目標9と関連づけて考えよう!

● AIアクションサミット(2025年2月13日の記事より)

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今月のニュース記事

 

●AIアクションサミット


人工知能(AI)の利活用などについて議論する国際会議「AIアクションサミット」の首脳会合がパリで開かれた。約100か国から政府関係者や企業トップら約1,500人が参加し、今回で3回目の開催となった。前回サミットは、米オープンAIの開発した「Chat(チャット)GPT」が注目を集めていた時期で、AIのリスクが議論され、「規制」が重視されたが、今回は技術革新や活用が議題の中心を占めた。背景には、トランプ米政権がAIの開発推進にかじを切ったことと、高性能のAIモデルを発表した中国企業「ディープシーク」の登場がある。閉幕に合わせて発表された「包摂的で持続可能なAI」をめざす共同声明に、日本や中国など60か国・地域は署名したが、米国と英国は署名せず。また、フランスと欧州連合(EC)は米中両国に対抗する姿勢を強めている。AIをめぐる国際ルールの枠組みづくりは、今後さらに困難になっていく可能性がある。


(ニュースダイジェスト 2025年2月13日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 2025年2月にパリで開催された「人工知能(AI)アクションサミット」では、デジタル格差の縮小、AI開発の国際枠組みの構築、AIが発展するための条件整備、AIに関する労働市場の醸成、持続可能なAIの実現、国際協力とガバナンスの強化といった点が議論され、「⼈類と地球のための包括的かつ持続可能な⼈⼯知能に関する声明」に60か国・地域が署名した。アメリカと英国は産業発展や国家安全保障の観点から署名を見送った。

 

 進化が著しい生成AIであるが、正確性、倫理面、権利保護などの観点でリスクを内包している。特に、兵器などの軍事に利用されてしまうことや、先進国と途上国の間での格差が生じてしまうことなどは解決しなければならない問題である。また、AI開発と普及により将来の電力需要の増大が見込まれるため、より持続可能なAI開発が求められている。

 

 SDGs9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」では、産業インフラ開発や効率化、持続可能性の追求などが示されている。すでにAIは産業面だけでなく我々の生活においてもインフラとして欠くことができなくなっている。このサミットの効力が効果的に発揮され、より持続可能で倫理的なAI開発が求められている。

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 人工知能(AI)が急速に発展していることに気づかされることが多くなっています。アメリカの企業OpenAI社が「Chat GPT」を2022年11月30日に公開した際に、世界中に衝撃が走ったことを覚えているかもしれません。さらに、それからわずか2、3年間でAIは加速度的に進化しています。Microsoft社やGoogle社なども相次いで生成AIを開発し、すでに私たちが日常的に使えるようになっています。

 


 そもそも、AI、生成AIとは何でしょうか。AI(Artificial Intelligence)は、コンピュータが人間の知的な作業を模倣する技術の総称です。AIは主に「データを解析し、パターンを見つけて予測や分類を行う」ことに強みがあると言われています。それに対して生成AIは、「大量のデータを学習し、それをもとにテキスト、画像、音楽、動画、プログラムコードなどを自動生成」します。新しいコンテンツを生成する能力を持っていると言えるでしょう。生成AIを使用するメリットについて生成AIに尋ねてみると、コンテンツ制作の効率化、コスト削減、創造性の向上、個別最適化が可能、言語の壁を越えられる、という5点を挙げてくれました。

 


 一方で、生成AIは正確性、倫理面、権利保護などの観点ではリスクもあります。また軍事利用されてしまうことや、先進国と途上国の間で開発や使用の格差が生じてしまうことなど、さまざまな課題やリスクもあります。

 


 2025年2月10~11日、パリで「人工知能(AI)アクションサミット」が開催され、100を超える国や地域からの参加がありました。このサミットでは、デジタル格差の縮小、AI開発の国際枠組みの構築、AIが発展するための条件整備、AIに関する労働市場の醸成、持続可能なAIの実現、国際協力とガバナンスの強化といった点が議論されました。サミットは、「⼈類と地球のための包括的かつ持続可能な⼈⼯知能に関する声明」に60か国・地域が署名して終了しました。しかし、アメリカは、過度な規制がAI開発を妨げるとして署名を見送ったほか、イギリスも国家安全保障などの観点から署名しませんでした。

 

 また、この会議では、 AI開発とエネルギーに関する問題についても議論がされました。AIの開発と使用には、大量の電力を必要とします。IEA(国際エネルギー機関)によると、過去10年間の電力使用量は総エネルギー需要の2倍のペースで増加しており、電力需要の伸びは今後数年間でさらに加速すると見込まれています。このことは、地球温暖化をさらに加速させてしまうおそれがあります。今後はより持続可能なAI開発が必要となりますが、このサミットではAIとエネルギーについて調査を進めることになりました。

 


 SDGs9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」では、産業インフラ開発や効率化、持続可能性の追求などが示されています。インターネットやAIはすでにインフラとして欠くことができなくなっていることは言うまでもないでしょう。より持続可能で倫理的なAI開発が求められているのです。

 

 

【問いかけ例】

 

Q.AIが普及することで私たちの生活はどのように便利になるだろうか?
* 仕事をするうえでは、文書やデザインなどを自動生成できる機能により生産性の向上が期待できる。日常生活においては、医療、教育、エンターテインメントなどの領域において、個人に最適化されたコンテンツや情報を効果的に受け取ることができるようになるだろう。また、翻訳や自動運転などに期待している人も多いだろう。産業面のみならず日常生活においてもAIはこれまでの常識を大きく変える可能性を秘めていると言える。

 

Q.AIは倫理面でどのような課題を有しているだろうか?
* まずは、個人情報保護の問題がある。顔認証による個人情報や秘匿性の高い企業情報などが流出、悪用される可能性がある。また、ディープフェイクのような偽情報が簡単に生成できるため、誤ったニュースやなりすましなどが発生してしまうおそれがある。さらに軍事利用は大きな課題である。AIがターゲットを判断して自動で爆撃するような兵器がすでに開発されている。AIの倫理的な課題をどのように解決していくのかは非常に大きな問題である。

 

Q.持続可能なAIを開発するためにはどのような点に配慮する必要があるだろうか?
* 再生可能エネルギーの活用、省エネルギー化など環境負荷を減らす必要があることや、倫理的で公正な設計思想が求められる。そして、AIを使用する際の安全面を配慮して、幅広く社会に公平に普及することで、社会全体の利益に貢献するような持続可能なAI開発が求められる。

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。