● 東京の新築戸建て 太陽光パネル設置義務化(2022年12月16日の記事より)
学習者用解説
「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。
地球温暖化が進行する大きな原因は、私たちの暮らしや産業を支えるために、石炭や石油を燃やしてエネルギーを得る過程で排出される二酸化炭素が増加していることです。元来は森林や海が二酸化炭素を吸収してくれていたのですが、地球上の人口が急速に増加し排出量が増加している一方で、森林伐採や森林火災などにより吸収力が弱くなって温暖化が進行しているのです。
その対策の中でも再生可能エネルギーの普及は大きなカギを握っています。再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、水力、地熱といった自然エネルギーなどにバイオマスなどを加えた、自然界に存在して永続的に利用できるエネルギーのことをいいます。旧来の石炭、石油、天然ガスといった化石燃料による発電から、再生可能エネルギーでの発電に切り替えることによって、電気をつくる際の二酸化炭素の排出を大きく抑えられるのです。地球温暖化を抑制するために、世界全体で再生可能エネルギーを導入していく動きが急速に進んでいます。わが国も2030年に電力生産における再生可能エネルギーの比率を36~38%にし、現在からほぼ倍増させる計画をしています(*1)。
再生可能エネルギーのうち太陽光発電は、現在一番大きなシェアを占めています。太陽光という誰でも手にできるエネルギーを利用すること、電気をつくる設備が比較的簡易であることなどから普及が進んでいます。皆さんも、一般家庭の屋根だけでなく、工場、駐車場、学校などの屋上にも太陽光発電に用いるパネルを見たことがあると思います。再生可能エネルギーによる発電を増やしていくためには、太陽光発電の普及・促進を急がなければならないのです。今回東京都では、新築戸建てや一定の大きさのビル等の屋上に太陽光パネルを設置することを義務化しました。世界的な潮流に即した取り決めだといえるでしょう。SDGs7番「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」では、ターゲット7.2に再生可能エネルギーの割合を大幅に増加させることが明記されています。風力、地熱、水力などとともに、普及を急がなければならないのです。
さらに、ロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギー危機は、世界のエネルギー生産や供給の考え方を一変しました。その点、再生可能エネルギーは自国内、自地域内での電力生産が可能であるため、エネルギーの安全保障の観点からも注目されています。
しかし、パネルの廃棄や再資源化、パネル設置などによる環境破壊、高い電気価格、送電ロス、蓄電池の性能、などのさまざま問題があります。新しいテクノロジーの開発が求められるといえるでしょう。
*1…資源エネルギー庁「エネルギー基本計画」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20211022_01.pdf