目標7と関連づけて考えよう!

● 東京の新築戸建て 太陽光パネル設置義務化(2022年12月16日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● 東京の新築戸建て 太陽光パネル設置義務化

 

 東京都内の新築戸建て住宅などに太陽光発電用のパネル設置を義務づける都の条例改正案が、都議会本会議で可決された。施行は2025年4月となる。戸建てを対象にしたパネル義務化は全国初だという。設置義務は、戸建てやマンションなど延べ床面積2,000平方メートル未満の新築建物の場合、住宅メーカーや販売業者に課される。ただし、対象は都内で年間延べ床面積2万平方メートル以上を施工・販売する業者に絞り、都は約50社を想定している。立地によって日当たりに偏りが出るため、対象となるすべての建物への設置は求めず、パネルを設置すべき建物の割合を地域の日照量に応じて区分する。設置スペースの確保が難しい屋根面積20平方メートル未満の建物は対象から外した。義務を達成できなかった場合の罰則はないが、都が指導や勧告、事業者名の公表を行う。

 

(ニュースダイジェスト 2022年12月16日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 地球温暖化に歯止めをかけるために、化石燃料依存の電力から脱却し、再生可能エネルギーの普及を急がなければならない。再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、水力、地熱といった自然エネルギーなどのことを指す。IEA(国際エネルギー機関)の調査によると、世界の再生可能エネルギーの発電量は2025年初頭までに石炭などの化石燃料による発電量を上回り、世界最⼤の発電源となり、電源別のシェアでは2027年には38%を占めると予想されている。国別に見ると、中国、アメリカ、インドがその容量を現在の2倍以上に増やす計画となっている。わが国も資源エネルギー庁の計画によれば、2030年の再生可能エネルギー比率を、現状の2倍以上の36~38%とする目標を掲げている(*1)。

 

 わが国の再生可能エネルギーのうち、現在最大のシェアを誇っているのが太陽光発電であり、発電量全体の約9.3%を占めている。また、今後急速に拡大する見込みであり、2030年にはシェア14~16%をめざす計画となっている(*1)。

 

 太陽光発電は、設置が比較的容易で一般家庭やビル、駐車場などの屋根を利用できることがメリットといわれている。新聞記事にもあるように、東京都が新築戸建てや一定の大きさのビル等の屋上に太陽光パネルを設置することを義務化した動きは、再生可能エネルギー比率を劇的に高めていかなければならない世界の潮流と合致している。しかし一方で、パネルの廃棄や再資源化、設置場所の環境破壊、高い電気価格、送電ロスなどのさまざまな問題を内包している。

 

 

*1…資源エネルギー庁「エネルギー基本計画」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20211022_01.pdf

 

*2…環境省
https://www.env.go.jp/earth/post_93.html

 


 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 地球温暖化が進行する大きな原因は、私たちの暮らしや産業を支えるために、石炭や石油を燃やしてエネルギーを得る過程で排出される二酸化炭素が増加していることです。元来は森林や海が二酸化炭素を吸収してくれていたのですが、地球上の人口が急速に増加し排出量が増加している一方で、森林伐採や森林火災などにより吸収力が弱くなって温暖化が進行しているのです。

 

 その対策の中でも再生可能エネルギーの普及は大きなカギを握っています。再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、水力、地熱といった自然エネルギーなどにバイオマスなどを加えた、自然界に存在して永続的に利用できるエネルギーのことをいいます。旧来の石炭、石油、天然ガスといった化石燃料による発電から、再生可能エネルギーでの発電に切り替えることによって、電気をつくる際の二酸化炭素の排出を大きく抑えられるのです。地球温暖化を抑制するために、世界全体で再生可能エネルギーを導入していく動きが急速に進んでいます。わが国も2030年に電力生産における再生可能エネルギーの比率を36~38%にし、現在からほぼ倍増させる計画をしています(*1)。

 

 再生可能エネルギーのうち太陽光発電は、現在一番大きなシェアを占めています。太陽光という誰でも手にできるエネルギーを利用すること、電気をつくる設備が比較的簡易であることなどから普及が進んでいます。皆さんも、一般家庭の屋根だけでなく、工場、駐車場、学校などの屋上にも太陽光発電に用いるパネルを見たことがあると思います。再生可能エネルギーによる発電を増やしていくためには、太陽光発電の普及・促進を急がなければならないのです。今回東京都では、新築戸建てや一定の大きさのビル等の屋上に太陽光パネルを設置することを義務化しました。世界的な潮流に即した取り決めだといえるでしょう。SDGs7番「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」では、ターゲット7.2に再生可能エネルギーの割合を大幅に増加させることが明記されています。風力、地熱、水力などとともに、普及を急がなければならないのです。

 

 さらに、ロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギー危機は、世界のエネルギー生産や供給の考え方を一変しました。その点、再生可能エネルギーは自国内、自地域内での電力生産が可能であるため、エネルギーの安全保障の観点からも注目されています。

 

 しかし、パネルの廃棄や再資源化、パネル設置などによる環境破壊、高い電気価格、送電ロス、蓄電池の性能、などのさまざま問題があります。新しいテクノロジーの開発が求められるといえるでしょう。

 

 

*1…資源エネルギー庁「エネルギー基本計画」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20211022_01.pdf

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.世界の再生可能エネルギーの普及状況はどうだろうか?

* アメリカは州によっても異なるが2050年に再生可能エネルギーを100%にする目標をたてている州もある。EUでは2030年に45%を、またヨーロッパの国の中には60%、70%をめざす国もある。最大の二酸化炭素排出国である中国では、2025年に発電量全体の1/3を太陽光とすることを目標としている。一方で、多くの人口を抱えるアフリカ諸国などの途上国では、目標を設定していない国も少なくない。世界的に普及させていかなければならない中、置かれている国の状況によっても普及の状況が大きく異なっていることに気づき、世界で一丸となってどのように進めていくのかを考えさせたい。

 

Q.わが国の太陽光発電以外の再生可能エネルギーの普及状況はどうだろうか?

* 風力発電については、わが国では陸上に風車を設置できる場所が少ないため、洋上風力発電を積極的に進めるプロジェクトがスタートしている。また、火山国であるわが国では地熱発電も有望であるが、コスト面などの課題も多い。水力発電は、急峻な国土であるために水量が多く豊富な点は有利であるが、規模が小さくなりがちで、再生可能エネルギー普及への貢献度合いはなかなか高まらない。わが国で再生可能エネルギーを普及させるためには、日本の国土の特徴とそれぞれの方法のメリット・デメリットと関連づけて考えたい。

 

Q.そのほか環境にやさしいエネルギーにはどのようなエネルギーがあるだろうか?

* 水素発電は、水素を燃料させる際のエネルギーを電気に変える方法で、排出するのが酸素と水というクリーンなエネルギーである。しかし、水素自体を生成する際に二酸化炭素を排出するなどの課題もある。そのほか、バイオマス、原子力、アンモニア発電などの方法もあるが、それぞれのメリット・デメリットを考慮しながら、どのような進化があればよりクリーンなエネルギーになるかを考えさせたい。

 

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。