目標12と関連づけて考えよう!

● プラごみ条約 合意見送り(2025年8月16日の記事より)

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今月のニュース記事

 

●プラごみ条約 合意見送り


スイスのジュネーブで会期を延長して続けられていた、プラスチックごみ汚染に対処する国際条約づくりの政府間交渉会合が、合意を見送って閉幕した。前回の韓国・釜山(プサン)での会合に続き、今回も「生産規制」などをめぐる主張で合意に至らず、またも先送りとなった。今後、再び会合を開く方針だが、時期などの詳細は未定だという。プラスチックの原料となる石油が採れるサウジアラビアなどの産油国やインドなどは今回も生産規制に強硬に反対し、条約は廃棄物管理などが対象だと主張。一方、プラスチックの影響が大きい中南米や欧州連合などはこれに反発し、生産から消費・廃棄まで全体を管理する包括的な条約が必要だと訴える。妥協点を見いだそうと日本なども折衷案を提示したが、両者の主張の隔たりは大きく、プラごみ問題への対応の遅れが懸念される。

 

(ニュースダイジェスト 2025年8月16日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 スイス・ジュネーブで開催されたプラスチックごみ汚染に関する国際条約づくりの政府間交渉会合は、今回も合意に至らず閉幕した。前回の韓国・釜山(プサン)会合に続き、生産規制をめぐる意見対立が解消されず、再度の先送りとなった。産油国などは生産規制に強硬に反対し、条約の対象は廃棄物管理に限るべきであると主張する一方、EUや中南米諸国は生産から消費・廃棄までを包括的に管理する枠組みを求めている。日本は折衷案を提示したが隔たりは大きく、交渉の行方は今後も不透明である。プラスチックごみ問題はSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標14「海の豊かさを守ろう」などと深くかかわっており、持続可能な社会実現の観点から喫緊の課題である。

 


 教育現場においても、国際社会の動向をふまえ、生産と消費のバランスや資源循環について主体的に考える学びを促すことが求められる。今回の交渉停滞は、環境問題が単なる理論ではなく、国際政治や経済と複雑に結びついた現実の課題であることを生徒に理解させる好機となるであろう。

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 スイスのジュネーブで開かれたプラスチックごみ汚染に対処するための国際的な条約づくりの会議が、また合意に至らず閉幕しました。前回の韓国・釜山(プサン)での会議でも話し合いがまとまらなかったため、今回こそはという期待がありましたが、再び先送りになったのです。主な対立点は「生産規制」をめぐる意見の違いです。サウジアラビアなどの産油国やインドなどは、生産規制に強く反対し、条約は廃棄物管理だけを対象にすべきだと主張しています。一方で、欧州連合や中南米の国々は、プラスチックの生産から消費、廃棄までを一体的に管理する包括的な条約が必要だと訴えています。日本は両者の間をとる提案をしましたが、意見の溝は埋まらず、合意には至りませんでした。

 


 この問題は、SDGsと深くかかわっています。例えば、目標12「つくる責任 つかう責任」は、私たちが物を作る過程や使い方、捨て方を見直すことを求めています。目標13「気候変動に具体的な対策を」は、プラスチック生産に伴う温室効果ガスの排出を減らす必要があることを示しています。そして目標14「海の豊かさを守ろう」は、海に流れ出るプラスチックごみを減らし、海の生態系を守ることをめざしています。

 


 こうした世界の動きを知ることは、皆さんの生活と深くつながっています。例えば、普段コンビニやスーパーで何気なく受け取るプラスチックの袋やストロー、ペットボトルは、適切に処理されなければ海や川に流れ出してしまいます。レジ袋をマイバッグに変える、ペットボトルではなくマイボトルを使うといった行動は小さな一歩ですが、世界全体のプラスチックごみ削減に貢献することができます。

 


 また、この問題は高校で学ぶ内容とも深く結びついています。地理では国ごとの資源や産業の違いを学びますが、それが国際交渉にどのような影響を与えるかを考えることができます。公民では国際政治や経済について学びますが、まさにこの条約交渉は、各国の利害が衝突する現場となっています。理科では化学や生物を通して、プラスチックの性質や、生態系への影響を考えることができます。

 


 このように、世界の問題と自分の生活、そして学校での学びをつなげて考えることはとても大切です。ニュースをただの情報として終わらせず、「自分とどんな関係があるのか」「学んだ知識をどう活かすのか」を考えることで、学びが深まり、自分の行動にも変化が生まれます。プラスチックごみ問題は一人ひとりの行動が解決の鍵を握る課題です。これをきっかけに日々の生活を見直し、世界の動きを自分ごととして考える習慣を身につけてください。

 

 

【問いかけ例】

 

Q.なぜ一部の国はプラスチックの生産規制に反対するのだろうか?
* この問いでは、国ごとの経済事情や産業構造が国際交渉に影響を与えることを理解させることができる。生徒には、石油産出国や新興国にとってプラスチック生産が重要な産業であり、規制が経済的打撃となる可能性があることを考えさせ、これにより、国際問題が単なる善悪の対立ではなく、複雑な利害調整であることを理解させたい。

 

Q.自分の生活の中でプラスチックごみを減らすためにできることは何だろうか?
* この問いでは、身近な行動と世界的課題がつながっていることを意識させることができる。マイバッグやマイボトルの利用、詰め替え商品の選択など、具体的な行動を生徒同士で出し合うことで日常生活に落とし込む力を育てることができる。行動変容が一人ひとりの責任であると理解させることで、主体的な学びへとつなげたい。

 

Q.プラスチックごみを減らすための技術開発はどのようなものがあるだろうか?
* 植物由来の「バイオプラスチック」や生分解性素材の開発が進み、使い捨て容器や包装材への利用が拡大している。また、化学的リサイクルの実用化が進み、プラスチックを分子レベルに分解して再利用する技術が注目される。さらに、AIを活用した分別やマイクロプラスチック除去技術も研究されている。これらの進歩は、循環型社会実現に欠かせないものであることを理解させたい。

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。