【NEWSとSDGs】目標15と関連づけて考えよう!

● 爬虫類21% 絶滅の危機(2022年5月5日の記事より)

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 「絶滅危惧種」という言葉を聞いたことがあると思います。絶滅のおそれのある野生動植物の種のリストを「レッドリスト」と言いますが、そのリストでは、絶滅のおそれの強弱によって細かくランク分けされています。2021年の調査では、調査対象となった142,577種のうち、絶滅の危機が特に深刻なカテゴリーでは40,084種と28%にも上り、近年著しく増加しています。

 

 それでは、どうしてこのように動植物にとって厳しい地球環境になったのでしょうか。それには、大きく3つの原因が考えられます。まずは、開発です。森林を伐採し都市や農地に転化している地域が少なくありません。開発途上国を中心に、激増する人口を受け入れる宅地やその食料や木材を賄うために開発の必要性が高まっているのです。次に気候変動です。陸上では、熱波による山火事や洪水が頻発しているため、動植物たちの生息域が奪われています。海でもそれは例外ではありません。例えば、地球の平均気温が産業革命時と比較して2.0℃上昇すると、サンゴは99%死滅するとの研究結果もあります。もう一つの原因は乱獲や密猟です。人間の食用にするために特定の魚種がたくさん漁獲されます。また、象牙など商品価値が高い動物の密猟が後を絶ちません。

 

 SDGsゴール15「陸の豊かさも守ろう」では、ターゲット15.1に森林などの生態系の保全、15.4に生物多様性を含む山地生態系の保全、15.5に絶滅危惧種の保護、15.7に動植物種の密猟及び違法取引の撲滅など、生物種を保護していく取り組みが数多く盛り込まれています。

 

 また、2021年に開催された、国連生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)では「少なくとも2030年までに生物多様性の損失を逆転させ回復させる」とする「昆明宣言」が採択されました。

 

 しかしながら、現状は非常に厳しいことも事実です。森林面積は減少が続いており、1990~2020年に世界で減少した森林面積は年平均約592万haで、これは1時間に東京ドーム約144個分の森林面積が減少している計算になります(*1)。生物の住処が奪われているだけでなく、気候変動をも助長しているのです。

 

 2021年にイギリスで行われた気候変動条約国締結会議(COP26)では、森林破壊を2030年までに停止することに100か国以上が署名をしました。気候変動を緩和するだけでなく、動植物の生息域を守っていく非常に重要な合意です。

 

 私たち人間が他の生物の生息域を奪っていいのでしょうか。私たち人間はこの地球上に住む生物の一つの種でしかありません。多くの生物たちと共存でき、持続可能な環境を保全していく責任があるのです。

 

*1…森林・林業学習館
https://www.shinrin-ringyou.com/forest_world/menseki_gensyou.php