SDGsの達成度について考えよう!

●SDGs達成度 日本19位(2022年6月3日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● SDGs達成度 日本19位

 

 国連と連携する国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」が、各国のSDGs(持続可能な開発目標)の達成状況をまとめた報告書を発表した。日本は昨年の18位から19位に順位を下げた。データのある163か国を比べた国別ランキングでは、フィンランドが2年連続で1位。上位18位までは欧州勢が占めた。日本は2018、19年が15位、20年が17位で、年を追って順位を下げている。目標ごとの達成状況は4段階で評価され、日本は「ジェンダー平等」「つくる責任、つかう責任」「気候変動対策」「海の環境保全」「陸の環境保全」「パートナーシップ推進」の6つが最低評価だった。新たに最低評価になった「つくる責任、つかう責任」では、1人当たりの電気電子機器廃棄物の多さやプラスチックごみの輸出量の多さが響いた。

 

(第一小論net〈ニュースダイジェスト〉2022年6月3日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」は2016年から各国のSDGsの達成状況のランキング「Sustainable Development Report」を発表している(*1)。

 

 2021年のランキングでは、わが国は調査した163か国中19位となり、2017年11位、2018年・19年の15位、20年の17位とランクを下げる傾向にある。世界的に見ると、1位から18位までは欧州勢が占めており、特に北欧諸国が常に上位に位置づけられている。アメリカは41位、中国は56位となっている。

 

 評価は、SDGsの各ゴールに複数の指標が設定され、それぞれ「達成済み」「課題が残る」「重要な課題がある」「深刻な課題がある」の4段階で評価されている。

 

 わが国は、SDGs4番、9番、16番については、 「達成済み」と評価された一方で、SDGs5番、12番、13番、14番、15番、17番の6つのゴールについては「深刻な課題がある」と評価された。2020年度と比べて12番が最も低い段階に転落した。特に、電子機器の廃棄や、廃プラスチックの輸出が厳しい評価となっている。また、5番、12番、13番、17番は改善傾向が見られるものの、13番、14番は停滞していると評価されている(*2)。

 

 国内でのSDGsの認知率が76.3%と急速に高まりつつあるが(*3)、内容の理解や具体的なアクションについてはまだまだ課題があると言えるだろう。

 

*1…https://dashboards.sdgindex.org/

 

*2…https://dashboards.sdgindex.org/profiles/japan

 

*3…朝日新聞社「第8回SDGs認知度調査」

 

 


 

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 SDGsの国別の達成度ランキングが存在することを知っているでしょうか。国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」は2016年から各国のSDGsの達成状況のランキング「Sustainable Development Report」を発表しています(*1)。

 

 2021年のランキングでは、調査した163か国中、わが国は19位となっています。1位フィンランド、2位デンマーク、3位スウェーデンなど、上位はヨーロッパ諸国が占めています。その中でわが国はアジアで最高位となっています。アメリカは41位、中国56位、インドは121位となりました。わが国は2017年に11位となったものの、それ以降はランキングが下がる傾向となっています。

 

 SDGs番号別に見てみると、SDGs5番(ジェンダー平等を実現しよう)、12番(つくる責任つかう責任)、13番(気候変動に具体的な対策を)、14番(海の豊かさを守ろう)、15番(陸の豊かさも守ろう)、17番(パートナーシップで目標を達成しよう)の6つのゴールについては「深刻な課題がある」と最も厳しい評価となりました(*2)。

 

 一方で、わが国が「達成済み」と高評価になったゴールもあります。SDGs4番(質の高い教育をみんなに)、9番(産業と技術革新の基盤をつくろう)、16番(平和と公正をすべての人に)です。SDGsを考える際には課題に目が行きがちですが、これらのゴールについては、世界にも誇れる状況だと言えるでしょう。

 

 ここ1、2年でわが国におけるSDGsの認知度は急速に高まっています。しかし、具体的な行動を起こしている人はまだ少ないという調査結果もあります。2019年9月に開催された国連サミットで、A.グテーレス事務総長は「Decade of Action」を宣言しました。SDGsのゴール年である2030年までに残された時間は長くはありません。取り組みを加速させることが必要です。それには、政府や企業の取り組みだけでなく、わたしたち一人ひとりの行動も非常に重要なのです。この地球上の環境や社会状況が後戻りできなくなる前に、問題の解決に向けて大きなムーブメントを作っていかなければならないでしょう。

 

*1…https://dashboards.sdgindex.org/

 

*2…https://dashboards.sdgindex.org/profiles/japan

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.ヨーロッパ諸国のSDGsランキングが上位なのはなぜだろうか?

* ヨーロッパ諸国では環境問題への意識がもともと高かったと言われている。酸性雨の問題が1980年代から問題視され政府が対応を求められてきた。また、北欧諸国では手厚い福祉制度により人々の豊かな暮らしを社会全体でサポートする制度が確立している。政治、法制度、文化、歴史、そして人々の生活様式など多方面から検討してみたい。

 

 

Q.わが国の達成状況が低いゴールを改善するにはどうすればよいだろうか?

* SDGsランキングの国別の状況を見ると、17のゴールごとにその評価指標と評価がなされている。わが国のページの各評価指標の達成状況を確認しながら、改善に向けて何ができるかを自由に考えてもらいたい。また、達成度が高い、ヨーロッパ諸国の取り組み等を参考にすることもいいアイデアが思いつくきっかけとなるはずである。

 

 

Q.一人ひとりがSDGsを理解し行動できるようにするためにはどのようにすればよいだろうか?

* わが国ではSDGsの認知度は一気に上昇してきたが、一方で、行動化にはあまり至っていない。一人ひとりの行動を抑制しているものは何なのかや、意識した行動ができている人はなぜできているのかを深く考えさせたい。また、意識せずとも行動している人も多いと思われるので、このような行動をどう広げていくかについて幅広く考えさせたい。

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。