● 二酸化炭素を吸収するコンクリート開発(2023年1月17日の記事より)
学習者用解説
「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。
地球温暖化が進んでいる理由の一つが二酸化炭素であることは皆さんもご存じでしょう。ここ数十年の観測結果から、大気中の二酸化炭素量が急速に増加していることがわかっています。世界的な目標となってきている地球の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるためには、大気中の二酸化炭素量を劇的に減らしていかなければならないのです。
2020年10月に当時の菅首相が「2050年カーボンニュートラルをめざす」発言をしましたが、世界でも120を超える国や地域が同様の宣言を行っていますし、国内の多くの自治体が同様の宣言をしています。「カーボンニュートラル」というのは、私たちの生活や産業活動から排出される温室効果ガスを実質ゼロにすることです。実質ゼロというのは、排出量と吸収する量を等しくすることを言います。
企業でも「カーボンニュートラル」宣言を行うところが出てきました。このような、SDGsに貢献する取り組みを行っていない企業には投資をしないという投資家の動きも活発になっており、そうした企業は国際的な取引ができないということも出てきているようです。
また、わが国の二酸化炭素排出はエネルギーを作り出す際や、産業に関連がある部門からの排出が全体の9割以上を占めています。特に、製鉄業や建設業はその排出量が多いことが知られています。各企業は二酸化炭素の排出量削減に取り組まなければならないため、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入をはじめ、さまざまな技術開発に取り組んでいます。
今回の記事は、ゼネコン(総合建設業)各社が、ビル建設などで大量に使用するコンクリートについて、製造過程で発生する二酸化炭素量を削減するだけでなく、発生した二酸化炭素をコンクリートの原料にし、排出量よりも吸収量が上回る「カーボンマイナス」のコンクリート製造を実現している点が素晴らしい取り組みだと言えます。
しかし、このような取り組みは難しさも伴います。特にコストがかかります。そこで、SDGsへの取り組みを行っているように見せかける「グリーン・ウォッシュ」になってしまっている企業も少なくないと言われています。
この取り組みはSDGs13番「気候変動に具体的な対策を」に貢献していると言えます。それだけでなく、9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」の中にも「クリーン技術の導入」が記されています。また、11番「住み続けられるまちづくりを」にもかかわってくる重要な取り組みなのです。
カーボンニュートラルが実現されるためには、各産業で技術革新を進めることも重要ですが、私たち一人ひとりが生活様式を見直し、できる限り二酸化炭素の排出を減らすような選択をすることも重要です。