【NEWSとSDGs】目標10と関連づけて考えよう!

● 香港の民主活動家周庭氏「香港には戻らない」(2023年12月5日の記事より)

 

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 周庭氏は、自身が大学1年生だった2014年に「雨傘運動」という香港の民主化運動に中心的なメンバーとして参加したことで一躍その名前が知られるようになりました。独学で学んだという日本語も堪能なので、メディアでその姿を見た人も多いことでしょう。この運動は、中国政府が香港の行政長官選挙を改革し、実質的に中国に親和的な候補者しか立候補できないようにしたことに不満を感じた香港市民が雨傘を持ってデモを行い、抵抗を示したものです(*1)。

 

 SDGs10番「人や国の不平等をなくそう」には、人間の基本的権利の保障が書かれています。ターゲット10.1には所得の不平等の改善、10.2にはすべての人が社会的、経済的、政治的な権利を有すること、10.3には差別の解消、10.7には適切な移民政策や移住などが示されていて、「誰一人取り残さない」というSDGsのスローガンを直接的に表現していると言えます。

 

 ところが、いまの社会では不平等が解消されたと言うことが決してできません。アフガニスタンのタリバン政権では、女性の権利が認められる範囲が非常に狭くなっています。その他のイスラム教を主とする国家でも、宗教的な理由から同様の状況になっていると言われています。ミャンマーの軍事政権は、市民や少数民族への人権侵害を行っていると言われています。そして、いま世界を揺るがしている、ロシア‐ウクライナ紛争、イスラエル‐パレスチナ紛争、いずれも人種や民族間での偏見や差別意識がその原因の一つになっていると言われています。さらに、アメリカに端を発した「ブラック・ライヴズ・マター運動」は、警察官による黒人への人種差別的な対応をきっかけにして起こり、世界中に拡大しています。

 

 また、差別や不平等は私たちの国、社会でも存在することを忘れてはいけません。アイヌ民族問題、同和問題といった民族や出自に関する差別にとどまらず、企業内では女性の活躍が限定される環境が残っていると言わざるを得ませんし、高齢者や障がい者、外国人が社会的な差別を受けるなど、決して他人事ではないのです。

 

 人権問題に対して国連は積極的に取り組んできました。戦後すぐに採択された「国連憲章」「世界人権宣言」で人々の権利保障をその基本理念に据え、その後も世界各地で紛争などにより生じた人権問題に対して「人権理事会」を中心に取り組んできました。日本政府も人権理事会の理事国を務めたり、世界的な人道支援などを積極的に実施したりしています。

 

 この地球上から不平等がなくなり、すべての人の人権が守られる世界を作りあげていくために、自国のみならず国際社会の協力が求められています。

 

*1…2024年2月6日、香港警察は保釈条件である出頭期日までに香港に戻らなかったとして、カナダに滞在している民主活動家の周庭氏を指名手配したと発表した。