● 男女平等ランキング 日本125位(2023年6月22日の記事より)
今月のニュース記事
● 男女平等ランキング 日本125位
世界各国の「男女平等」度合いを指数化した2023年版「ジェンダーギャップ報告書」を、世界経済フォーラム(WEF)が発表した。日本は調査対象の146か国のうち125位(前年は116位)で、2006年の発表開始以来、最低の順位だった。報告書では、教育・健康・政治・経済の4分野を分析。男女が100%平等な状態に対し、日本の達成率は64.7%だ。教育や健康ではほぼ平等を達成しつつある一方、政治と経済の分野で後れをとっている。衆院議員の女性比率が10%にとどまり、女性閣僚も少ない現状を反映した政治は、達成率が5.7%(世界138位)と低迷している。経済も、企業で役員・管理職の登用が進まないことなどから達成率は56.1%(同123位)と苦戦している。世界でも政治と経済分野での課題が大きい。世界全体の男女平等達成率は68.4%で、前年から0.3ポイント改善した。
(ニュースダイジェスト 2023年6月22日より)
指導のポイント
「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。
世界経済フォーラム(WEF)が調査・発行している「ジェンダーギャップ指数レポート」は今年で17回目となる。今回は146か国が対象となったが、日本は総合順位で125位と昨年からランク、スコア共に低下した。
この指数は、「経済」「教育」「医療へのアクセス」「政治参加」の4つの分野でジェンダーギャップの存在をいくつかの指標によってスコア化したものである。わが国は「教育」「医療へのアクセス」では高いスコアを獲得したものの、「経済」「政治参加」では非常に低いスコアであった。女性議員数などが指標になっている「政治参加」における同等性は5.7%で世界138位、女性管理職数などが指標になっている「経済」は56.1%で123位であった。
ジェンダーギャップを解消する取り組みは、DEI(多様性、公平性、包括性;Diversity, Equity, Inclusion)と呼ばれ、世界各国で推進されている。わが国においては、ここ数年さまざまなセクターで関連する取り組みが推進されている。しかし、世界の水準からすると成果に結びついていないというのは、この結果からも明白だろう。男女平等という枠組みにとどまらず、歴史的、文化的な背景を乗り越え、DEIが当たり前となる社会の構築を急がなければならない。
学習者用解説
「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。
「ジェンダーギャップ指数」について聞いたことがあるという人も多くなってきたのではないでしょうか。6月に2023年度の結果が発表されました。最近はジェンダーギャップの解消に向けたさまざまな取り組みが行われていますが、わが国はスコア、ランクともに昨年より低下して、146か国中125位という結果になりました。男女の同等性は64.7%で2年連続低下しています。首位は14年連続アイスランド(91.2%)で、唯一同等性が90%を上回りました。2位ノルウェー(87.9%)、3位フィンランド(86.3%)となっていますが、4位にニュージーランド(85.6%)がヨーロッパ以外の国として上位にランクインしました。ほかにも中米のニカラグアが7位、アフリカのナミビアが8位と、例年ヨーロッパ勢が上位を独占するランキングの中に、ヨーロッパ以外の国がランクインしてきています。
この指数は、「経済」「教育」「医療へのアクセス」「政治参加」の4つの分野において、それぞれにいくつかの指標が設定されていて、その結果をスコアにして提示しています。わが国は「教育」「医療へのアクセス」では高いスコアを獲得しましたが、「経済」「政治参加」では非常に低いスコアでした。女性国会議員の数や地方議会の議員数などが指標になっている「政治参加」における同等性は、世界全体では22.1%ですが、わが国は5.7%で世界138位、企業での女性管理職数やスキル形成などが指標になっている「経済」は56.1%で123位でした。この報告書では、世界的に「政治参加」のジェンダーギャップを埋めるには162年、「経済」は169年かかると報告されています。ジェンダーギャップを解消する取り組みが世界各地で行われていますが、これらはDEI(多様性、公平性、包括性;Diversity,Equity,Inclusion)と呼ばれています。多様性(ダイバーシティ)は、人の考え方、宗教、性格、性的指向、性別、障がいの有無、社会的地位、学歴、職歴等のあらゆる違いを「個性」として互いに受け入れ、尊重することです。公平性(エクイティ)とは、人々のニーズや状況に着目し、機会の公平性を追求することです。包括性(インクルージョン)とは、さまざまな個性が受け入れられ、誰もが個性を発揮して社会参加できるような環境をつくっていくことです。わが国でも、さまざまなDEIに関する取り組みが推進されていますが、世界の水準からすると必ずしも成果が出ているとは言えないかもしれません。男女平等という枠組みにとどまらずに、DEIが当たり前となる社会をつくっていかなければならないのです。
【問いかけ例】
Q.女性の政治参加を進めるにはどうしたらよいだろうか?
* 女性の大臣、国家公務員、地方議員など、政治にかかわる女性の数は最近でこそ増えてきている印象はあるかもしれないが、世界的な水準からすると決して多いとは言えない。長い歴史の中でつくり上げられてきた状況であるため、これを改善するのは非常に難しいだろう。政治において女性が活躍する諸外国を参考にし、政治家になるプロセス、政治家としての働き方やキャリア、などさまざまな角度から対策を考えたい。
Q.企業における男女格差をなくすためにはどうしたらよいだろうか?
* 育休取得などの職場慣行を整備することは必須であるが、制度があっても十分に利用されていないケースも見受けられる。組織のダイバーシティが企業価値の向上に寄与するという研究や報告もなされているので、諸制度の構築にとどまらず、性差だけでなく多様性を認め合う文化、風土を構築していくことの重要性に言及したい。
Q.なぜ欧州諸国はジェンダーギャップ指数のスコアが高いのだろうか?
* 福祉制度の充実、男女平等を推進する法律の整備、労働市場でのワーク・ライフ・バランスを推進する政策の充実、歴史や文化的背景など、さまざまな要因が考えられる。ジェンダーギャップ指数を算出するために、どのような指標が使われているかについて確認しながら、多様な角度からそれらの要因を検討したい。
オリジナル資料
〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。