目標14と関連づけて考えよう!

● 気候変動の影響 魚介類・海草に変化(2022年11月24日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● 気候変動の影響 魚介類・海草に変化

 

 日本の海や河川の水温上昇といった気候変動により、漁獲量や養殖期間に影響があると都道府県が見ている水産物が61品目に上ることが、共同通信の全国調査でわかった。魚介類や海藻の幅広い品目で、漁獲量の減少を中心としたマイナスの影響が大きい。一方、暖水系のブリやサワラが移動するなど「これまでにない魚が取れる」とプラス面を指摘した自治体も多かった。品目別で、最も多く影響があるとの回答が寄せられたのはノリ類で、マイナスの影響として、水温上昇による養殖開始時期の遅れや、南方系の魚による食害などが指摘された。高水温でも耐える品種の開発が進められている。漁業に関しては、資源減少や漁師の高齢化、漁船の燃料高騰などが苦境の要因と指摘されているが、地球温暖化の影響も深刻であるという結果となった。

 

(ニュースダイジェスト 2022年11月24日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 気候変動は、地上の環境にとどまらず海にも大きな影響を与えている。地表の約70%を占める海洋は二酸化炭素を吸収する役割を持っており、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を和らげ、地球温暖化を抑制する効果がある。しかし、人間生活によって排出される二酸化炭素などの温暖化ガスが増加し、海洋が吸収する二酸化炭素の量が増えるなどの影響もあり、海面の温度が上昇している。特に日本近海では、ここ100年で海面水温が1℃以上上昇しているという調査結果があり、世界平均の2倍となっている(*1)。IPCCの報告書では、地球の平均気温が2℃上昇すると、それに伴う海面水温の上昇により、サンゴが99%死滅するという研究結果もある。

 

 漁業に関しては、捕獲できる魚種が変化したり、捕獲できる海域が変化したりしているだけでなく、赤潮や塩害など、魚介類の生育に悪影響を与える環境変化も発生している。そのうえ、世界的な魚介類の乱獲などの問題も絡んで、将来の水産資源の枯渇が危ぶまれている。

 

 気候変動問題は、私たち人間や地上生物への影響を第一に考えがちだが、海洋生物にとっても深刻な問題である。さらに、そのことが私たち人間に与える影響は小さくないことを改めて認識しなければならないだろう。

 

 このように、SDGs14番「海の豊かさを守ろう」を推進するためには、SDGs13番「気候変動に具体的な対策を」も同時に進めていかなければならない。

 

 

*1…気象庁 海面水温の上昇について
https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/shindan/a_1/japan_warm/japan_warm.html

 


 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 天然の魚介類が食べられなくなる日が来るかもしれない、と聞くと残念に感じる人も少なくないでしょう。魚や甲殻類、海草などの海洋資源が枯渇し始めているのです。

 

 その大きな原因が気候変動です。気候変動は、地上気温が上昇して地球が温暖化していることを言い、その対策としては、二酸化炭素などの温暖化ガスの排出を減らすことや、二酸化炭素を吸収してくれる森林を守ることがまず頭に思い浮かびます。しかし、二酸化炭素を吸収してくれるのは森林だけではありません。海も人間が排出する二酸化炭素を吸収する機能を持っていて、地球温暖化の抑制に重要な役割を担っています。

 

 その海水の温度が地球温暖化の影響により上昇しているのです。海水温度が上昇することで、海が二酸化炭素を吸収しにくくなり大気中にとどまってしまうため、温暖化を抑える効果が薄れてきています。

 

 また、海水温度の上昇は海の生態系に大きな影響を及ぼします。これまで獲れていた魚が獲れなくなったり、逆に今まで獲れなかった魚が獲れたりと、魚の生育海域が変化してきているのです。また、赤潮や塩害など、魚介類の生育に悪影響を与える環境変化も発生しやすくなります。国際機関の調査では、将来、地球の平均気温が2℃上昇すると、サンゴが99%死滅するという研究結果もあります。

 

 もうひとつ、魚や海草などの海の資源を守っていくためには、魚介類の乱獲をやめなければなりません。水産庁によると、過剰に漁獲されている状態の海洋資源の割合は全体の1/3ほどまでに増加しています(*1)。漁獲競争の中で成長前の幼い魚を獲る傾向があること、設備を大きくしてコストを下げる効果をねらっていること、特定の魚や漁場に集中すること、などによって必要以上の海の生きものを捕獲していると言われています。

 

 SDGs14番「海の豊かさを守ろう」では海洋資源を守っていくことがターゲットとして設定されていますが、それには、SDGs13番「気候変動に具体的な対策を」に取り組んでいくことが非常に重要なのです。また、そのほかにも、プラスチックなどの海洋ごみの問題、船の燃料高騰、漁師の高齢化、担い手不足など、海の豊かさを守るためにはさまざまな課題を解決していかなれければならないのです。

 

 海は地球の表面の約70%の面積を占めています。気候変動をやわらげたり、豊かな海洋資源を提供してくれたりと、私たちの生活を守っているだけでなく、地球の持続可能性にとってもとても重要なのです。

 

 

*1…水産庁 世界の資源状況
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r02_h/trend/1/t1_4_1.html

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.漁獲できる海産物の種類の変化はどのようなことに影響を及ぼすだろうか?

* 食料としての海産物は当然ながら人々の生活や文化に深く根付いている。急速な気候変動によって捕獲できる海産物が変化したとしても、消費者の嗜好が急に変化することは難しいため、遠方まで漁に出かける必要性も出てくる。また、商品の原材料が変化したり、商品の価格を押し上げたりする可能性もある。このように、私たちの消費行動や嗜好だけでなく、水産業・加工業にも大きな影響が及ぶだろう。

 

Q.乱獲を防止するにはどうすればよいだろうか?

* 漁獲量や魚種、漁法などに規制を設けて監視することにとどまらず、海産物を加工する際の無駄を極力なくすような技術開発や、無駄な漁獲をしないために、売れ行きを予測するマーケティングの精度を向上させることなどが考えられる。また、冷凍技術の向上にも期待したい。

 

Q.海洋ごみ問題を解決する手段としてどのようなことが考えられるだろうか?

* 海の生態系へ負の影響を与えるのは、海水温度の上昇だけでなく、海洋ごみの増加も深刻な問題である。プラスチックの量を減らす、生分解性の製品開発、海洋流出しない回収システムの開発など、さまざまな方向からの対策を考えさせたい。海洋は世界でつながっていることから、世界的な連携が不可欠であることも重要な点である。

 

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。