【NEWSとSDGs】目標3と関連づけて考えよう!

● 結核「低蔓延」に(2022年8月31日の記事より)

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 新型コロナウイルスのパンデミックでは、学校に通うことができなかったり、さまざまな行事が中止になったり、外出の自粛が求められたりと、私たちの日常生活が大きく制限されました。人間の日常生活には人と人との接点が日常的に存在しています。そこに病原菌が何らかのルートに乗り人から人へ感染することで、爆発的に感染者が拡大し、それに伴い深刻な状態に陥ってしまう人や死亡する人が出てきます。

 

 そのような感染症は新型コロナだけではありません。例年冬になると流行するインフルエンザをはじめ、エイズ、マラリア、B型肝炎、そして結核なども人体に深刻な影響を与える感染症と言われています。

 

 SDGs3「すべての人に健康と福祉を」では、すべての人の健康と福祉の促進が目標として設定されています。妊産婦や乳幼児の死亡率を低下させること、薬物やアルコールの乱用による被害の根絶、交通事故や大気汚染での死亡者数を減らすこと、さまざまな保険サービスの充実などがめざされています。そして、結核感染者を減らすことが目標の一つとされています。結核は、肺などの臓器が結核菌に感染し、炎症を引き起こすことで死に至る可能性も高い深刻な感染症です。

 

 SDGsでは、その成果を測定するための指標として、人口10万人当たりの感染者数が設定されています。新聞記事では、日本のこの数値が9.2人となり、人口10万人当たりの結核感染者数が10人を下回ったことから、「低蔓延国」と世界保健機関(WHO)から認定されました。とは言っても2021年1年間で1,844人が死亡していて、決して楽観視してよい状態ではないでしょう。

 

 世界に目を向けると、感染への対策が十分でなく、状況が深刻な国々が少なくありません。2020年のデータを見ると、アフリカのレソト王国では、結核にかかる人が人口10万人当たり650人となっています。南アフリカやフィリピンでも約600人と多い人数です。その他、アフリカや東南アジア諸国を中心に深刻な感染症の一つとなっています。

 

 日本では、結核の対策として予防接種が促進されていますが、予防や対策が十分にとられていない国々で感染者が多くなっていると考えられます。スラム街などの不衛生な生活環境で暮らす人が多かったり、予防接種や治療に関する医療が発達していなかったり、結核に関する知識が不足していたりすることなどが原因で、結核感染者を減らすことは容易ではありません。

 

 グローバル化した社会では、感染症が拡大するスピードと規模が非常に速く大きいことを、新型コロナのパンデミックによって私たちは思い知らされました。国内での対策はもちろん、世界中に目を向けて対策を行うことの重要性を、改めて考えなければいけないでしょう。