【NEWSとSDGs】目標2と関連づけて考えよう!

● 国連 ガザで57万人が「飢餓の手前」(2024年2月29日の記事より)

 

Gaza Strip

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 SDGs2番「飢餓をゼロに」では、栄養のある食料を得られるようにすることや、農業生産性などの向上などを通じて、栄養不足や子どもの発育阻害を防ぐことなどが目標となっています。また、SDGs16番「平和と公正をすべての人に」では、紛争や暴力を地球上からなくすことをめざしています。これらの目標は密接に絡み合っていて、問題の解決を難しくしていますが、現在それらの目標の達成が危ぶまれる状態となっています。

 

 イスラエルとパレスチナの紛争が深刻な飢餓をもたらしています。国連世界食糧計画(WFP)が2024年3月18日に発表した報告書によると、パレスチナ自治区ガザの人口の約半数に当たる110万人が、食料確保がままならない状態にあり、57万6千人が飢餓の一歩手前の状態であると発表されました。また、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、ガザ地区北部では2歳未満の子どもの3人に1人が深刻な栄養失調に陥っていると指摘しています。
 

 

 食料不安を測る世界標準として「総合的食料安全保障レベル分類」が設定されています。それによると、食料が十分にある状態から飢饉に至るまでに5つの段階が設定されており、フェーズ1/食料が十分にある状態、フェーズ2/食料不安、フェーズ3/急性食料不安、フェーズ4/人道的危機、フェーズ5/飢饉となっています。ガザの110万人は「フェーズ5」であるとされています。

 

 ロシアのウクライナ侵攻も世界中で食料確保に悪影響を与えています。小麦などの穀倉地帯であるウクライナの港湾や鉄道が攻撃を受けて、それらの輸出が制限されてしまっています。そうして市場に流通する食料が減少し、価格が上昇してしまうと、貧困状態にある人々にとっては食料の確保が難しくなるのです。

 

 さらには、アフリカ東部の国ソマリア沖のアデン湾に出没する海賊が、船舶の乗組員の金品を強奪するような事件が多発しています。アデン湾は中東の原油を輸出するタンカーや貨物船が多く往来する場所ですが、このエリアを避けて航行せざるを得なくなるため、多額の追加コストが発生し、それが食料価格の上昇につながってしまっているという指摘があります。

 

 加えて、気候変動によって発生する干ばつ、山火事、洪水も飢餓につながります。アフリカのサハラ砂漠南側地域では、深刻な干ばつが続いており、農業生産がまったくできなくなる状態に陥っています。世界各地で発生している森林火災は、農地を焼きつくすことも少なくありません。2022年にパキスタンで発生した大規模な洪水は、農地にとどまらず人々の生活の場そのものを奪ってしまい、多くの難民を発生させました。

 

 世界の飢餓人口は約7億人、世界人口の1割近くを占めると推計されています。この数を減らしていくためには、平和の実現や気候変動対策にとどまらず、さまざまなアプローチが必要なのです。