目標12と関連づけて考えよう!

● 使い捨てプラ 削減義務化(2022年3月29日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● 使い捨てプラ 削減義務化

 

 コンビニなどで配られるフォークなどの使い捨てプラスチック製品について、提供する企業に削減を求める「プラスチック資源循環促進法」が施行される。削減対象となるプラ製品はフォークやスプーン、歯ブラシなど12品目。コンビニやスーパーなど小売業や飲食店、宿泊業などが削減目標の設定や提供方法の見直しを求められる。具体的には「有料化」「ポイント還元」「消費者への意思確認」「軽量化や原材料の工夫」「繰り返し利用可能な製品を提供」などから事業者が選ぶ。環境省によると、レジ袋のように有料化を義務づけるものではないため、軽量化や素材変更で削減をめざす業者が多いという。ただ、削減率や目標年度は任意であり、対策結果の国への報告義務もないため、その実効性の担保も課題となる。

 

(第一小論net〈ニュースダイジェスト〉2022年3月29日の記事より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 今年4月1日「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(「プラスチック資源循環法」)が施行された。無料で配られる使い捨てのスプーンや歯ブラシなど12品目が対象となり、企業は製品を製造する際に環境に配慮した設計を行うことや、使い捨ての削減、リサイクルの促進などが求められる。私たち消費者にもさまざまな行動変容が求められる。

 

 プラスチックの生産量は世界的に急拡大している。2015年は3億8,100万トンと1966年の約20倍になっており、2050年には14億トンを超えると予想されている。また、一般的なプラスチックは石油を原料としているため、生産や焼却の過程で多くの温室効果ガスを排出する。ある調査によると、1年間にプラスチックの生産・焼却により生じた温室効果ガスは石炭火力発電所189か所分の排出量に相当するという。(*1)

 

 また、プラスチックごみが海洋に流出する「海洋プラスチック」問題は深刻である。年間800万トンが流出していると推計されており、プラスチック片が波などによって微細化した「マイクロプラスチック」は、生物の生命を脅かすだけでなく、私たちの食生活や健康へ被害を及ぼすことが危ぶまれている。

 

 SDGs12番「つくる責任つかう責任」の中ではリサイクルの促進が記されている。また、プラスチックの削減やリサイクルはSDGs13番「気候変動に具体的な対策を」、SDGs14番「海の豊かさを守ろう」、SDGs15番「陸の豊かさを守ろう」にも貢献するだろう。

 

*1…Global Ocean Plastic Waste報告書(2021)
https://nap.nationalacademies.org/resource/other/dels/plastics-in-the-ocean/

 

 


 

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 ビニール袋やペットボトルをはじめとして身の回りのさまざまな物がプラスチックでできていて、この「安価」で「加工しやすい」プラスチック製品は私たちの生活には欠かせないものになっています。今後もその用途と生産は拡大することが予想されています。しかし、プラスチックは石油から作られているため、製造、焼却にあたって多くの温室効果ガスを輩出します。私たちの生活が便利になる一方で、地球温暖化を進めてしまうのです。

 

 また、海のプラスチックごみも深刻な問題です。年間800万トンのプラスチックごみが海に流出していると言われています。クジラなどがビニール袋を餌と間違って飲み込んで死んでしまったり、ストローが鼻に刺さっているウミガメが見つかったりするなど、人間が作り出したプラスチックが生き物の生命を脅かしています。加えて、マイクロプラスチックの問題も深刻です。プラスチックごみが波の浸食を受けて小さな破片や粒子になっていきます。一般的に直径5㎜以下のものを「マイクロプラスチック」と言います。マイクロプラスチックが魚介類の体内にとどまり、それを人間が食べることで、私たちの体内にもかなりの量のプラスチックが蓄積しているという研究もあります。そのことが人の健康や胎児へ悪影響を与えることが懸念されています。

 

 今年4月から「プラスチック資源循環法」が施行されて、製造者のみならず行政や私たち消費者にもプラスチックの削減に向けた活動が求められるようになりました。ストローやフォークがプラスチック製から木製に変わったといった変化を皆さんも体験していることと思います。

 

 SDGs12番「つくる責任つかう責任」の12.5には廃棄物を低減しリサイクルを促進することが掲げられています。リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の3Rを推進していく必要があるのです。プラスチックはその製造過程で多くの温室効果ガスを排出することから、3Rを促進することでSDGs13番「気候変動に具体的な対策を」に貢献します。加えて、SDGs14番「海の豊かさを守ろう」では海洋ごみの削減が求められていますし、プラスチックが自然分解するまでは数百年を要することから、SDGs15番「陸の豊かさも守ろう」にも貢献するでしょう。

 

 人間は生活の便利さを追求した結果、私たちの住む地球に大きく負荷をかけてしまっています。また、他の生物の生命を脅かしていることも決して忘れてはなりません。地球環境に優しい生活のあり方、産業のあり方を考え実践することが地球を持続可能にすることにつながってくるのです。

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.プラスチックに代わる製品にはどのようなものがあるだろうか?

* コンビニエンスストアでもらうフォークやスプーンが木製に変わっていたり、カフェで提供されるストローが竹製や金属製に変更されたりしている。また、石灰石を原料とした一見ビニールのような袋が製造されるなど新たな原料の開発も進んでいる。環境負荷の小さい製品へ変更する際のメリット、デメリット双方について考えさせたい。

 

Q.3Rを促進するための取り組みにはどのようなものがあるだろうか?

* さまざまな産業や製品において3Rが推進されている。例えば、ファッションでは古着屋(リユース)や、着終わった衣服を回収し、ポリエステルなどの繊維を再生産して製造する(リサイクル)などが産業として成立している。また、飲料では回収したペットボトルからペットボトルを再生するだけでなく、容器の紙製パックやアルミ缶などへの変更も行われている。そのほかのさまざまな製品の3Rの現状を確認させたい。

 

Q.サーキュラーエコノミーとは何か?

* 経済活動において、資源消費量や廃棄物を最小化していく経済活動のあり方を言う。EUでは、2015年にサーキュラーエコノミーパッケージを発表し先駆的に取り組んでいる。欧米の事例や取り組みを参考にしながら、わが国での今後の促進への課題について考えさせたい。

 

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。