【NEWSとSDGs】目標13と関連づけて考えよう!

● 大西洋の海洋循環 止まる可能性(2023年7月26日より)

 

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 集中豪雨による洪水や森林火災で多くの人が亡くなったというニュースが今年も世界各国で報告されていることは、皆さんもニュース等で目にしていることでしょう。その原因は気候変動であるとされています。国際社会の対応として2015年のCOP21(*1)では、地球の平均気温上昇を産業革命時から2℃以内、できれば1.5℃以内に留めるという「パリ協定」が合意されました。その後、気候変動にかかわる最新のデータが示され、また世界各地で気候変動の影響と考えられる災害が多発したことで、気候変動対策を加速する必要に迫られています。2021年COP26の「グラスゴー気候合意」では、できる限り1.5℃をめざすべきだという方向性が確認されました。SDGsでも13番「気候変動に具体的な対策を」でその対策が促進されています。


 しかしながら、すでに気温は1.1~1.2℃上昇しているとの研究結果が報告されています。一刻も早く、その大きな要因である、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの排出を止めなければならないのです。


 加えて、地球の気候はさまざまな要因で変化します。それは人為的要因と自然要因とに区別されます。温室効果ガスの排出増加による地球温暖化は人為的要因とされています。一方で自然的要因としては、太陽活動が強くなったり弱くなったりすることに対する影響、地球が太陽の周りを公転する軌道がずれることによる影響、火山の噴火による粉塵(エアロゾル)の影響、そして、今回の新聞記事で指摘されている海洋大循環の影響が考えられています。


 海洋大循環とは、数千年周期で表層の海水と深層の海水が世界中でゆっくりと循環する動きのことを言います。温められた表層の海水がグリーンランド沖と南極海沖の2か所で深層に沈み込み、世界の数か所のポイントでは深層水が表層に湧き上がってきているとされています。このような循環は、温度差や塩分濃度の差から起こると言われています。陸地の気候は海水温度に影響を受けますので、海洋大循環の動きが変化すると、気候も変化するということになります。それが新聞記事にもあるように、地球温暖化の影響でこの海洋大循環が遅くなっている、もしくは停止する可能性が高くなっていることがわかってきました。つまり、二酸化炭素排出などによる人為的な地球温暖化が、海洋大循環という自然現象に影響を与えていると言えるのです。この点からも一刻も早く、温室効果ガスの排出を抑制し、地球温暖化に歯止めをかける必要があるのです。


*1…COPとは「Conference of the Parties」の略で「国連気候変動枠組条約締約国会議」。毎年開催され、世界各地の政治家、研究者等が気候変動対策について協議する場。