目標15と関連づけて考えよう!

● 爬虫類21% 絶滅の危機(2022年5月5日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● 爬虫類21% 絶滅の危機

 

 米国の環境団体ネーチャー・サーブなどが、ヘビやトカゲなど世界に生息する爬虫類の21%の種に絶滅のおそれがあるとの評価結果をまとめた。爬虫類は、これまでほかの生き物と比べ評価が進んでいなかったが、カメやワニは半数程度が絶滅の危機に直面していると判明し、緊急の対策が必要だと警告した。約千人の専門家から爬虫類1万種余りの情報を集めて評価したところ、データ不足で判定できない種などを除く8,656種のうち、1,829種(21%)が絶滅危惧種に該当した。絶滅リスクを高める要因として、農業や開発、森林伐採による生息地の破壊のほか、外来種や捕獲の影響を挙げた。気候変動の影響も脅威になりつつあるという。絶滅が危ぶまれる種は、東南アジア、西アフリカ、マダガスカル北部などに集中しており、生息域の区分では、乾燥地域より森林に生息する種のほうが大きなリスクにさらされていた。

 

(第一小論net〈ニュースダイジェスト〉2022年5月5日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 IUCN(国際自然保護連合)が2021年に発表した、絶滅の危機にある世界の野生生物のリスト「レッドリスト」では、調査の対象となった142,577種のうち、特に絶滅の危機に瀕している種は40,084種と28%にも上った。

 

 その原因として、人口増加に伴う都市化や、農地転用や木材の伐採などによる森林開発が世界各地で進行していることがある。また、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告書によると、今後の地球の平均気温の上昇が生物の生息域を狭めながらさらなる気温上昇に寄与するおそれが指摘されている。加えて、乱獲による特定魚種の減少が漁獲高の減少に大きな影響を与えている。さらには、例えば象牙のように、価値の高い商品を作るために多くの動物が密猟されている現実もある。

 

 SDGsゴール15「陸の豊かさも守ろう」では、ターゲット15.4に生物多様性を含む山地生態系の保全、15.5に絶滅危惧種の保護、15.7に動植物種の密猟及び違法取引の撲滅など、生物種を保護していく取り組みが盛り込まれている。

 

 また、生物多様性条約(CBD)締約国会議(COP)はおおむね2年に1回開催されており、2021年に開催されたCOP15では「少なくとも2030年までに生物多様性の損失を逆転させ回復させる」とする「昆明宣言」が採択された。

 

 人間の手が動物たちの住処を奪っているだけでなく、その生存すら脅かしていることを忘れてはならない。

 

 


 

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 「絶滅危惧種」という言葉を聞いたことがあると思います。絶滅のおそれのある野生動植物の種のリストを「レッドリスト」と言いますが、そのリストでは、絶滅のおそれの強弱によって細かくランク分けされています。2021年の調査では、調査対象となった142,577種のうち、絶滅の危機が特に深刻なカテゴリーでは40,084種と28%にも上り、近年著しく増加しています。

 

 それでは、どうしてこのように動植物にとって厳しい地球環境になったのでしょうか。それには、大きく3つの原因が考えられます。まずは、開発です。森林を伐採し都市や農地に転化している地域が少なくありません。開発途上国を中心に、激増する人口を受け入れる宅地やその食料や木材を賄うために開発の必要性が高まっているのです。次に気候変動です。陸上では、熱波による山火事や洪水が頻発しているため、動植物たちの生息域が奪われています。海でもそれは例外ではありません。例えば、地球の平均気温が産業革命時と比較して2.0℃上昇すると、サンゴは99%死滅するとの研究結果もあります。もう一つの原因は乱獲や密猟です。人間の食用にするために特定の魚種がたくさん漁獲されます。また、象牙など商品価値が高い動物の密猟が後を絶ちません。

 

 SDGsゴール15「陸の豊かさも守ろう」では、ターゲット15.1に森林などの生態系の保全、15.4に生物多様性を含む山地生態系の保全、15.5に絶滅危惧種の保護、15.7に動植物種の密猟及び違法取引の撲滅など、生物種を保護していく取り組みが数多く盛り込まれています。

 

 また、2021年に開催された、国連生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)では「少なくとも2030年までに生物多様性の損失を逆転させ回復させる」とする「昆明宣言」が採択されました。

 

 しかしながら、現状は非常に厳しいことも事実です。森林面積は減少が続いており、1990~2020年に世界で減少した森林面積は年平均約592万haで、これは1時間に東京ドーム約144個分の森林面積が減少している計算になります(*1)。生物の住処が奪われているだけでなく、気候変動をも助長しているのです。

 

 2021年にイギリスで行われた気候変動条約国締結会議(COP26)では、森林破壊を2030年までに停止することに100か国以上が署名をしました。気候変動を緩和するだけでなく、動植物の生息域を守っていく非常に重要な合意です。

 

 私たち人間が他の生物の生息域を奪っていいのでしょうか。私たち人間はこの地球上に住む生物の一つの種でしかありません。多くの生物たちと共存でき、持続可能な環境を保全していく責任があるのです。

 

*1…森林・林業学習館
https://www.shinrin-ringyou.com/forest_world/menseki_gensyou.php

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.森林面積の減少を食い止める対策はどのようなものが考えられるだろうか?

* 伐採による木材の商品化、農地や宅地への転用、森林火災や干ばつによる減少などがその原因として考えられる。先進国内の森林と開発途上国内の森林とで現状や対策が異なることを考えさせたい。また、熱帯雨林開発は、先進国が開発途上国の資源を搾取するという大きな構造が隠されていることを認識させたうえで解決策を考えさせたい。

 

 

Q.絶滅危惧種を救う方法にはどんな方策があるだろうか?

* 開発や気候変動が多くの生物の生息域を狭めている。保護して人工的に種を回復させるといった活動にとどまらず、商業的な背景が強い開発に対して、適正なビジネスのあり方の追求、また政府及び国際間の規制など、多角的なアプローチが必要なことに気づかせたい。

 

 

Q.密猟を防ぐにはどうすればよいか?

* ゾウやトラ、サイが主として密漁の対象になってきた。そのほとんどは商業目的であり、象牙、毛皮などが商品価値が高い。監視活動にとどまらず、違法な取引を厳重に取り締まることが求められている。「ワシントン条約」の内容を確認しながら、何ができるのかを考えさせたい。

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。