目標13と関連づけて考えよう!

● 二酸化炭素を吸収するコンクリート開発(2023年1月17日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● 二酸化炭素を吸収するコンクリート開発

 

 カーボンニュートラル(脱炭素)の実現に向け、二酸化炭素(CO₂)を吸収するコンクリートの活用法が広がっている。コンクリートを製造する際の排出量を減らすだけでなく、実質的にゼロ以下にする「カーボンマイナス」のものもある。こうしたコンクリートは「環境配慮型コンクリート」と呼ばれる。原料のセメントの代わりに、製鉄所の副産物である高炉スラグを使うことで、CO₂の排出量を約8割減らせるという。さらに、空気中のCO₂を吸収した炭酸カルシウムを混ぜるなどして、一般的なコンクリートをつくる際の排出量を上回る量を削減・固定できる製品や、3Dプリンターと合わせて複雑な造形物をつくる技術も開発されている。これらは建材で大量に使われるだけに、ゼネコン各社が開発・実用化を進めている。政府は技術開発を補助するため、2021年度から10年間で350億円を脱炭素に向けたグリーンイノベーション基金に投入する。

 

(ニュースダイジェスト 2023年1月17日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 世界の多くの国や地域がカーボンニュートラルを達成する時期を設定している。わが国も2020年に「2050年カーボンニュートラル」を宣言して以降、さまざまな政策が検討され、多くの企業が取り組みをはじめている。

 

 温室効果ガスに占める二酸化炭素の割合は極めて高いが、ここ数十年の観測結果から、その割合が急速に増加していることがわかっている。特に、産業部門からの排出が全体の1/4を占めていて、中でも製鉄業や建設業は、作られたものの用途も含めて、二酸化炭素の排出量が多いことが知られている。排出削減に向けた取り組みを行わない企業は、ESG投資や社会的な評価の面から厳しい状況におかれるようになってきている。そのため、各企業は、再生可能エネルギーの導入をはじめ、さまざまな技術開発に取り組みはじめている。今回の記事が紹介している「環境配慮型コンクリート」は、コンクリートの製造過程で発生する二酸化炭素量を削減するだけでなく、発生した二酸化炭素を原料にし、排出量よりも吸収量が上回る「カーボンマイナス」を実現している点が非常に革新的であると言える。SDGsへの取り組みを行っているように見せかけることで「グリーン・ウォッシュ」として批判の的になる事例もある中で、カーボンニュートラル社会の達成に向けて実質的に効果があるこのような技術開発が増えることを期待したい。

 

 この技術開発は、SDGs13番「気候変動に具体的な対策を」だけでなく、9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」や11番「住み続けられるまちづくりを」にもかかわる重要な取り組みである。

 


 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 地球温暖化が進んでいる理由の一つが二酸化炭素であることは皆さんもご存じでしょう。ここ数十年の観測結果から、大気中の二酸化炭素量が急速に増加していることがわかっています。世界的な目標となってきている地球の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるためには、大気中の二酸化炭素量を劇的に減らしていかなければならないのです。

 

 2020年10月に当時の菅首相が「2050年カーボンニュートラルをめざす」発言をしましたが、世界でも120を超える国や地域が同様の宣言を行っていますし、国内の多くの自治体が同様の宣言をしています。「カーボンニュートラル」というのは、私たちの生活や産業活動から排出される温室効果ガスを実質ゼロにすることです。実質ゼロというのは、排出量と吸収する量を等しくすることを言います。

 

 企業でも「カーボンニュートラル」宣言を行うところが出てきました。このような、SDGsに貢献する取り組みを行っていない企業には投資をしないという投資家の動きも活発になっており、そうした企業は国際的な取引ができないということも出てきているようです。

 

 また、わが国の二酸化炭素排出はエネルギーを作り出す際や、産業に関連がある部門からの排出が全体の9割以上を占めています。特に、製鉄業や建設業はその排出量が多いことが知られています。各企業は二酸化炭素の排出量削減に取り組まなければならないため、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入をはじめ、さまざまな技術開発に取り組んでいます。

 

 今回の記事は、ゼネコン(総合建設業)各社が、ビル建設などで大量に使用するコンクリートについて、製造過程で発生する二酸化炭素量を削減するだけでなく、発生した二酸化炭素をコンクリートの原料にし、排出量よりも吸収量が上回る「カーボンマイナス」のコンクリート製造を実現している点が素晴らしい取り組みだと言えます。

 

 しかし、このような取り組みは難しさも伴います。特にコストがかかります。そこで、SDGsへの取り組みを行っているように見せかける「グリーン・ウォッシュ」になってしまっている企業も少なくないと言われています。

 

 この取り組みはSDGs13番「気候変動に具体的な対策を」に貢献していると言えます。それだけでなく、9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」の中にも「クリーン技術の導入」が記されています。また、11番「住み続けられるまちづくりを」にもかかわってくる重要な取り組みなのです。

 

 カーボンニュートラルが実現されるためには、各産業で技術革新を進めることも重要ですが、私たち一人ひとりが生活様式を見直し、できる限り二酸化炭素の排出を減らすような選択をすることも重要です。

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.カーボンニュートラルをめざす企業の取り組みにはほかにはどんなものがあるだろうか?

* 住宅業界では、カーボンニュートラルを実現したZEH(ゼッチ)住宅の開発や販売が進んでいる。航空業界では、SAF(サフ)というバイオジェット燃料の開発が進む。また、二酸化炭素を分離・回収・貯留する「CCS」も始まっている。さまざまな業界や産業で多様な取り組みが見られる。幅広く調べさせたい。

 

Q.再生可能エネルギーの導入状況はどうなっているのか?

* 二酸化炭素の排出量が最も多いのは、電気などのエネルギーを作り出す際である。それを軽減するために、太陽光、風力、水力といった再生可能エネルギーの導入が進められている。特に洋上風力発電は国家プロジェクトもスタートしている。再生可能エネルギーの種類や発電方法、それぞれのメリットやデメリットを確認させたい。

 

Q.二酸化炭素削減に向けて私たちができることは?

* 生徒自身の生活を少し変えれば二酸化炭素削減に貢献できることを想像させ、そのメカニズムなど詳細を調べていきたい。例えば肉・乳製品、米などの農作物の生産から発生する二酸化炭素やメタンガスが多い。また、食品ロスの発生と、その処理過程からも多くの二酸化炭素炭素やメタンが発生する。衣服の製造と輸送、廃棄からも同様である。

 

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。