目標10と関連づけて考えよう!

● 孤独死の8割 65歳以上の高齢者(2024年8月29日の記事より)

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今月のニュース記事

 

● 孤独死の8割 65歳以上の高齢者

 

 警察庁の発表によると、今年上半期に自宅で死亡しているのが見つかった一人暮らしの人が全国で計3万7,227人に上ったことがわかった。このうち約8割の2万8,330人が65歳以上の高齢者だった。自宅で一人で死亡した人の年齢別では、85歳以上が最多で、75~79歳、70~74歳と続き、65歳以上の年齢層が76%を占めた。一方、65歳未満も8,826人に上った。中高年だけでなく、15~19歳の若者も42人いた。死亡推定から遺体発見までの経過日数は、当日~1日以内が全体の約4割だったが、1か月以上も約1割に上り、周囲との交流が乏しい現状が浮かんだ。都道府県別では、東京が最多。大阪府、神奈川県、埼玉県と続いた。

 

(ニュースダイジェスト 2024年8月29日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 警察庁の発表によると、2024年1月から6月までの半年間に全国の警察が検視や調査を行った10万2,965人の遺体のうち、約3割に当たる37,227人が「自宅で発見された一人暮らし」であり、その中で約8割が65歳以上の高齢者であった。また、発見までに死後1か月以上経過しているケースも約1割程度見られ、日常生活において親類や近隣者との交流が少ない現状が浮き彫りになっている。

 

 わが国は少子高齢化が加速している。2022年の統計では、65歳以上の高齢者が人口の29%であったが、2040年には35%、2050年には40%近くに達すると推定されている。また、高齢者の一人暮らしの割合は男女ともに増加傾向であり、2020年には男性15.0%、女性22.1%に上っている。

 

 SDGs10.2では、2030年までに、年齢、性別、障害、人種や経済的状況にかかわりなく、すべての人々が社会的に包摂されることをめざしている。また、SDGs3.8ではユニバーサル・ヘルス・カバレッジの促進が、SDGs11番「住み続けられるまちづくりを」では、いくつかのターゲットで高齢者にも住みやすい生活空間を提供することが盛り込まれている。

 

 少子高齢化が進行する中で、どのようにして日常的に人々が交流できる社会を作りあげていくかは、解決しなければならない地域課題の一つであろう。

 

 

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 わが国の高齢化が急速に進んでいることは皆さんもよくご存じでしょう。2022年の統計では、人口の29%が65歳以上の高齢者でしたが、2040年には35%、2050年には40%近くに達すると推定されています。

 

 また、一人暮らしの高齢者が増加しています。65歳以上の高齢者が一人暮らしをしている割合は、1980年には男性4.3%、女性11.2%でした。しかし、2020年には男性15.0%、女性22.1%に増加しています。


 そのような環境において、深刻な問題となっているのが高齢者の孤独死です。警察庁の発表によると、2024年1月から6月までの半年間に全国の警察が遺体の検視や調査を行った10万2,965人の年齢や居住の状況を調べたところ、「自宅で発見された一人暮らしの人」が約3割に当たる37,227人で、そのうちの7割以上が65歳以上の高齢者でした。また、死亡したと推定される日からの経過日数を調べると、死後1か月以上経過して発見されたケースも1割程度見られたことから、日常生活において親類や近隣者などとの交流が少ない高齢者の生活環境が明らかになりました。

 

 SDGs10番「人や国の不平等をなくそう」のターゲット10.2では、2030年までに、年齢、性別、障害、人種や経済的状況にかかわりなく、すべての人々が社会的に包摂されることをめざしています。また、SDGs3番「すべての人に健康と福祉を」のターゲット3.8では、「すべての人々が基礎的な保健医療サービスを、必要なときに、負担可能な費用で享受できる状態」である「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」の促進が盛り込まれています。また、SDGs11番「住み続けられるまちづくりを」では、住環境、防災、交通といった生活インフラを高齢者にとっても安全で利用しやすくすることが設定されています。

 

 地域では、高齢者の孤独を解消しようとさまざまな取り組みが行われています。民生委員や社会福祉協議会などが、高齢者の自宅を訪問し、見守り活動を実施しています。また、公民館や市民センターなどの公共施設では、高齢者が集まって活動する機会が設けられています。しかし、このような活動に参加できない、参加したくない、もしくは、情報を知らない高齢者も存在します。どのようにして、地域における人と人との交流の機会を創り出し、多くの人に参加してもらうことで高齢者が孤独な状況に陥らないようにするのかは、地域における重要な課題の一つでしょう。

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.地域の公民館や市民センターなどの公共施設では、高齢者に向けてどのような活動が実施されているだろうか?
* 畑作業やごみ拾いといった日常的な活動から、セミナーや講座、季節ごとのイベントなど、さまざまな機会が提供されている。生徒が暮らす地域の公共施設でどのような活動が行われているかを実際に訪問して調べさせるとよいだろう。また、機会を見つけてイベント等に参加すると、現実感をもって課題を認識できるだろう。


Q.高齢者が交流の機会に参加できない理由にはどのようなことが考えられるだろうか?
* 病気や障害があることなどから、身体的に参加が難しいことがある。それだけでなく、人と話すことをおっくうに感じていたり、人と話すこと自体を拒否したりする例も少なからずあり、精神的な理由があるのも現状だろう。一人ひとりの現状に寄り添った支援が求められることを理解させたい。


Q.高齢者にとって住みやすい地域とはどのような地域だろうか?
* 最近、地震や洪水などの自然災害によって命を落としてしまう高齢者が多いことはニュース等で報道されている。電車やバスが高齢者にとって利用しにくいという声も少なくない。さらに、地域での人的交流が少なく孤立する高齢者もいる。生活インフラをどのように再構築するかといったハード面だけでなく、交流の機会をどのように創出するかなどのソフト面からも考えさせたい。

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。