目標7と関連づけて考えよう!

● 世界の7億人 電気利用できず(2022年7月5日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● 世界の7億人 電気利用できず

 

 世界銀行や国際エネルギー機関(IEA)、国連などは、世界で電気なしの生活を送る人が2020年時点で全人口の1割近い7億3,300万人に上ったとの試算をまとめ、エネルギー関連報告書で明らかにした。報告書によると、電気を使えない人はサハラ砂漠以南のアフリカだけで5億6,800万人。ほかはインド、パキスタンなどの南アジア、フィリピンやインドネシアなどの東南アジアで多くを占めた。24億人が健康や環境に有害な燃料を煮炊きに使っていることも指摘された。世界で電気を利用できる人の割合を見ると、20年は91%で、10年の83%から大きく改善されている。ただ、18年以降は伸びが鈍化しており、今後はコロナ禍による所得の減少も重なってさらに進展が難しくなると予想される。ロシアのウクライナ侵攻を背景に石油やガス価格がいっそう高騰したことが、さらなる後退につながる可能性がある。世銀は途上国への戦略的な支援策を求めている。

 

(第一小論net〈ニュースダイジェスト〉2022年7月5日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 国際エネルギー機関(IEA)などの国際機関が共同してSDGs7番「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の進捗を毎年調査し、報告書を公表している。2022年6月に発表された報告書によると、いまだに電気が使えない人が、サハラ砂漠以南のアフリカだけで5億6,800万人もいるとされている。数十年の間に世界中で無電化地域が急速に縮小しつつあったが、この十年はその伸びが鈍化傾向にある。また、世界で24億人が有害な燃料を煮炊きに使っており、健康や環境への影響が危惧されていると指摘している。

 

 そのほかにもこの報告書には、以下のような指摘もある。最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率は、2019年に17.7%に達しているものの、2010年の16.1%から微増にとどまっている。一方で、再生可能エネルギーの発電量は総発電量の約26%を占めており、2030年には60%を超える予測となっている。

 

 ゴール7番は「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」とされており、無電化人口を減らすこと、再生可能エネルギーの普及などがゴールとして設定されている。しかし、世界各国で再生可能エネルギー利用の拡大が試みられているものの、世界的なエネルギー価格の高騰を受け、温室効果ガス排出の多い化石燃料による発電を増加せざるを得ない現状もある。

 

 すべての人々が安心して電気を利用することができ、かつ 地球温暖化を抑止するためには、再生可能エネルギーを拡大していくだけでなく、脱炭素化に向けて水素発電やアンモニア発電などの未来の発電方法の技術開発が早急に求められる。

 

 


 

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 読者の皆さんは電気がない生活を想像できますか?スマートフォンやパソコンの充電、机の電気スタンド、もちろん、冷蔵庫、テレビ、エアコン等々、電気がなくなる生活は想像できないのではないでしょうか。

 

 国連や世界銀行、国際エネルギー機関(IEA)などの国際機関が、世界のエネルギーに関する報告書を発表しています。今回発表された報告書によると、世界では電気のない生活を送っている人が5億6,800万人もいるということがわかりました。もちろん、この数値は以前よりは改善しているものの、改善率が緩くなっていることが指摘されています。また、世界で24億人が有害な燃料を煮炊きに使っており、環境や健康への影響が危惧されていると指摘しています。

 

 この報告書では、もうひとつ重要な指摘がなされています。それは、再生可能エネルギーです。再生可能エネルギーとは、太陽光や風力などの自然エネルギーにバイオマス発電などを加えた発電方法で、二酸化炭素などの温暖化ガスの排出が、石炭や石油などの化石燃料を燃やす火力発電に比べて、かなり低く抑えられます。そのため、地球温暖化対策に有効であるとされています。現在、私たちが使う電力のうち再生可能エネルギーの比率は17.7%となっており、2010年の16.1%からわずかしか伸びていません。しかしながら、世界各国は再生可能エネルギーへの投資を拡大していて、カナダやスウェーデン、デンマークなどは発電量のうち約7割が再生可能エネルギーとなっています。わが国でも、現在2割程度の再生可能エネルギーによる発電を、2030年には4割弱まで拡大する計画が立てられています。

 

 しかしながら、現在、世界的にエネルギー価格が高騰しています。ロシアのウクライナ侵攻により、ロシアからの天然ガス供給量が少なくなったことで、ヨーロッパ各国が大きな影響を受けました。その余波が世界各地に拡大しているのです。わが国では、電気料金の上限価格が決められているものの、大手電力会社10社すべてがその上限価格に達しました(2022年8月時点)。今後もさらに上昇することが予想されています。

 

 電気は世界中のすべての人々にとって必要不可欠です。しかし、温室効果ガスを多く排出する化石燃料を使った発電ではなく、環境にやさしい再生可能エネルギーで電気をつくるようにしなければならないでしょう。その急速な技術開発や普及が求められているのです。

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.電気の使用をより効率的にするためにはどうすればよいだろうか?

* こまめに電気を消す、使っていない電子機器はプラグを抜く、エアコンの設定温度を上げるなど、家庭においてできることはもちろんだが、産業界、特に多くの電気を消費している製造業においてどのように効率化できるかについて、先進事例を参考にしながらその方法や課題について考えさせたい。

 

 

Q.再生可能エネルギーを拡大する際の課題にはどんなことが考えられるだろうか?

* 再生可能エネルギーの主なものとして、太陽光、風力、地熱、水力が挙げられる。それぞれにメリット・デメリットが存在する。発電量、設置・運用コスト、安定性など、いくつかの側面から検討しつつ、今後わが国が再生可能エネルギー比率を拡大するためには、どのような取り組みが求められるか考えさせたい。

 

 

Q.エネルギー価格の高騰と世界的な物価上昇の関係はどうなっているのだろうか?

* ロシアとウクライナという局地的な紛争の影響が全世界に及んでいる。特に、エネルギー価格の高騰は全産業に影響するがそれはなぜだろうか。また、このようにグローバル化した社会において、危機を乗り越えるために必要な対策にはどのようなものがあるのかについて、政治、経済、環境などさまざまな側面から考えさせたい。

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。