●アメリカ 66の国際機関から脱退へ(2026年1月9日の記事より)

今月のニュース記事
●アメリカ 66の国際機関から脱退へ
米国のトランプ大統領は7日、66の国連組織や国際機関、条約などからの脱退を指示する大統領令に署名した。気候変動対策で各国が協力する基盤となってきた「国連気候変動枠組み条約」なども含まれており、「米国第一」で国益を優先し、国際協調を軽視する姿勢が一層鮮明になった。今後、さらに対象が広がる可能性もあるという。国連関係で対象となったのは31機関で、SDGsを推進する国連経済社会局や国連人口基金などが含まれている。大統領令によると、国連組織については活動への参加を止めたり、違法にならない範囲で支出を削減したりすることで、事実上、脱退する。こうした米国の姿勢、動きが他国にも波及すれば、さまざまな課題に対する国際的な連携にも影響を及ぼすおそれがある。
(ニュースダイジェスト 2026年1月9日より)
指導のポイント
「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。
アメリカ政府が国連関連組織を含む66の国際機関からの脱退を進めていることは、気候変動、ジェンダー、貧困削減など幅広い分野で国際協力の後退を招く重大な動きである。脱退の対象には、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)や国連人口基金(UNFPA)などが含まれており、これらはSDGsを推進するうえで重要な役割を果たしている。とりわけ気候変動分野では、UNFCCCやIPCC(気候変動に関する政府間パネル)といった温暖化対策の国際枠組みからの離脱が、SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」の達成に直接的な打撃を与える。これらの機関は各国の排出削減目標を調整し、科学的知見を共有する役割を担っており、脱退はアメリカが国際的な意思決定プロセスにおける影響力を手放すことを意味する。
また、UN WomenやUNFPAなどジェンダー平等や保健分野を支える組織からの離脱は、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」および目標3「すべての人に健康と福祉を」に深刻な影響を及ぼす。UNFPAは母子保健や生殖医療の支援を世界150か国以上に提供しており、アメリカの資金削減は脆弱な地域への支援低下を招くことが危ぶまれる。
こうしたアメリカの一連の離脱姿勢は、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」で示されている多国間協力の弱体化を加速させ、SDGsの進捗が停滞する契機となってしまうおそれがあるだろう。
学習者用解説
「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。
アメリカが66の国際機関や国連関連組織から脱退しようとしている、という動きは、世界全体の協力体制を大きく揺るがす事態です。脱退の対象には、気候変動対策を話し合う国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)や、ジェンダー平等や女性の権利を支えるUN Women、母子保健などを支援する国連人口基金(UNFPA)などが含まれています。これらは、世界中の国が協力して課題を解決するための大切な機関です。
特に注目したいのは、SDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」との関係です。この目標は、国や地域、企業、市民など、さまざまな立場の人たちが協力し合うことで、世界の問題を解決していこうという考え方を示しています。しかし、アメリカのような影響力の大きい国が国際協力の枠組みから離れると、各国が協力する体制が弱くなってしまいます。例えば、気候変動への取り組みは一国だけでは解決できず、世界全体が協力する必要がありますが、UNFCCCやIPCC(気候変動に関する政府間パネル)といった組織からアメリカが離れることは、目標13「気候変動に具体的な対策を」の達成を大きく遅らせることになります。
また、UN WomenやUNFPAからの離脱は、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」や目標3「すべての人に健康と福祉を」にも悪影響をもたらすと言えます。UNFPAは150以上の国や地域で母子保健や安全な医療へのアクセスを支援していますが、アメリカが資金を減らすことで、その支援を必要とする地域に届かなくなるおそれがあります。
さらに、アメリカはSDGsそのものへの関与を弱めており、国際社会の協力ムードにも影響を与えると考えられています。SDGsは2030年までに達成すべき17の目標で、多くの国が協力して取り組むべきものです。しかし、アメリカのような大国が距離を置くと、「世界は本当に協力して目標を達成できるのか」という不安が高まります。
このような動きが世界に及ぼす影響は大きく、国際協力のバランスが崩れると、地球規模の課題への取り組みが遅れ、結果としてすべての国に悪影響が広がります。だからこそ、高校生のみなさんにも、SDGsの目標17が示す「協力の大切さ」を理解してほしいのです。世界が協力することで初めて解決できる問題はたくさんあります。今回のニュースは、国際協力がどれほど重要で、かつ不安定になりやすいものであるかを示す大切な例であると言えるでしょう。
【問いかけ例】
Q.なぜ国際協力は必要なのだろうか?
* 気候変動、感染症、貧困、紛争などは、一国だけでは解決できる問題ではない。他国と協力することで、問題への対応力が高まり、安定した国際社会をつくることができるのである。現在の世界は国境を越えてつながっていることを理解させたい。
Q.こうした世界の動きが私たちの生活にどのように影響するのだろうか?
* 国際協力の後退は、地球規模の課題への対策が遅れるだけでなく、結果として各国の安全保障や経済にも影響を及ぼすだろう。アメリカがSDGsから距離を置くことで、世界全体の持続可能な開発の勢いが弱まる可能性も考えられる。生徒には「地球規模の問題が解決しないと、日本の暮らしや将来の働き方はどう変わるのか」「自分たちはどんな行動で国際協力に参加できるのか」を考えさせたい。
Q.このような状況の中で、日本政府が取るべきスタンスや行動にはどのようなことがあるだろうか?
* 日本にはこれまで通り国際協力を重視し、国連機関への安定した資金拠出や参加を続けることが求められるだろう。特に、気候変動対策やジェンダー平等、貧困削減など、多国間での協力が不可欠な分野において、日本が信頼されるパートナーとしてかかわり続けることが大切であること、またその理由について考えさせたい。
オリジナル資料
〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。