目標11と関連づけて考えよう!

● 自治体の4割 消滅の可能性(2024年4月25日の記事より)

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今月のニュース記事

 

● 自治体の4割 消滅の可能性

 

 有識者でつくる人口戦略会議は、2020年から50年までに全国1,729自治体の4割に当たる744自治体で20~39歳の女性人口が50%以上減少し、いずれ消滅する可能性があるとする分析結果を公表した。人口減少にはさまざまな背景があり、若年女性の人口だけでは論じられないが、同会議は若年女性の減少率を将来推計で考えるのは重要な視点だと説明。10年前に分析結果が公表された際は、人口減少問題に目が向けられるきっかけとなった一方、若年人口を近隣自治体間で奪い合うかのような状況も見られた。その反省から今回は、東京都内16区や京都市など、他地域から移り住む人が多いことで、20~39歳の女性人口の減少が目立たない自治体に着目し、出生率の向上につながる対策の重要性を指摘した。

 

(ニュースダイジェスト 2024年4月25日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 消滅可能性都市とは、2050年に向けて20~39歳の女性が半数以上減少し、消滅する可能性のある都市を指す。この度発表された調査では、全体の4割に当たる744の市町村が該当した。前回2014年調査よりも改善が見られたものの、いまだに多くの市町村では人口減少が続いている。

 

 一方で、大都市への人口集中は世界的な傾向であり、わが国でも東京都への人口流入が止まらない。総務省の人口推計(2023年10月1日現在)では、すべての都道府県の中で東京都は唯一人口が増加している。

 

 都市への過度な人口集中は、住環境の整備の遅れ、環境の悪化、災害の激甚化、犯罪の温床となるといった問題を引き起こす可能性がある。一方で、人口が流出する地方では、少子高齢化や過疎化が進み、今後人々が暮らすための生活インフラの劣化を招くことになるだろう。

 

 SDGs11番「住み続けられるまちづくりを」は、「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」ことを目標としている。自分に適した仕事に就くことができ、教育や医療などが充実した社会づくりを追求し、誰もが暮らしやすいまちづくりを推進する必要があるだろう。それが人々のWell-Beingの実現と、都市の持続可能性につながるだろう。

 

 

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 みなさんは、自分が暮らしているまちがなくなるとしたら、どう思いますか。少子高齢化が進む日本では、近い将来に都市が消滅するということが本当に起こるかもしれません。民間の有識者で構成されている人口戦略会議は、日本全体の4割に当たる744の市町村が「消滅可能性都市」に該当すると発表しました。2014年には、民間の研究機関である日本創成会議が同様の調査を行っており、その時の結果よりも消滅可能性自治体は減少したものの、いまだに多くの市町村では人口減少が続いているのが現状です(*)。

 


 消滅可能性都市とは、2050年に向けて20~39歳の女性が半数以上減少し消滅する可能性のある都市のことを指します。子どもを産む世代の女性の人口が次の世代の人口を左右するため、このような定義となっています。

 

 一方、東京はすべての都道府県で唯一人口が増加していて、地方からの人口流入が続いています。大都市への人口集中はわが国だけではなく世界的な傾向となっており、さまざまな問題を発生させます。経済的な格差から劣悪な住環境にとどまらざるを得ない人たちはスラム街を形成し、犯罪の温床になったり、人々の健康が脅かされたりするおそれがあります。また、過密した都市はゴミや排気ガス、騒音などによる環境悪化を招き、ひとたび災害が発生するとその被害が甚大になることがあります。これは東京であっても例外ではありません。

 

 他方、人口が流出する地方は、少子高齢化や過疎化が一層進み、上下水道や電気、道路、病院、学校といった人々が暮らすための生活インフラが維持できない可能性が出てくるのです。


 どうして人々は地方から大都市に移動するのでしょうか。都市には、より多くの仕事があり、学校や病院などの選択肢が豊富にあり、文化芸術、エンターテインメントが充実しています。しかし一方で、地方には豊かな自然があり、生活コストが低いなどのメリットもあります。単なる表面的な魅力だけではなく、生活の豊かさなどの魅力づくりに、地方自治体はさらに力を入れて取り組む必要があるでしょう。

 

 SDGs11番「住み続けられるまちづくりを」は、「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」ことを目標としています。地方であっても、自分に合った仕事に就くことができ、教育や医療などが充実し、安心して出産や子育てを行うことができる暮らしやすいまちづくりを推進することが重要です。そうすることで、人々は地方にとどまることができ、人々のWell-Beingにつながってくるでしょう。

 

 

*…『地方消滅 東京一極集中が招く人口急減』 増田寛也著 中公新書 2014年 

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.東京一極集中を解消するにはどのような対策が考えられるだろうか?
* 地方から東京への人口移動の多くは、就職や学校入学を契機に起こっている。対策としては各自治体が地方の魅力づくりを行うことはもちろん、企業等においても、地方勤務の促進やリモートワークの導入などさまざまな対策が考えられる。しかし、各自治体や民間団体の取り組みだけでは十分ではない。国としての大きなビジョンや戦略も必要である。マクロ、ミクロ両面から対策を考えたい。


Q.地方において魅力的な仕事を創るにはどうすればよいだろうか?
* 地方には地方ならではの課題が存在する。その課題を解決するスモールビジネスやソーシャルビジネスを創り出すことで、雇用を生み出すことができる。また、コロナ禍でその選択肢が示されたリモートワークを推進することも必要だろう。居住地に関係なく仕事が行えるための条件や施設の整備が求められるが、なぜこれらが一気に拡大しないのかについて考えることで、企業の課題等の発見につなげさせたい。

 

Q.少子化に歯止めをかけるにはどのような策が考えられるだろうか?
* 仕事をするうえでの育休産休制度の充実、子育て施設やサポートの充実を図っていかなければならないのはもちろんである。しかし、そもそも子どもを産みたいという気持ちを失ってしまわないような社会情勢を作りあげることが必要である。出産の負担軽減、子どもの教育コスト低減といった、社会全体で取り組むべき大きな課題の解決も必要である。個人、企業、社会といったすべてのレベルにおいて課題と対策を考えさせたい。

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。