目標15と関連づけて考えよう!

●クマによる被害多発 対策急務(2025年10月31日の記事より)

image

 

今月のニュース記事

 

●クマによる被害多発 対策急務


各地でクマによる人身被害が多発するなか、政府は関係閣僚会議を開き、被害防止に向けた対策の強化に乗り出した。ハンターの確保や児童生徒の安全確保、観光への影響などを包括的に検討。出没が相次ぐ地域では、住民の外出もままならない状態が続いている。クマによる死者は、10月30日時点で過去最多の12人。人を襲ったクマが民家に侵入して居座る事案や学校の敷地などにクマが出没するケースも相次いでいる。また、秋の行楽シーズンを迎えるなか、世界文化遺産の白川郷(しらかわごう)合掌造り集落で知られる岐阜県白川村では、観光中のスペイン国籍の男性がクマに襲われる被害が発生。村は外国人観光客に英語などで出没情報を周知する看板を設置した。英国政府は公式ホームページで、渡航者に注意を呼びかけている。観光地では集客への影響を懸念する声も多く、国土交通省が観光客の安全対策について検討を進めている。

 

(ニュースダイジェスト 2025年10月31日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 近年、クマによる人身被害が多発し、政府や自治体によるハンター確保や児童生徒の安全対策が急務となっている。この問題は単なる野生動物管理にとどまらず、生態系のバランスを崩してしまう可能性を含んでいる。生物多様性条約は種の保全と持続可能な利用を国際的に約束しており、わが国も生物多様性国家戦略を策定し、自然と共生する社会の構築をめざしている。しかし、里山の荒廃や過疎化により、人間社会と野生動物の境界が曖昧になり、クマの出没が増加していると考えられるのである。

 


 この状況を改善するためには、ネイチャーポジティブの考え方が重要である。これは、生物多様性の損失を止めて、回復に反転させることである。この考え方からすると、森林管理や地域資源の活用を通じて、クマの生息域と人間の生活圏が適切な距離を保つことが求められる。

 


 SDGsとの関連では、目標15「陸の豊かさも守ろう」が直接関係し、目標11「住み続けられるまちづくりを」や目標12「つくる責任 つかう責任」も関連がある。地域社会が主体となり、持続可能な土地利用や観光と自然保護の両立を図ることが、生徒へ伝えるべき視点だろう。生物多様性の保全は、単なる環境問題ではなく、人間の安全や文化的価値にも直結する課題であることを理解させることが教育上の使命であると言える。

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 近年、日本各地でクマによる人身被害が増えています。政府や自治体はハンターの確保や児童生徒の安全対策、観光への影響などを考慮し、緊急の対応を進めていますが、クマが学校や民家に侵入する事例もあり、地域住民の生活に深刻な影響を与えています。クマ被害への対応は単なる危険動物の排除ではなく、私たちの社会と自然環境の関係を考える重要なきっかけになります。

 


 なぜクマの出没が増えているのでしょうか。背景には里山の荒廃や過疎化、森林管理の不行き届きなどがあります。人間が利用していた山林が放置されることで、クマの食べ物不足や生息域の変化が起こり、クマが人間の生活圏に近づいてしまうのです。これは生態系のバランスが崩れている証拠であり、生物多様性の保全が不十分であることを示しています。

 


 ここで、生物多様性条約や日本の生物多様性国家戦略が重要になります。これらは、自然と共生する社会をめざし、種の保全や自然の持続可能な利用を推進する国際的・国家的な取り組みです。また、近年注目されている「ネイチャーポジティブ」という考え方も大切です。これは、生物多様性の損失を止めて、回復に反転させるという理念です。これらの点から言うと、森林の適切な管理や地域資源の活用を通じて、クマの生息域と人間の生活圏を調和させることが求められます。

 


 この問題はSDGsとも深く関係しています。特に目標15「陸の豊かさも守ろう」には、生物多様性の保全が深く関係しています。また、目標11「住み続けられるまちづくりを」や目標12「つくる責任 つかう責任」にも関連します。地域社会が主体となり、持続可能な土地利用や観光と自然保護の両立を図ることが必要です。さらに、目標4「質の高い教育をみんなに」も重要でしょう。学校教育で、生物多様性や人間活動との関係を学ぶことで、次世代が環境問題に主体的に取り組む力を育てることができます。
 


 
 クマの出没問題は、単に被害防止や安全対策について考えるだけでなく、自然と人間の共生を考える課題です。SDGsの視点から、私たちの生活と環境のつながりを理解し、持続可能な社会をつくるために何ができるかを考えていきましょう。

 

【問いかけ例】

 

Q.生物多様性条約とはどんな条約だろうか?
* 生物多様性条約は、地球上の多様な生物を守り、その持続的利用と遺伝資源の利益配分を国際的に進めるための条約で1992年に採択された。生態系・種・遺伝子の多様性を保全し、人類の将来に不可欠な自然資本を維持することを目的としている。また、各国が行動計画を策定し、保全と利用の両立を図る国際協力の枠組みとなっている。わが国をはじめ、各国の生物多様性の取り組みを確認させるのも有意義である。

 

Q.観光地でのクマ被害はどんな地域に影響を与えるだろうか?
* 新聞記事では、世界文化遺産の白川郷で外国人観光客が被害に遭った事例が紹介されている。観光地での野生動物被害は、安全対策や情報発信の強化を必要とするだけでなく、地域経済や国際的なイメージにも影響が及ぶ。観光業などの経済的な側面だけでなく、環境面や社会面などにも幅広く関係していることを理解させたい。

 

Q.ネイチャーポジティブに対して社会ができることはどんなことだろうか?
* ネイチャーポジティブは、社会全体で自然再生を進める仕組みづくりが重要である。企業は生物多様性に配慮した調達や脱炭素化、環境負荷の少ない製品設計を進め、自治体は保全地域の拡充や都市の緑化を支援できる。学校や大学は自然への理解を深める教育を強化し、研究で保全技術を発展させることができる。こうした多層的な取り組みが自然再生につながるだろう。

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。