● プラスチックごみ汚染原因 インドが最多(2024年9月5日の記事より)
今月のニュース記事
● プラスチックごみ汚染原因 インドが最多
「プラスチックごみによる汚染の原因を一番つくっているのはどの国か」について、英リーズ大学の研究チームが世界の5万以上の自治体を調べた結果を、英科学誌ネイチャーに発表する。適切に回収されないプラごみは、屋外で燃やせば有害物質が発生して健康被害などにつながり、ポイ捨てされれば川などを通じて海に流出してマイクロプラスチック(5ミリ以下)となり、環境を汚染する。研究チームが分析した結果、2020年には、世界全体で年間5,210万トンが適切に処理されずに環境中に排出されており、このうちの57%が燃やされ、43%が未焼却の状態で放置されていたことがわかった。国別では、インドの930万トンが最多で、世界の排出量の5分の1を占めた。
(ニュースダイジェスト 2024年9月5日より)
指導のポイント
「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。
イギリスの大学の調査から、環境中に大量のプラスチックごみが適切に処理されずに放置されているという結果が明らかになった。マイクロプラスチックが水中や海中に浮遊し、魚類だけでなく、食物連鎖によって人間にも被害が及ぶ。これは、日本国内にとどまらず世界的な問題である。
プラスチックごみを減らす取り組みとして、最近ではReduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)にRefuse(リフューズ)、Repair(リペア)を加えた「5R」の推進が叫ばれている。
ペットボトルに着目すると、わが国はリサイクルが進んでいる国であると評価されている。もちろんそのような側面はあるが、注意が必要である。ペットボトルがリサイクルされる量のおよそ半分は熱回収による「サーマルリサイクル」となっており、二酸化炭素を排出する。(*1)
最近では、生分解性プラスチック、プラスチックを分解する微生物の研究、代替品の開発なども進んでいる。また、欧州では「サーキュラーエコノミー」が推進され、プラスチックごみを減らす取り組みが進んでいる。(*2)
プラスチックごみの問題は、さまざまなSDGsにかかわる。SDGs14番「海の豊かさを守ろう」、12番「つくる責任つかう責任」、6番「安全な水とトイレを世界中に」、7番「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、15番「陸の豊かさも守ろう」などである。つまり、SDGs解決に向けて重要なテーマの一つであると言える。
*1…資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/plastics_01.html
*2…環境省
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r05/html/hj23010202.html
学習者用解説
「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。
プラスチックごみは深刻な環境汚染につながります。イギリスの大学の調査では、大量のプラスチックが適切に処理されずに環境中に排出され、そのうち43%が未回収で放置されていることがわかりました。プラスチックは、自然分解するのに400~1000年かかると言われているので、長期間にわたって環境だけでなく、生物にも悪影響を及ぼし続けるのです。
海洋などに放出したプラスチックが波の力などで砕け、5㎜以下の大きさになったものは「マイクロプラスチック」と呼ばれています。魚や鳥が誤って食べてしまい、死に至ってしまいます。それだけでなく、食物連鎖によって人間の体内に取り込まれていることも、最近の研究からわかってきています。つまり、使用済みのプラスチックを適切に回収することがこれらの汚染や被害を食い止める第一歩なのです。
しかし、プラスチックの回収は簡単ではありません。例えば、ペットボトルの回収率を見ると、日本は94.4%とかなり高いのですが、欧州では約55%、アメリカでは30%程度にとどまっていて、途上国ではもっと低いと想定されます。確実に回収してリサイクルなど資源化する取り組みがとても重要です。
それでは、リサイクル率はどうなっているのでしょうか。これもわが国は86.9%と世界的に見ても非常に高くなっています。しかし、そのうち半分以上は「サーマルリサイクル」といって、廃プラスチックを燃やした廃熱を利用するリサイクルになります。この方法は二酸化炭素を排出してしまうので、環境にとってはよいものとは言えません。また、約6%は埋め立てされています(*1)。
プラスチックごみの問題は、さまざまなSDGsにかかわります。SDGs14番「海の豊かさを守ろう」、12番「つくる責任つかう責任」、6番「安全な水とトイレを世界中に」、7番「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、15番「陸の豊かさも守ろう」などです。この問題を解決することで、多くのSDGsが達成の方向に向かうでしょう。
この問題を解決するために、研究開発が進んでいます。最近では、自然環境の中で分解する「生分解性プラスチック」や、プラスチックを分解する微生物に関する研究が行われています。また、代替品の活用も進んでいます。カフェなどでプラスチックのストローが紙やステンレスなどの素材に代わっているのを見かけることも多くなってきました。
研究開発だけでなく、私たち一人ひとりの生活から見直すことも大事です。プラスチックの活用について、これまでReduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の「3R」が推進されていましたが、Refuse(リフューズ)、Repair(リペア)、を加えた「5R」の推進が求められるでしょう。
*1…一般社団法人 プラスチック循環利用協会
https://www.pwmi.or.jp/column/column-2358/
【問いかけ例】
Q.プラスチックの使用量を減らすためにどのようなことができるだろうか?
* わが国では、あらゆる商品にプラスチックが過剰に使われていると言われている。2020年にレジ袋が有料化されるとマイバッグを持ち歩く人が増えた。食品トレーを回収しリサイクルする取り組みも拡がっている。また、企業サイドでも、輸送や販売時の過剰包装を減らす取り組みも各地で行われている。さまざまな事例を調べさせたい。
Q.世界の先駆的な取り組みはどのようなものがあるだろうか?
* 欧州では「サーキュラーエコノミー」が強く推進されている。これは、一度原材料から製品を生産すれば、その後は原材料を自然環境から採取することなく、廃棄物を一切出さない経済活動のことを言う。加えて、製品を修理しやすくしたり、部品を各メーカーで共有したりする取り組みも実施されている。先駆的事例として詳しく調べさせたい。
Q.プラスチックをリサイクルする際の課題としてどのようなことが考えられるだろうか?
* SDGs推進のためにプラスチックをリサイクルすればいいと簡単に考えがちである。リサイクル方法には主として、ケミカル、マテリアル、サーマルの3種類があり、それぞれがどのようなリサイクルなのかについて調べ、その効果とともに、コストなどの課題についても確認したい。
オリジナル資料
〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉・〈資料3〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。