【NEWSとSDGs】目標5・8と関連づけて考えよう!

● 育休給付金 10年で3倍近く増(2022年4月1日の記事より)

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 出産・育児と労働との関係は、女性だけにとどまらず、男性はもちろんわが国の社会全体において大きな問題となっています。これまでは、仕事を続けたいと思っても、出産を機に仕事を辞めざるを得ない状況になってしまう女性が少なくありませんでしたが、現在は政府が「育児・介護休業法」という法律を定め、育児休業(育休)という制度を設けています。育休は子が1歳になるまで夫婦のどちらも取ることができます。育児休業給付金として、育休開始から半年間、普段の賃金の67%(7か月目以降は50%)の給付金を受け取ることができます。この給付金により、出産後に女性が仕事を続けやすくなりますし、男性の育休取得も推進されるでしょう。しかし、育休取得率を見ると、女性は81.6%に対して男性は12.7%と、最近上昇しているものの非常に低くなっています。わが国は「男は外で働き女は家で家事」といった伝統的な価値観がいまだに残っています。このことも男性の育休取得率が低い要因の一つだと言えるでしょう。男性の育休取得を促進していくことは、今後の大きな課題です。

 

 一方で、わが国は急速に少子高齢化が進んでいます。その中でも生産年齢人口(15~64歳)の将来的な減少が大きな問題です。2020年に約7,400万人だったのが、2060年には約4,800万人と、約3分の1の生産年齢人口が失われてしまいます。このことは、産業力の維持にとどまらず、さまざまな社会保障制度の維持にも厳しい課題を突き付けることになるでしょう。このような側面からも、出産・育児によって仕事を辞めなければならない人をできるだけなくすことがとても重要なのです。

 

 SDGs8番「働きがいも経済成長も」では、そのターゲットの中に「男性及び女性の完全かつ生産的な雇用」が示されています。男女の差なく雇用を維持していく必要があるのです。また、SDGs5番「ジェンダー平等を実現しよう」では、男女差別の撤廃、世帯内の役割分担、男女平等なリーダーシップの機会の確保が示されています。「男は外で…」といった価値観を改め、役割分担の中で夫婦が分担して家事を行っていくことがわが国でも当たり前とならなければいけません。また、「ジェンダーギャップ指数」にも示されているように、わが国では働くうえでの男女平等が実現されていません(*1)。役割、賃金、昇進など、さまざまな点において男女差が大きく残っている企業が少なくありません。これらを解消していくことで、生産年齢人口の減少を補うことにとどまらず、より生産的な労働の実現や性別によらない能力の発揮が実現されていくことでしょう。

 

*1…ジェンダーギャップ指数
https://www.weforum.org/reports/global-gender-gap-report-2021