【NEWSとSDGs】目標15と関連づけて考えよう!

● 奄美大島・沖縄 世界遺産に(2021年7月27日の記事より)

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 オランウータン、トラ、ホッキョクグマ、ジャイアントパンダ、アオウミガメ…。皆さんもよく知っているこれらの動物は「絶滅危惧種」です。IUCN(国際自然保護連合)は絶滅の危機にある野生生物を「レッドリスト」としてその保護を訴えています。このリストによると、調査対象となった128,918種の野生生物のうち、35,765種が絶滅危惧種となっています(*1)。その原因はさまざまです。開発のためにそれらの動物が住む森林を伐採すること、商品としての動物に対する密漁や乱獲、農薬や水質汚染などの環境汚染、外来種の侵入による生態系の崩壊、森林火災や砂漠化などの原因とされる気候変動などがその主なものと言われています。いずれも私たち人間が原因を作り出していることは疑いようもありません。

 

 1993年に発効した生物多様性条約では、国際社会が一体となって野生生物の保護を推進することが約束されています。2010年に愛知県名古屋市で開かれた生物多様性条約締約国会議では「愛知目標」が定められ、生物多様性を守っていくための方策が各国の政治に組み込まれていくことが確認されました。SDGs15番「陸の豊かさも守ろう」では、生物多様性の損失を阻止していくことがはっきりと目標として設定されています。ターゲット15.1は陸上や水域の生態系を保全すること、15.2や15.3は森林の適正な管理、15.7は密漁や違法取引の防止、15.8は外来種の侵入の防止など、さまざまなターゲットが盛り込まれています。また、SDGs14番「海の豊かさを守ろう」にも水産資源の保護が示されています。

 

 今回、世界自然遺産に登録された奄美・沖縄地域は、世界的にも珍しい固有の生態系が存在し、生物多様性が残されている貴重な地域です。世界的な自然保護団体であるWWFジャパンは、この地域の保全に向けた課題として以下の4つを指摘しています。①登録地周辺や水域における開発や利用の増加、②希少野生生物の密猟・持ち出し・違法取引、③外来種の侵入による固有種への影響、④島内外での自然の価値の共有、です。現在でも希少野生動植物の違法採集や持ち出しが問題視されていますが、世界自然遺産に登録されたことで、人々の注目が集まり、さらに環境や生態系が破壊されたりすることには注意しなければなりません。

 

 人間はこの地球上に暮らす多くの生物のほんの一つの種でしかありませんが、その人間がその他多くの生物の生存を脅かしていると言えます。私たち人間がこれまで行ってきた開発や発展のあり方を見直し、その他多くの生物と共生する道を模索していくことは、人間としての義務とも言えるでしょう。

 

 *1…WWFジャパン
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3559.html