【NEWSとSDGs】目標7と関連づけて考えよう!

● 化石燃料の需要 2030年までにピーク(2023年10月25日の記事より)

 

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 地球温暖化が深刻な状態になりつつあることは、高校生の皆さんも実感していることでしょう。2015年にフランス・パリで行われたCOP21(*1)では、産業革命以降の地球の平均気温の上昇を2℃以内、できれば1.5℃以内にすることが「パリ協定」として合意されました。しかし、それだけでは不十分であるとの研究結果が示され、2021年COP26「グラスゴー気候合意」では、1.5℃以内をめざすべきであるという意見が出されました。

 

 世界のエネルギーについて調査研究しているIEA(国際エネルギー機関)は、2023年に「ネットゼロロードマップ」を発表し、気温上昇を1.5℃以内に抑えるためには、2030年までに再生可能エネルギー(以下、再エネ)比率を3倍に高める必要があると報告しました。また、SDGsでは、7番「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」のターゲット7.2でも、再エネの比率を大幅に高めることが目標となっています。

 

 再エネは、発電時に化石燃料を使用しないエネルギーのことを指し、自然エネルギーとバイオマスなどから構成されます。自然エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱などから構成されています。地球温暖化を抑制するためには化石燃料による温暖化ガス排出量を減少させ、再エネによる発電を加速しなければなりません。太陽光発電は、住宅や店舗、工場の屋根に太陽光パネルが設置されているのを見ることもあると思います。風力発電については、陸上に風車を設置するだけなく、海に風車を設置する洋上風力発電プロジェクトが国内外で大規模に進められています。水力発電や地熱発電は、電力における発電シェアが小さいのですが、これからの技術開発や普及が期待されます。

 

 発電と同様に多くの温暖化ガスを排出しているその他の産業も化石燃料からの脱却を進めなければなりません。自動車ではガソリン車から電気自動車へのシフトが世界的に進んでいます。それは、自家用車だけでなく輸送用トラックやバスなどにも拡がっています。世界の物流を支える鉄道や船舶でも電動化が進みつつあります。また、製鉄業では火力から電力への転換が進められていますし、そのほかにも住宅産業や電力を大量消費する情報産業なども再エネ使用が進められてきつつあります。

 

 しかし、再エネはこれまでの石炭火力発電に比べて、発電時のコストがかなり高いことがネックとなっていますし、私たちの生活様式の転換が迫られることから、普及に時間がかかってしまいます。しかし、欧州諸国などでは再エネ転換に対して野心的な目標を設定してドラスティックに転換を進めています。わが国では、資源エネルギー庁が2021年に発表した第6次エネルギー基本計画で、再エネの主力電源化をめざし2030年に発電におけるシェアを現在の約20%から36~38%へと高めるように目標を大幅に修正しました。

 

 1.5℃目標を達成するために、GX(グリーントランスフォーメーション)(*2)の推進も含めて再エネ化を加速させていかなければなりません。

 

*1…Conference of the Parties、日本では「国連気候変動枠組条約締約国会議」と言われ、1995年から毎年開催されている。COPはほかにも「生物多様性に関する国際条約」などもある。

*2…再エネ中心に経済や社会のシステムを変革しようとする取り組みのこと。