【NEWSとSDGs】目標8と関連づけて考えよう!

● ユニクロ綿シャツ 米が輸入差し止め(2021年5月20日の記事より)

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 高校生の皆さんの中には、ファッションに興味がある人も多いと思います。最近、ユニクロの製品をアメリカが輸入拒否するという事案が発生しました。これは、同社が強制的に働かされている環境で生産された綿花を使用しているという疑惑が持ち上がったからです。また、その他の世界的なアパレルメーカーがそのような状況で生産された綿花を使用しないと宣言すると、今度は中国国内でそれらのメーカーの不買運動が起こりました。

 

 なぜこのようなことが発生するのでしょうか? ビジネスにおいては利益が優先されがちなので、労働者の賃金をできるだけ安くしたいという思いが働きます。その結果、低賃金での労働、子どもを働かせる、劣悪な環境での仕事を強いるなど、人権を軽視した仕事が提供されることがあります。

 

 しかし、企業も対策に乗り出しています。特に投資家たちは、このような人権を無視した経営を行う企業を支援しないという「ESG投資」を推進するようになってきていて、企業は、働く人の人権を守らないと企業を経営し続けることが難しくなってきているのです。

 

 また、SDGsのゴール8番『働きがいも経済成長も』に、強制労働や児童労働の根絶をはじめ、働きがいのある人間らしい仕事を行うこと、同一労働同一賃金など、労働者の権利を守る必要性が書かれています。またゴール10番「不平等をなくそう」では、あらゆる不平等の撤廃が書かれていて、ゴール1番「貧困をなくそう」では、貧困状態にある人々を救うことが示されています。このように、適切な労働を提供し、誰もが正当に仕事ができるようになることはSDGs達成のためにもとても重要な要素の一つだと言えます。

 

 国連では、1948年に「世界人権宣言」が採択され、すべての人とすべての国が達成すべき基本的人権について宣言がなされました。最近では、2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」が決議され、それを受けて世界各国で人権に関する行動計画を立てることになりました。わが国では2020年に「ビジネスと人権に関する国別行動計画」が制定されました。そこには、適切な労働の提供、障害者雇用、女性活躍の推進、外国人材の雇用などさまざまな側面での労働者の人権を守ることが示されています。

 

 このように、社会全体で人々の人権を守り、さまざまな人が共生できる社会づくりをめざしていかなければならないのです。その一つとして、私たち消費者もどのような環境で生産されたものなのかを考えてから製品を購入するといった意識を持つことも重要になってくるでしょう。