● 外国人労働者 過去最多230万人(2025年1月31日の記事より)
今月のニュース記事
●外国人労働者 過去最多230万人
2024年10月末時点の外国人労働者は、過去最多の230万2,587人だったと厚生労働省が発表した。前年比25万3,912人増で、増加率は前年と同じ12.4%だった。人手不足が顕著な介護や建設業などの分野で即戦力人材を受け入れる在留資格「特定技能」は20万人を超えた。外国人を雇う事業所も過去最多で、7.3%増の34万2,087か所だった。前年比で大きく増えた職種は、介護を含む医療、福祉が28.1%増、建設業が22.7%増、宿泊・飲食サービス業が16.9%増となった。外国人労働者の国籍は、最多がベトナムの57万708人、次いで中国40万8,805人、フィリピン24万5,565人の順で、都道府県では、東京が58万5,791人で最多。
(ニュースダイジェスト 2025年1月31日より)
指導のポイント
「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。
わが国における外国人労働者数が増加を続けており過去最高を記録した。2024年10月末時点で前年比12.4%増と急速にその数を伸ばしている。出身国は、ベトナム、中国、フィリピンなどで、東南アジア諸国からの受け入れが多くなっている。
この増加の背景には、2019年に創設された「特定技能」制度がある。これは、「外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野」である介護、建設、宿泊、外食業などにおいて人手不足解消に寄与している。
外国人労働者を受け入れるメリットとして、人件費が比較的抑えられるという点にとどまらず、急増するインバウンド対応、職場の多様性を確保する、国際貢献、といったさまざまな側面が考えられる。
SDGsターゲット8.8には、移住労働者への適切な労働環境の確保が示されており、10.2では、すべての人々の経済的な包含等がターゲットとして設定されている。
わが国では特定技能制度につながる育成就労制度の創設も予定されており、今後さらに外国人労働者が増加することが見込まれる。しかし、言葉の壁や、犯罪・失踪といったトラブルにつながることもあり、どのようにして共生できる社会を築いていくかが課題となるだろう。
学習者用解説
「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。
最近、コンビニエンスストアやレストラン、ファストフード店などで、外国人の労働者を見かけることが多くなったと感じている高校生の皆さんも多いのではないでしょうか。厚生労働省の調査によると、外国人労働者数は2013年以降増加を続けていて、2024年10月末時点で過去最高の230万人を記録しました。前年比12.4%増と急速にその数を伸ばしています。出身国は、ベトナム、中国、フィリピン、ネパールなどで、東南アジア諸国からの受け入れが大半を占めています。
この増加の背景には、2019年に創設された「特定技能」制度があります。これは、「外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野」である介護、建設、宿泊、外食業などにおいてその人手不足解消のために設けられました。この制度は「特定技能1号」と「特定技能2号」に分けられます。前者は「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」で、16の分野があり、更新制で最大5年までという期限や試験による日本語レベルの確認などが設定されています。後者は「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」で、熟練労働者の確保につながります。11分野、更新回数の制限がない、家族の帯同が認められる場合がある、などの特徴があります。
また、この特定技能制度につながる「育成就労」制度の創設も予定されています。これは、同種の職種を母国で経験しているか、学校等でその職種の勉強をしているか、という前職要件がありますが、日本語能力の有無は問われていない分野が多くあります。そして、原則3年間の育成就労をもって「特定技能1号」につなげることがめざされています。
しかしながら、長く実施されてきた「外国人技能実習制度」はさまざまな問題が顕在化しました。不当な労働環境を強いられたり、給与が著しく低かったりすることなどが原因で失踪する外国人が増えてしまったのです。これらの問題を解消するためにも、特定技能制度や育成技能制度がしっかりと根付くことが重要でしょう。
一方で、外国人労働者を受け入れるメリットも多くあります。企業として人件費が比較的抑えられます。また、急増する外国からのインバウンド観光客などへの対応がスムーズになることも考えられます。加えて、外国人労働者がいることで職場の多様性が確保されるとともに、国際貢献につながるという側面もあるでしょう。
SDGs8番「働きがいも経済成長も」のターゲット8.8には、移住労働者への適切な労働環境の確保が示されています。また、SDGs10番「人や国の不平等をなくそう」の10.2では、すべての人々の経済的な包含等がターゲットとして設定されています。
わが国では人口減少により労働人口が減少することが予想されています。外国人労働者を数多く受け入れていく際に、言葉の壁や犯罪・失踪といったトラブルを克服し、どのようにして共生できる社会を築いていくかが課題となるでしょう。
【問いかけ例】
Q.外国人労働者が働く場所として日本を選ぶ理由は何だろうか?
* 政治が比較的安定していて凶悪な犯罪が少ないといった安全面が挙げられる。また、コンビニやスーパーの充実や公共交通機関の発達などの生活利便性がよいことも理由の一つである。産業面では、ものづくりの技術力が高くスキルを身につけることができる、などの理由が考えられる。日本の優位性をさまざまな角度から検討させたい。
Q.企業が外国人労働者を雇用する際のメリット・デメリットは?
* 労働力不足を補うだけでなく、多様な視点を取り入れることができる、国際展開を進める際には大きなメリットとなることなどが考えられる。一方で、文化や言語の違いが職場内でのトラブルや問題発生の原因になる可能性があることや、さまざまな規制や法律に対応するためのコストが増加するなどのデメリットが考えられる。経営者の視点に立って考えてみることを勧めたい。
Q.外国人と共生できる社会を築くにはどうすればよいか?
* 外国人は地域社会から孤立する傾向があると言われている。また、ゴミ出しのルールや公共交通や施設の利用方法など、当たり前と考えていることでも、外国人には理解できないことも多い。日ごろから外国人と地域住民が交わるような機会や空間を創出することが重要となってくる。全国で取り組まれている同種の先駆的事例を参照させたい。
オリジナル資料
〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。