● 国内初 「水素で走る電車」公開(2022年2月19日の記事より)
学習者用解説
「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。
「気候変動」という言葉を耳にすることが多くなってきたと思います。オーストラリアやカリフォルニアでの大規模な森林火災や世界各地で頻発している洪水被害などのニュースを目にすることも多くなってきたのではないでしょうか。わが国においても、強大化した台風や洪水の被害が全国各地で毎年のように発生しています。その原因は地球温暖化だと言われており、二酸化炭素などの「温室効果ガス」の排出増加が大きくかかわっています。
SDGs13番「気候変動に具体的な対策を」では、世界中で温室効果ガスの排出を減らしていくことが盛り込まれています。2015年にフランス・パリで行われたCOP21(国連気候変動枠組条約締約国会議)では、産業革命以降の地球の平均気温の上昇を2℃以内、できれば1.5℃以内に抑えることという世界的な合意がなされました。さらに、昨年11月にイギリス・グラスゴーで開催されたCOP26では、さらに踏み込んで1.5℃以内をめざすべきだという議論がなされました。このように、世界は温室効果ガス排出を削減する「脱炭素」社会の実現に向けて大きく動いています。
わが国においても、2020年10月に菅首相(当時)が、2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」をめざすことを宣言し、そのために2030年までに温室効果ガスの排出を2013年比で46%削減することが追って示されました。
しかしながら、これは簡単なことではありません。私たちの日常生活に欠かせない電気を作る際に出される二酸化炭素を劇的に減らしていくことがまず重要になってきます。現在、わが国では石炭や天然ガスなどによる「化石燃料」による火力発電が全体の3/4を占めています。化石燃料による発電は二酸化炭素を大量に排出します。そこで二酸化炭素をあまり排出しない再生可能エネルギー発電へ転換する必要があります。再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、水力、地熱などからの発電を指しますが、2019年は発電量全体の20%程度を占めています。昨年発表された「エネルギー基本計画」では、これらの再生可能エネルギーを2030年には36~38%まで引き上げることをめざすことが示されました。SDGs7.2には「世界の再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大する」ことが示されており、水素発電など新しいエネルギー源の開発が求められています。
このような背景の中で、今回JR東日本が試験導入する「水素電車」は、水素と酸素を化学反応させて電気を作り出す「燃料電池」を使って動かす電車で、非常にクリーンな電車と言えます。このような燃料電池が普及することが、脱炭素社会の実現に大きく寄与するでしょう。