洪水を引き起こしやすくなり、多くの浸水被害をもたらす。さらには、地球温暖化は海面上昇による被害、例えば生き物の生息地を奪う、農林水産業への悪影響などにつながる。特に農業への悪影響は食料危機に通じる可能性をはらんでいるだけでなく、世界経済の不安定化にもつながりかねない。


 パリ協定では「世界の平均気温の上昇を2℃以内、できれば1.5℃以内」の達成に向けて行動することが求められたが、調査ではすでに1.1~1.2℃上昇していると言われており、数年以内に1.5℃に近づくのではないかと予想されている。


 世界の国々は温暖化ガス排出抑制宣言を行い、計画実行に向けて動き始めている。しかし、現在の計画を実施しても気温上昇を食い止める推進力はそれほど強くない。実行力を高めるだけではなく、より強い計画に見直すことも重要だろう。

 

 


 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 2023年の夏は世界各地で高温となりました。地球が温暖化しているうえにエルニーニョ現象が加わったことが原因だと言われています。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「地球温暖化の時代から、地球沸騰化の時代が来た」とこのような状況に警告を鳴らしています。高温によって被害を受けるのは人間だけでありません。動物や農作物にも大きな影響をもたらすのです。

 

 地球温暖化が原因の一つとなって、大規模な森林火災がカナダ、チリ、ギリシャ、ロシアなど世界各地で発生しています。そして新聞記事で取り上げられているハワイ・マウイ島で今年発生した森林火災は50人以上の人の命を奪い、建物等への被害額は数千億円にのぼると報告されています。

 

 地球温暖化が及ぼす被害は森林火災だけではありません。まず農林水産業へ大きな影響が及びます。農作物や魚の生育場所が変化しますので、これまで育たなかった品種を育てなければならなくなったり、漁獲できる魚種が変化したりと、生産者はその対応に追われています。


 地球温暖化は集中豪雨や台風の強大化など、気候に影響を与えます。近年の雨の降り方は集中・多雨傾向になっていることが研究結果から示されています。このような傾向は、洪水や地滑りなどの被害につながることが少なくありません。2023年もアフリカやヨーロッパなどで洪水の被害が報告されています。

 

 地球温暖化に歯止めをかけるために、2015年に開催された「COP21」で「地球の気温上昇を産業革命時から2℃以内、可能な限り1.5℃以内に収める努力をする」という「パリ協定」が全会一致で採択されました。政府、地方自治体、企業、教育機関、そして私たち市民がこの達成に向けて努力をしていかなければならないとされたのです。


 しかし前途は多難です。多くの国では地球温暖化の原因となっている二酸化炭素などの温暖化ガスの排出を少なくしていく計画を立てています。しかし現在の計画では温暖化に歯止めをかける効果はそれほど大きくないことが調査研究の結果わかってきました。実行力を高めるだけでなく、より強い目標を立て直すことが必要かもしれません。それは、経済や社会のあり方を大きく変革しなければならないでしょう。


 SDGs13番は「気候変動に具体的な対策を」です。気候変動は貧困や飢餓、水の枯渇、海洋生物への悪影響へつながっていきます。そしてそのことが、私たち人間の生活にも大きな影響を与えるのです。地球温暖化の進行を科学的見地から認識し、抑制するための実行力のある計画と私たち一人ひとりの行動が危機を救ってくれると信じて、早急に行動しなければならないでしょう。

 

 

【問いかけ例】

 

Q.森林火災の被害を最小限にとどめるためにはどのような方法が考えられるだろうか?

* 森林火災は一度火がつくと瞬く間に広範囲に及ぶことが特徴である。そのため、人間だけでなく動物も逃げ遅れてしまうことが少なくない。火災の発生をできる限り早期に発見できるような仕組みをつくることや、道路の整備などのインフラ構築が重要であるが、最近では、環境負荷の少ない消火剤の開発なども進められている。

 

Q.地球温暖化による被害を多く受けるのはどのような人たちだろうか?

* 気候変動の被害を受ける人は、貧困や飢餓などの問題に直面しているような弱い立場に置かれている人たちである。一方で、その原因の多くは先進国の産業化が過度に進んだためであるという見方がある。産業の発展や生活の利便性向上など、自分の身のまわりの社会の仕組みが、脆弱な立場に置かれている人たちをリスクにさらしている側面があることを気づかせたい。

 

Q.温室効果ガス排出を抑制するにはどのような方法があるだろうか?

* 産業面では、発電における化石燃料から再生可能エネルギーへの転換、サーキュラーエコノミーの推進、農畜産業の変革など。環境面からは、森林伐採の抑制、海洋保全など。これらは私たちの生活に密接にかかわっているため、一人ひとりの選択と行動によって貢献できることを認識させたい。

 

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。