目標15と関連づけて考えよう!

● 生物多様性 50年で73%低下(2024年10月11日の記事より)

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今月のニュース記事

 

● 生物多様性 50年で73%低下

 

 世界自然保護基金(WWF)が発表した報告書によると、地球上の生物多様性の豊かさを示す指数は、自然環境の損失や気候変動により過去50年で73%低下した。生態系は回復不可能な状況に近づいており、今後5年の行動が生命の未来にとって極めて重要だとして対策強化を求めた。指数は哺乳類や鳥類、両生類など計5,495種の生息密度や巣の数などから算出した「生きている地球指数」で、一つひとつの群れの規模や個体数の変化の傾向を数値化した。生息環境別では、河川や湖沼、湿地といった淡水域の減少率が85%と最大で、ダム建設などによる生息地の悪化で淡水魚や両生類が高いストレスを受けていると指摘された。陸域は69%、海域は56%。地域別では、中南米・カリブ海の減少率が95%で最大。アフリカが76%、日本を含むアジア太平洋地域が60%と続いた。農地開発に伴う森林破壊など、生息地の劣化や喪失が脅威になっている。

 

(ニュースダイジェスト 2024年10月11日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 「『生物多様性』とは、自然生態系を構成する動物、植物、微生物など地球上の豊かな生物種の多様性とその遺伝子の多様性、そして地域ごとの様々な生態系の多様性をも意味する包括的な概念(環境省)」とされているが、開発、気候変動、自然の管理放棄、外来種の持ち込みなどの人為的な要因により、その維持が危ぶまれている。

 

 世界自然保護基金(WWF)が算出する「生きている地球指数」は生物多様性の度合いを表す指標であり、2024年は5,495種の野生生物の生息密度などを数値化している。この50年で生息密度が73%も減少していることが発表された。また、世界的な自然保護NGOの国際自然保護連合(IUCN)が、絶滅の危機に瀕している生物を「絶滅危惧種(レッドリスト)」として設定しているが、2024年の発表では調査した166,061種のうち46,337種以上の野生生物が絶滅危惧種として指定されている。これは調査している生物種の30%に迫る割合である。加えて、わが国においても環境省が「絶滅危惧種」を設定しており、2020年の発表によると、両生類では52%、魚類は42%、爬虫類は37%と多くの種が絶滅危惧種となっている。

 


 2024年10~11月にコロンビアで「生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)」が開催された。前回採択された生物多様性保全の国際目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の評価指標の設定などについて進展があったが、これらの実効性を高め、生物多様性を回復に向かわせる「ネイチャーポジティブ」の一刻も早い実現が求められる。

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 SDGs15番「陸の豊かさも守ろう」のターゲット15.5には生物多様性の損失阻止と絶滅危惧種の保護が設定されています。それでは「生物多様性」とはどういう意味でしょうか。環境省によると、「『生物多様性』とは、自然生態系を構成する動物、植物、微生物など地球上の豊かな生物種の多様性とその遺伝子の多様性、そして地域ごとの様々な生態系の多様性をも意味する包括的な概念」とされています。つまり、人間も含めた地球上のあらゆる生物のつながりのことだと言えます。

 

 その生物多様性がさまざまな要因で危ぶまれています。産業や居住のために森林などの自然を開発したり、里山などの自然を人が管理できなくなってきたりしていることで、生物の生息場所が狭まってきているのです。また、世界的な気候変動は、農作物や畜産業などの陸上生物にとどまらず海洋生物にも悪影響を及ぼしています。加えて、外来種の持ち込みも原因と言われています。いずれも元をたどると人為的な原因だということができるでしょう。

 


 それでは、危機の状況を見てみましょう。世界自然保護基金(WWF)が算出する生物多様性の度合いを表す「生きている地球指数」は、2024年度は5,495種の野生生物の生息密度などを数値化していますが、この50年で73%も減少していると発表されました。また、世界的な自然保護NGOの国際自然保護連合(IUCN)は、絶滅の危機に瀕している生物を「絶滅危惧種(レッドリスト)」として設定しており、2024年の発表では、調査した166,061種のうち46,337種以上の野生生物が絶滅危惧種として指定されています。これは調査している生物種の30%に迫る割合です。わが国においても環境省が「絶滅危惧種」を設定しており、2020年の発表によると、両生類では52%、魚類は42%、爬虫類は37%と多くの種が絶滅危惧種となっています。別の調査では、私たちに馴染みの深いスズメも生息数が大幅に減少していて、絶滅危惧種に近い状態であることがわかりました。

 

 2024年10~11月に「生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)」が南米・コロンビアで開催されました。前回のCOP15で採択された生物多様性保全の国際目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の評価指標の設定や、途上国が生物多様性目標を達成するための資金的支援のあり方について進展がありました。しかし、生物多様性の保護は、私たち人間にとっても非常に重要です。今後は生物多様性を回復に向かわせる「ネイチャーポジティブ」の一刻も早い実現が求められていると言えるでしょう。

 

 

【問いかけ例】

 

Q.どうして生物多様性を保全しなければならないのだろうか?
* 地球上で長期間にわたって築き上げてきた生物間の関係性を良好に保たなければ、さまざまな生態系が崩壊していくことにつながる。いうまでもなく、私たち人間も生態系の中に組み込まれているので、生物多様性が危ぶまれると人間の生存が少なからず影響を受けることになる。また、昨今では生物の「権利」を保証すべきであるという認識も強まっている。生物学や生態学にとどまらず、社会学、政治学など幅広い見地からのアプローチが求められる。

 

Q.生物多様性保全に対して企業は何をすべきだろうか?
* 人間の暮らしを支える産業はその多くを自然環境に依存している。土地、水、木材、鉱物資源などを利用する過程で、生態系に悪影響を及ぼす可能性を含んでいる。もちろん、動植物を直接的に生産、消費する産業も数多く存在する。生物多様性に対する世界的な関心の高まりと、企業の責任を追及する動きが強まる中、企業は生物多様性を意識した経営をしなければ、投資家や顧客から選ばれなくなる可能性を秘めていると言える。

 

Q.生物多様性を保全するために私たちは何ができるだろうか?
* 私たち人間が生活していくうえで自然環境を利用することは避けられない。まずは、自然環境や生態系への負荷がより少ない商品・サービスを選択することや、過度な消費や開発を控える行動をとる必要があるだろう。加えて、外来種を持ち込まないなど、私たち人間も地球上の生物の一つであることを念頭に置きつつ、個人としてどのような選択、行動ができるかを考えさせたい。

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。