● ミャンマー代表選手 難民申請(2021年6月23日の記事より)
学習者用解説
「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。
第2次世界大戦の難民救済のために1950年に設立された国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、世界の難民問題に対処しています。UNHCRの調査によると、2020年末の世界の難民は8,240万人です(*1)。難民とは、紛争や迫害、人権侵害等、公共の秩序を著しく乱すことが発生して、強制的に移動を余儀なくされた人々のことで、劣悪な環境の難民キャンプでの生活を強いられ、危険を冒して国外に脱出する難民も後を絶ちません。アフリカや中東からヨーロッパに向かった難民船が難破して多くの人が亡くなるという事件を見聞きしたことがある人も多いでしょう。統計によると、シリアやベネズエラ、アフガニスタンなどで多くの難民が発生しています。
ミャンマーでは、今年2月に軍がクーデターを起こし政権を奪う事件が発生しました。以降多くの市民が反対運動を展開し国内で紛争が勃発しました。それにより、多くの国民の生活が不安定な状況に置かれています。このような状況の中で、サッカーミャンマー代表選手が試合のために来日したタイミングで軍に抗議の意思を示し、その後難民申請を行ったのです。
他方、難民を受け入れるかどうかも国際的な問題となっています。難民が発生している隣国で受け入れるケースが多いようですが、トルコやドイツなども多くの難民を受け入れています。わが国では難民申請がなされても、手続きに非常に時間がかかり、認定される割合が著しく低いことが指摘されていて、生活もままならない人が数多く存在することが問題となっています。
SDGs10番は「人や国の不平等をなくそう」です。ターゲット10.2では、その人が置かれている状況にかかわりなく、すべての人が人間らしい生活をすることが示されています。また、10.7では、安全で秩序ある人の移住や流動性を確保することが示されています。
難民問題はさまざまなSDGsにかかわっています。難民となった子どもたちが適切な教育を受ける機会が著しく限定されるということはSDGs4番「質の高い教育をみんなに」に関係します。また、多くの難民は働く場を奪われます。そうするとSDGs1番「貧困をなくそう」や8番「働きがいも経済成長も」に関係してきます。難民は適切な医療が受けられないことも多く、SDGs3番「すべての人に健康と福祉を」に関係してきます。ほかにも多くのSDGs番号と関係していることに気づかされると思います。その中でもSDGs16番「平和と公正をすべての人に」に示されている、暴力や紛争、搾取、汚職などをなくしていくことが、この問題を解決する鍵になるかもしれません。
*1…UNHCR日本
https://www.unhcr.org/jp/global_trends_2020