● 生物多様性 50年で73%低下(2024年10月11日の記事より)
学習者用解説
「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。
SDGs15番「陸の豊かさも守ろう」のターゲット15.5には生物多様性の損失阻止と絶滅危惧種の保護が設定されています。それでは「生物多様性」とはどういう意味でしょうか。環境省によると、「『生物多様性』とは、自然生態系を構成する動物、植物、微生物など地球上の豊かな生物種の多様性とその遺伝子の多様性、そして地域ごとの様々な生態系の多様性をも意味する包括的な概念」とされています。つまり、人間も含めた地球上のあらゆる生物のつながりのことだと言えます。
その生物多様性がさまざまな要因で危ぶまれています。産業や居住のために森林などの自然を開発したり、里山などの自然を人が管理できなくなってきたりしていることで、生物の生息場所が狭まってきているのです。また、世界的な気候変動は、農作物や畜産業などの陸上生物にとどまらず海洋生物にも悪影響を及ぼしています。加えて、外来種の持ち込みも原因と言われています。いずれも元をたどると人為的な原因だということができるでしょう。
それでは、危機の状況を見てみましょう。世界自然保護基金(WWF)が算出する生物多様性の度合いを表す「生きている地球指数」は、2024年度は5,495種の野生生物の生息密度などを数値化していますが、この50年で73%も減少していると発表されました。また、世界的な自然保護NGOの国際自然保護連合(IUCN)は、絶滅の危機に瀕している生物を「絶滅危惧種(レッドリスト)」として設定しており、2024年の発表では、調査した166,061種のうち46,337種以上の野生生物が絶滅危惧種として指定されています。これは調査している生物種の30%に迫る割合です。わが国においても環境省が「絶滅危惧種」を設定しており、2020年の発表によると、両生類では52%、魚類は42%、爬虫類は37%と多くの種が絶滅危惧種となっています。別の調査では、私たちに馴染みの深いスズメも生息数が大幅に減少していて、絶滅危惧種に近い状態であることがわかりました。
2024年10~11月に「生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)」が南米・コロンビアで開催されました。前回のCOP15で採択された生物多様性保全の国際目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の評価指標の設定や、途上国が生物多様性目標を達成するための資金的支援のあり方について進展がありました。しかし、生物多様性の保護は、私たち人間にとっても非常に重要です。今後は生物多様性を回復に向かわせる「ネイチャーポジティブ」の一刻も早い実現が求められていると言えるでしょう。